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株式会社ソラコムがお送りする「IoT速報-ビジネスの最前線」。今回は、ガラスや化学品をグローバルに展開する素材メーカーAGC株式会社が、SORACOMを活用したIoTシステムで、工場から納品先への運送のオペレーションを効率化した事例をご紹介します。
【この記事でわかること】
- AGCが工場からの納品先への運送を効率化
- GPSによる位置情報を基に、納品先への到着時間を知らせる仕組みを構築
- さらなる改善として、オペレーション分析や誤納品防止にも活用
【SORACOM活用のポイント】
- SORACOMプラットフォームと連携したGPSデバイスで、簡易でリーズナブルな位置情報の管理が可能に
- ソラコムのパートナーとの連携で、スムーズにシステムを開発・導入。誤納入防止システムの開発期間はわずか4か月
導入の背景
物流の課題解決に向け、顧客とともにオペレーション改善を目指す
物流業界は、貨物量の増加に加え、エネルギーコストの上昇や2024年問題として知られるドライバーの労働時間制限など、複数の課題に直面しています。このような背景から、多くの企業がテクノロジーを活用し、オペレーションの改善に取り組んでいます。
AGCグループは、ガラス、電子、化学品、ライフサイエンス、セラミックスなどの事業領域で、グローバルに展開する素材メーカーです。製品を納品先に届けるため、独自の自社物流網を構築しています。
工場からの運送業務は、受注後に製品をトラックに積み、納品先へ届ける流れです。このプロセスは営業や工場、物流などの複数の部署や納品先との連携が必要で、決められた期日はもちろん、時間内に効率的に進めることが重要です。さらに、大型のガラスや化学品の輸送には専用車両が必要なため、限られた車両でいかに効率的に運ぶかも大きな課題となります。
化学品輸送の2024年問題対応プロジェクトを主導した調達・ロジスティクス部 澤村和廣氏は、「営業や物流の現場、顧客の要望などの要件を収集したところ、直前の受注への対応によって運送計画の確定が遅れることや、運送の時間指定によって特定の時間帯に必要となるトラック台数が集中するという課題が見えました。まず、これらの課題に取り組むことにしました」と語ります。
「受注締め切りの前倒し」については、当日午前中まで受け付けていた受注を、前日締め切りに変更。結果、翌日の運送計画をこれまでより早く確定できるため、製品を納入日前日にスムーズにトラックに積みこむ事ができるようになりました。しかし「納入時間指定の廃止」については、顧客が時間を指定するのは納品に立ち会いが必要となるためで、ただ廃止を依頼するだけでは実現が難しいことがわかりました。スムーズな受け渡しのために、納品先に到着時間を事前に通知して、効率良く荷物を受け取ってもらう代替手段が必要でした。
実現したサービス
GPSによる位置情報とIoT通信で、運送時の納品を効率化
そこでAGCが開発したのが、GPS位置情報と連携した通知システムです。デバイスには、SORACOM IoT SIMを内蔵し、簡単に取り扱える「GPSマルチユニット SORACOM Edition」を採用しました。
このシステムは、リアルタイムで車両の現在地や移動状況を把握し、納品先への到着時間を事前に自動で通知します。さらに、納品先の作業員が必要なタイミングで立ち会えるよう、地図上でエリアを設定し、そのエリアに車両が出入りする際に通知を送る「ジオフェンス機能」を活用しています。納品先によっては、到着予想時刻を知りたいタイミングや頻度が異なるため、要望に応じて、タイミングや内容をカスタマイズもできるようにしています。なお、これらの可視化や通知の機能は、ソラコムの認定パートナーのナビッピドットコム株式会社が、位置情報サービス「DP2」をベースに開発しました。
関係者の巻き込みや要件定義には半年超の時間をかけたものの、仕様に合わせたカスタマイズを含め、開発は4ヶ月で完了し、5ヶ月目には運用を開始することができました。澤村氏はSORACOMを採用した理由について次のように述べます。
「この取り組みを全国の拠点に広げるためには、リーズナブルな価格で、現場の担当者が気軽に使えることが重要で、SORACOMの通信とデバイスを選びました。通信機能を内蔵したデバイスと位置情報を表示するクラウドサービスを組み合わせたことで、一からシステムを開発することなく、短期間で導入が実現しました」
車両の稼働状況を可視化し、ドライバーの時間外労働を削減
続いて取り組んだのが「車両稼働管理システム」の構築です。車両の位置情報から、各業務にかかった時間を分析します。例えば、工場内では荷物の積み込み、納品先での荷物の受け渡しといった活動が、どのくらいの時間かかっているのか位置情報を解析することで把握できます。さらに、位置情報を基幹システムのオーダー情報と組み合わせて、各オーダーに対する車両の稼働状況を可視化。滞留時間が平均値より長い場合は、改善すべき課題があると判断し、具体的なオペレーション改善や、車両の過不足の検討や運用効率の見直しに活用しています。
「こうした活動により2023年末には、ドライバーの時間外労働時間を平均月15時間/人程度削減することができました。現場のオペレーション改善を詳細に行おうとすると、現場からのレポート提出が必要になりますが、それでは負担が増えてしまいます。GPSデバイスを活用することで、現場に負荷をかけることなく、具体的な課題を把握し、改善を進めることができました」(澤村氏)
今後の展開
位置情報を活用して安全性を向上、IoTで現場を変革
ここ1年程は、既存のシステムへの位置情報活用も進めています。その活動が、誤納入防止システムです。液体化学品の納入は、納品先のタンクに製品を投入する必要があり、誤納入が発生すれば重大なリスクを伴います。その対策として、AGCでは納入先のタンクにQRコードを貼り付け、顧客情報や品名を照合する仕組みを導入していました。このシステムに対して、位置情報を活用して、車両が正しいお客様の敷地内にいるかどうかを自動的にチェックする機能を追加することで、運送の安全性をさらに高めています。
「当初は、まずできる範囲から改善を進めようという発想で取り組みを始めました。しかし、車両の位置情報を収集していくうちに、新たな課題解決のアイデアが次々と生まれ、システムを基幹システムのデータや他のシステムとも連携させることで、幅広い改善策へと発展しました。今後も現場に即したシステムを作り続け、さらに物流を進化させていきたいと考えています」と澤村氏は語ります。
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