次世代水族館のトータルマネジメント

株式会社アクアメント(以下、アクアメント)は、水族館に関する開発計画の策定から水槽設備の設計・製作、生物調達や展示演出まで、水族館の開発事業を総合的にマネジメントする企業です。

同社は、「水族館から始まる感動、そして未来」というメッセージのもと、観る人に感動、学び、楽しみ、癒しを提供するのみならず、学芸普及および研究活動を積極的に支援することで水域環境の保護・保全にも貢献しています。

同社が運営する「AQUARIUM x ART átoa(アトア)」(神戸市中央区新港町)は、アクアリウムを核に、舞台美術やデジタルアートが融合する劇場型アクアリウムです。この施設において、現在IoTを活用した漏水防止の研究が行われています。

IoT導入の背景/課題

水位検知を漏水事故の防止に活用。ヒューマンエラーの回避で来場者の安全確保にも貢献

水族館における漏水の原因は、主に2つに分類されます。1つは、水槽内の水をきれいにするために展示水槽に付けられている「濾過水槽」で、パイプのつまりや電源不備などが発生する場合です。濾過水槽とは生物の水槽から流れてくる水をフィルターやバクテリアなどの力で浄化するための水槽ですが、この水槽と展示水槽の間のパイプが詰まれば、いずれかの水槽はあふれてしまいます。また水を送り出すポンプの電源が止まってしまうことでも漏水は起こりえます。

もう1つの要因としてはヒューマンエラーが挙げられます。たとえば、水族館において1週間に1〜3回行われる水槽の清掃時には、いったん水槽内の水の3分の1程度を抜く必要がありますが、終了後の給水には長い時間がかかります。水族館の運営スタッフは、日々生き物の健康管理や給餌、イベントや展示の企画など、常に複数の仕事を掛け持ちしながら行っており、また管理する水槽の数も多いことから、給水栓の締め忘れなども起こりえます。

このような漏水事故の発生は、ビルや商業施設の中にあるアトアのような水族館では特にクリティカルな問題です。階下の施設への漏水事故を起こす原因にもなり、展示の演出上、館内を暗くしているため、来場者の足元が濡れてしまうと重大な事故につながるためです。

実現したサービス

異常水位を検知しLINEに通知、スタッフが検知できるシステム

本プロジェクトでは、ソラコムのパートナーでもある株式会社神戸デジタル・ラボ(以下、神戸デジタル・ラボ)が、IoTを活用した漏水予防の研究のシステム設計・導入を支援しています。

以前からアクアメントの事業を支援する中で、神戸デジタル・ラボにも、漏水が水族館にとっての課題だという認識がありました。そんな折に展示会で帝国通信工業株式会社(以下、帝国通信工業)の静電容量式水位センサを見つけて課題解決に活用できないかと気付き、アクアメント、帝国通信工業両社に提案を持ちかけたことから、3社による漏水予防の共同研究が始まりました。

帝国通信工業の静電容量式水位センサは、炭素繊維など生物に影響のない素材のみを使った薄いシート状のフィルムセンサです。水槽の設定水位より上に貼ることで、水位の異常上昇を検知できるものです。今回は、この水位センサを改良した新商品漏水センサ「No-Blue」を使い、実証実験に臨みました。

実際のシステムでは、この静電容量式水位センサを改良した新商品漏水センサ「No-Blue」と、通信機器としてSORACOM LTE-M Button Plus(以下、LTE-M Button)を組み合わせました。「No-Blue」が検知した水位データはLTE-M Buttonを経由してクラウド上に保存されます。そして、その数値があらかじめ設定した数値を越えると、LINEに通知を送る仕組みとなっています。

また、センサから送られたデータはダッシュボードサービス「SORACOM Lagoon」上で可視化されており、現場のスタッフが持ち歩いているタブレットやスマートフォン、PCなどでリアルタイムに確認することが出来ます。

「No-Blue」のデバイス開発、ソフトウェアの開発や設置を完了してデモ導入をするまで、帝国通信工業の既存のセンサ技術とSORACOMの各種サービスを活用することで、わずか2か月で実現しています。また、センサ―デバイスが小型で後付けが可能、セルラー通信を利用することでWi-Fiなどの機器の設定が不要な点も、展示の入れ替えや商業施設などへの特別展示の際には大きなメリットとなっています。

「既存のものでシンプルに始める。実際に導入して、現場のフィードバックを通じて機能を改善していく、そのような考え方をアクアメント様にもご理解いただき、自ら様々な設置方法を検討いただいたり、現場目線でのご意見をいただいたことで、思った以上に早いペースで共同研究が進んでいます。当初の予定より早い段階で研究成果をまとめられるレベルになってきています。」(神戸デジタル・ラボ 中西氏)

今後の展開について

アクアメントと神戸デジタル・ラボでは、引き続きデジタルを活用した水族館の業務改善を検討しています。現在、漏水防止のシステムに加えて、水槽の見守りに「SORACOM Cloud Camera Services(ソラカメ)」の導入を開始し、状態改善前後の変化記録などに活用が始まっています。また、「水質のセンシング」も大きな課題です。現状はリモート管理のできる水温計を付けるだけでも数百万から1千万円の設置費がかかり、水族館で数多くの水槽に設置するのは難しく、実用的ではありません。ポータブルで安価なソリューションを開発できれば、自社のみならず業界全体にもメリットがあります。

「ヒューマンエラーをデジタルの力で防止することで、スタッフがより水族館の生き物たちに目を向ける時間や、来てくださるお客様の体験を向上させる企画を考える時間に充てることができます。今後も神戸デジタル・ラボさんの力も借りながら、積極的に進めていく予定です」(アクアメント 石原氏)

株式会社アクアメント
株式会社神戸デジタル・ラボ

株式会社アクアメント
株式会社神戸デジタル・ラボ

株式会社アクアメント 施設課
課長 石原 孝 氏
主任 中島 亮 氏

株式会社神戸デジタル・ラボ
デジタルビジネス本部 エンゲージメントリード エバンジェリスト
中西 波瑠 氏

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