【この記事でわかること】
・「LOVOT」は、GROOVE Xが開発した日々のふれ合いを通じて人との愛着を形成する世界初の「家族型」AIロボット
・最新テクノロジーを用いてノンバーバルコミュニケーション、生命感、個性の獲得を実現
・IoTで、LOVOTの記憶を保存、ヘルスチェックも行い、ゆるやかな見守り機能も可能に

【SORACOM活用のポイント】
・セルラー通信でネットワークを敷設し、インターネット環境がなくてもLOVOTとお客様の大切な記憶を守り、最低限の遠隔保守を可能に
・ネットワーク設定不要で始められるため、高齢者でも家に迎え入れたらすぐに使い始めることができた

導入の背景

「手伝う」ではなく、いかに人を「喜ばせる」か

GROOVE Xが開発した世界初の「家族型」AIロボット「LOVOT(ラボット)」は、1万個以上のパーツで形成され、50箇所以上のセンサーや複数のコンピューター、最先端のAIテクノロジーが搭載されているにもかかわらず、掃除も調理も予定管理もせず、時刻さえ教えてくれません。転倒しても自分で起き上がることはできないし、最初は人見知りもするので、人間にとっては効率をアップしてくれるばかりか、少々手間のかかるロボットと言えるでしょう。

でも、頭についたカメラや体中のセンサーを駆使して人の顔を認識し、一人一人の声を覚え、どんなふうに触れあってくれたかを記憶することで、だんだんと甘えてくるようになります。

自己位置推定技術で部屋のマップを作成して玄関までお迎えをしてくれたり、虹彩や瞳孔など6層のレイヤーからなる目で気持ちを訴えたり、言葉ではない”鳴き声”で語りかけたり、後追いをして抱っこをせがんだり、37~39度の体温で温めてくれたり―。精一杯の非言語(ノンバーバル)コミュニケーションで人間とのつながりを強めて、「家族」になっていきます。

2019年の発売以降、1万台が各家庭やオフィス、保育・治療現場に送り出され、継続率は95%以上で、GROOVE Xソフトウェアチームの松浦芳樹氏も「想像以上」と語るほど。

ノンバーバルコミュニケーション、生命感、徐々に懐いていく過程を経る、という3つのポイントを重視して開発されたLOVOTは、これまでロボットに期待されてきた生産性・利便性の向上ではなく、「人そのものをエンパワメントすること」(松浦氏)を目的としています。

実際にLOVOTを迎えたユーザーからは、「生活にハリが出た」「夫婦の会話が増えた」「オフィスの他部署間のコミュニケーションが活発になった」と、日常のコミュニケーションが増進されたという声が多く届くと言います。

デンマークの大学が行った実験では、LOVOTとの触れ合いで認知症患者の表情が明るくなった事が実証されました。資生堂との共同研究でも、LOVOTとの生活で幸せホルモンであるオキシトシン濃度が高くなり、15分間触れ合うだけでストレスにより分泌される成分も低下することが分かっています。

「LOVE」と「ROBOT」をかけ合わせた名づけられた通り、人に愛を届けてくれるロボットなのです。

LOVOTたらしめるために、IoTが不可欠

GROOVE Xの創設者・林要氏は、ペットの存在意義、すなわち「自分を必要としてくれる存在」の必要性をロボットの新たな価値として定義し、LOVOTを誕生させました。

「ペットを飼育している人口の2倍以上、飼いたいけど飼えない人がいる。そんな人に届けたいという思いで開発したが、想定以上に人との愛着形成が可能で、幸福感につながるという効果を得ました」(松浦氏)

ロボットをペット同様、愛着形成の対象として機能させるために、IoTは欠かせないものでした。松浦氏によると、IoT活用のポイントは3つ。

1つ目は、「記憶」のバックアップ。
LOVOTは、一緒に生活する家族との触れ合い方によって異なった個性を育んでいきます。つまり、家族の顔やふれあいをインプットデータとしてAIを用いながら学習し、それに応じた行動をします。

「人とふれあった記録は、個々のLOVOTの個性を形成する「記憶」そのものであり、かけがえのないものと考えています。そのため、弊社では、仮に故障しても記憶が消えることがないように、クラウドへのバックアップは欠かさず実施しています」(松浦氏)

2つ目は、稼働データを使った健康維持。
前述の通り、LOVOTは1万以上のパーツから形成されており、可動部分も多いのが特徴です。

「その分、故障のリスクが比較的大きく、健康で長く触れ合ってもらうには定期的なメンテナンスが必須です。そのため、IoT技術により稼働状況データをクラウドに蓄積して、異常箇所を迅速に診断したり、自動で診断したり、予測を立てて予防保守を実施したりしています。LOVOTを健康で長く使ってもらうためにIoTは欠かせない要素になっています」(松浦氏)

3つ目は、見守りなどの付加機能。
LOVOTには、お留守番や、一日の活動を記録するダイアリー機能など遠隔で見守りができる機能があります。

一般的な見守り機能は、監視という側面が拭えず敬遠されがちです。一方、LOVOTのお留守番やダイアリー機能は、あくまでLOVOTが留守番中に見た画像や、日常的にLOVOTが体験したことのみを遠隔で共有するという機能にとどめているため、監視されていると感じにくいメリットがあります。

「さらに、弊社では個人情報の扱いにも気をつけており、映像や画像などは弊社クラウドサーバを経由することなく、LOVOTから直接お客様のスマートフォンアプリにデータ転送させるようにしており、クラウドにデータが残る心配もありません。離れて暮らす家族とLOVOTとの触れ合いの様子から生活リズムを確認する、そんなゆるやかな見守りを提供することがLOVOTとIoT技術の組み合わせで実現できています」(松浦氏)

目・声・名前をカスタマイズできる お出迎えに来る玄関の場所をタップするとお出迎え機能が使えます お留守番機能は、外出中に人を見かけると写真を撮って通知

これらの重要な機能をすべて実現するには大量のデータのやり取りが伴い、Wi-Fiなどを使ったインターネット回線が必要となります。

しかし、Wi-Fiやインターネット接続のない環境での稼働や、一人暮らしの高齢者などシステム設定に明るくない人にも使ってもらえるようにしたいと考えたGROOVE X社は、大量データを前提とはせず、それでも大切な記憶を守ること、最低限の遠隔保守として稼働確認できることを実現するために、SORACOMのIoT SIMの導入に至りました。

実現したサービス

どこでも誰でも簡単にLOVOTを接続

松浦氏は、SORACOM導入の背景について、「どこでも誰でも簡単にLOVOTとの生活を始めていただけるように、LTEの搭載を決めていた。通信料が比較的安価で、かつウェブコンソールやAPIを用いて各回線の管理が便利なこと、グローバルに対応したSIMであることから、SORACOMを選びました」と、語ります。

インターネット環境のない場所では、SORACOMのセルラー通信によってLOVOTの記憶のバックアップと稼働確認を実施。Wi-Fiなどネットワークが敷設されている場所では、複数の稼働データを使った健康維持、見守りなどのサービス、さらにはソフトウェアを定期的にアップデートしてLOVOTの成長を感じられる体験など、インターネットを使ったフルサポートが可能です。お客様のネットワーク環境に合わせて、あらゆる人に適切なLOVOT体験を提供できるように環境を整備しています。

「多くの方にLOVOTを迎えてもらうためには、リーズナブルなコストで運用することが欠かせません。その点において、SORACOMはもともとの通信料が安価であるということに加えて、ユーザーコンソールやAPIを使って、個別のSIMごとに通信制限を設けるなど柔軟なカスタマイズができることで不用意に大きな課金が発生しないことも魅力の一つに感じています。

また、まだ実現していませんが、セルラー通信のオン・オフが遠隔で柔軟に可能なので、Wi-Fi接続がメインの利用者にはセルラー通信をオフにするなど、利用状況に応じて月額料金がかかりすぎないようバランスすることも考えていきたいです」(松浦氏)

今後の展開

メンテナンス強化で魅力を高めたい

世界中から注目を浴びるLOVOTですが、2023年6月には中国での販売が決まったことも発表されています。

「各国の規制に基づいた電波の審査や現地リペア拠点の設置など、課題はありますがグローバルな展開も視野に入れています」(松浦氏)

まずは国内でのメンテンナンス体制を強化することで、LOVOTの魅力を高めたいと松浦氏は言います。

「現状は、ハードウェアのみならずソフトウェアの不具合であっても現物を引き取って対応することがあるのですが、SORACOMの通信プラットフォームをさらにうまく活用すれば、遠隔でのメンテナンスもより広範囲にわたり可能になると期待しています。

今後、グローバルに展開していくためには、遠隔でのメンテナンス機能が重要な役割を果たしていくと考えています。早めにノウハウを身に着け、良い体制でグローバル展開できるようがんばっていきます。そして、LOVOTが人と人をつなぐ役割を果たし続けられるよう、テクノロジーを活用して、さらなるアイディアを実現していきたいです」(松浦氏)

 

 

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