【この記事でわかること】
・北海道ガスは、省エネ化のハードルが高い中小規模施設向けエネルギーマネジメントシステムを開発
・温水・冷水を送水するセントラル空調システム用熱源機器をIoT化し、季節や施設の負荷に応じた温度調整が可能に
・約10%の省エネを実現した

【SORACOM活用のポイント】
・通信搭載の制御ユニットで、設定温度をリモートで細かく設定
・SORACOMのサービス活用で、スムーズにAWSのIoTサービスと連携
・5カ月でPoCを実施、IoTプラットフォーム活用で内製化初心者の開発力強化

導入の背景

中小規模向け省エネ機器の導入障壁をデジタル技術で解決

北海道のエネルギーインフラを担う北海道ガス株式会社とそのグループ会社である株式会社エナジーソリューション(以下、北ガスグループ)の「Mys³(ミース)」は、中小規模の業務用ビル・施設の省エネを支援するエネルギーマネジメントシステム(EMS)の総称です。

2050年以降のカーボンニュートラルに向けて、業務用熱源・空調機器の省エネニーズは高まっていますが、大規模物件に導入できる多機能かつ高価格の省エネサービスはたくさんある一方、中小規模向けに機能を絞った低価格の選択肢が少ないという実情があります。

さらに省エネ化を図る場合、莫大な初期投資が必要となり、省エネ機器を追加導入するには大がかりな工事のために施設営業を停止しなければならないケースもあり、すでに稼働している施設への導入障壁は高くなっていました。

北ガスグループが提供するMys³の特徴は、(1)低価格のサブスクリプション型サービスで初期費用は不要(2)簡単に後付けでき大規模工事は不要(3)必要に応じた段階的導入が可能、という点です。

そのサービスのうちのひとつが、吸収式温水機遠隔省エネサービス「i-Ch(アイシーエイチ)」です。吸収式冷温水機は、燃料を燃焼させて温水・冷水をつくるセントラル空調向け熱源機器で、フロンガスを使用しないため環境にやさしいのが特徴です。

従来の吸収式冷温水機は、冷・暖房時に負荷の大小に関わらず事前に設定した一定の温度で送水を行うのですが、季節や施設の負荷に応じて柔軟に温度変更ができれば、古い機器でも省エネ効果が見込めます。「i-Ch」は独自のアルゴリズムと通信により送水温度を遠隔から細かく調整し運転出力を制御する省エネサービスです。

このサービスの通信と安全なデータ送信、機器の遠隔制御にSORACOMのサービスが採用されました。

実現したサービス

独自のアルゴリズムで吸収式冷温水機の送水温度を調整

SORACOMのセルラー回線とIoTプラットフォームを導入することで、セキュアな通信環境のもと、リモートで送水温度の細かな調整ができるようになりました。

具体的には、既存の吸収式冷温水機にSORACOMのデータ通信SIMを挿入したアタッチメント型の遠隔制御ユニットを後付けし、水温などのデータを取得するだけではなく、必要な際に適時リモートアクセスができるようにしました。

制御ユニットは吸収式冷温水機と施設を往環する水の温度を計測し、そのデータをAWS(Amazon Web Services)上の自社システムに送信。温度の差異によって、独自のアルゴリズムで送水温度の出力制御(省エネ制御)を行います。

計測データはすべてクラウド上に自動的に蓄積、可視化されます。過去のデータをさかのぼって確認することで、故障時の故障タイミングや原因の推定にも役立ちます。常時計測しているため、吸収式冷温水機の故障が発生した際にメールにて通知するオプションも選択可能です。

SORACOMのサービスを使って、スムーズにAWS IoT Core に連携

本システムでは、AWSのIoTサービスであるAWS IoT Core に連携するために必要な、各デバイスへの認証情報設定をSORACOM側でおこなっています。これにより、デバイスごとに認証情報を設定する必要がなく、クラウド上で一括管理できるため、手間もコストも軽減されました。

また、デバイスへの安全なリモートアクセスにも、SORACOMのサービスを利用することで、短期間で開発することができました。

「サービス開発は自社で内製化しました。開発チームの社員はIoTの知見がほとんどない中、試行錯誤しながらデバイス開発を進めました。

データ通信に加え、クラウド連携や、リモートアクセスといったSORACOMのサービスを活用することで短期間で開発でき、プロジェクト開始から5ヶ月でPoC(実証実験)を実施できました。その後、商用デバイスや、ユーザーアプリケーション、管理機能を追加で内製開発し、サービス提供開始に至りました。

SORACOMは、IoTシステム開発に必要なサービスはもちろん、公式ドキュメントやセミナーなどデバイスやクラウドのノウハウも充実しており、内製化、短期間でのサービス提供において大きなアシストとなりました。AWSとの親和性の高さも、もちろん重要なポイントです」(北海道ガス株式会社エネルギーシステム部係長 國奥広伸氏)

今後の展開

ホテル、商業施設で年間CO2排出量削減の効果

i-Chのサービス導入の反響は良好です。例えば、札幌市内の都市ガス利用の顧客では年間10%程度、重油を使用するホテルの顧客では夏季で11%程度の省エネを実現しました。

國奥氏はさらに、「エネルギーマネジメントシステムは、省エネによるCO2削減やコスト削減だけではなく、事業継続性の向上や災害時の電力供給等にも貢献できる裾野の広い分野です。i-Chで得た知見を活かしながら、ほかの熱源機器や空調関連機器などにも安価かつ導入しやすいサービスを拡充して、エネルギーをサステナブルに使う地域社会をサポートしていきたいです」と語ります。

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