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IoT 導入の背景
施設園芸における施設の状況を24時間把握したい
ビニールハウスやガラスハウスなどで育てる施設園芸では、トマトやナス等の野菜、いちご等の果物が育てられています。これら花と実をつける農作物は、年に1度しか収穫できないため、生産者は園芸施設の環境維持に細心の注意を払っています。冬場のドアの閉め忘れやビニールハウスの破損に備え、夜間も定期的に施設を見回りをしています。
また、農作物の状況は、温度・湿度・二酸化炭素、日照時間等の環境情報や水分量を含む土壌情報を計測器を通じて把握していますが、多くの計測器はデジタル化されておらず、実際に現地に行かないと見れないという場合が多くありました。
時系列でデータを見るには、現地に行き記録を取る必要がありました。IT工房Zは、生産者が必要とするこれらのデータをセンサーで取得し、遠隔から確認でき、5分で取り付けられる施設園芸向けセンシングパッケージ「あぐりログ」を提供しています。
IoT 導入の課題
生産者の声からの気づき、生育ノウハウ見える化の必要性
「あぐりログ」の導入で自宅から施設園芸の環境情報をリアルタイムで把握、例えば、温度が急降下しているようなクリティカルな状況を遠隔からでも気づくことができるようになり、生産者には安心できると大変喜ばれました。
また生産者からは「生育ノウハウを把握できないか」という声がありました。施設園芸の生産者は一人で取り組まれている方も多くいます。結果を出している生産者は経験の長い方が多く真似をしたくても、経験で生産しているため何が効果的だったのかを説明できる方は多くありません。「あぐりログ」で、生産ノウハウをデータでの裏付けできないかと考えました。
SORACOMが選ばれた理由
モバイル通信の活用で設置すれば、手軽に始められる
農業施設は、屋外ということもあり通信ネットワークのない場所にあります。そこで電源と端末があればすぐに通信できる「SORACOM Air for セルラー」をあぐりログに採用しています。
「あぐりログ」は、月額課金で端末とダッシュボードを提供しています。月額でサービスを提供する側としては、万が一のトラブルで想定以上の通信が発生するような兆候を検知したいニーズがあります。SORACOMプラットフォームではウェブコンソールからの簡単な操作だけで、1回線毎のデータ通信量のアラートを設定することができます。また、SORACOMのプラットフォームが提供しているAPIを使い、お客様からの注文や端末登録などの各種設定を自動化していくことも視野に入れています。
システム構成図
導入の効果
生育ノウハウをデータで裏付けし、地域で共有・地域全体の生産向上へ
生育ノウハウがデータで見えるようになりました。例えば、光合成に二酸化炭素の供給が有効というノウハウがありますが、データによれば二酸化炭素濃度が低い時に供給することが有効で、ただ供給すれば役立つものではないということが確認できました。
さらに次の展開も始まっています。多くの場合、農作物はJA(農業協同組合)が買い取り、出荷します。農作物を地域ブランドにすれば価値が上がりますが、そのためにはJAの生産部会で特定の農作物を同じ品質で、安定供給することが求められます。ノウハウは一人で持つのではなく、地域の生産者と共有し、農産物を安定供給できることが大切です。
「あぐりログ」には、グループで生産者同士がお互いのデータを共有して閲覧できる機能があるため、上手な生産者と自分の差をデータで確認できます。生産部会が30名いれば、30パターンのデータを取ることができます。単純計算すれば、1人で30年かかるデータを1年で取得できます。ノウハウの蓄積と共有で、スピーディに地域の農作物生産の質を高めることができます。
今後の展開について
生産者のお客様と、農業におけるIT活用を拡げたい
データの蓄積で、農作物だけでなく農作物の地域別の分析も可能になります。将来的には、ベストプラクティスと現状の生育状況を比較することも可能になるかもしれません。
日本の農業におけるIoT活用はまだ始まったばかりです。「あぐりログ」を先んじてご利用頂いた生産者からは様々なリクエストを頂きます。生産者と一緒に、農業におけるIT活用をより良いものにしていきたいと考えています。
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