株式会社ソラコムがお送りする「IoT速報-ビジネスの最前線-」。今回は、バルブメーカーが開発した、IoTとAIを活用してトラブルを未然に検知・防止するソリューションをご紹介します。

【この記事でわかること】

  • バルブ業界におけるリーディングカンパニーである株式会社キッツは、IoTとAIの技術を使い、流体制御装置であるバルブの保全をスマート化
  • 設備に簡単に後付けできるセンサーでバルブの動作データを取得し、AIでスコア化した上で診断レポートを発行するサービスを提供
  • バルブの故障を未然に防ぎ、メンテナンスを効率化することで、故障による急な操業停止を回避し、保全にかかるコストを抑制

【SORACOM活用のポイント】

  • SORACOMの採用により、クラウドと連携するシステムの開発・運用のトータルコストを大幅に削減。ランニングコストが当初の想定の1/5に
  • SORACOMのオンデマンドアクセスサービスの活用で、現地に行かずに遠隔でセンサー設定を変更できるようにし、効率的な運用を実現

導入の背景

バルブ業界のリーダーが挑む、IoTとAIを活用する新サービス

株式会社キッツは、国内市場における最大手で世界でもトップ10に入る総合バルブメーカーです。バルブは、配管内の水・空気・石油・ガスなどの液体や気体、粉体を流したり、止めたり、流量をコントロールする機能を持つ流体制御装置です。下水道、給湯、ガス、空調などの生活に身近な用途から、石油、化学、医薬品、食品などあらゆる産業の生産プロセスに使われています。

高度経済成長期に建設され、現在も稼働しているプラントが国内には数多く存在しています。安全に継続して使い続けるためには、定期点検やメンテナンスなどの保全業務が欠かせません。加えて、世界的にメンテナンスを担う保守員の人手不足も課題となり、人手に頼る従来の方法からIoTを活用したデジタル化、自動化するスマート保全への移行が進んでいます。

これらの課題を解決するのが、キッツが提供するバルブトラブルの未然防止ソリューション「KISMOS(Kitz Smart Monitoring System)」です。

デザイン思考のワークショップで出たアイディアのひとつだった「AIを活用したバルブの故障予知」から、2019年秋に実証実験がスタート。Raspberry Piを使ったプロトタイプをユーザーに提供してフィードバックを得ながら試行錯誤を重ね、2022年2月にKISMOSとして商用サービス提供を開始しました。
このシステムにSORACOMが採用されています。

実現したサービス

手軽に始められる“後付け”のスマート保全

KISMOSのコンセプトは、『明日から始められるバルブトラブルの未然防止ソリューション』。既設のバルブにセンサーを後付けするだけで、バルブの開閉動作のモニタリングを始められ、トラブルの予兆を検知することで、計画的なメンテナンスに貢献します。

サービスの大きな特徴となっているのが「導入のしやすさ」で、わずかな光にも対応するソーラー発電搭載のセンサーにより、電源不要で設備に後付けすることができます。また、セルラー通信を用いた通信ゲートウェイを使いネットワーク配線も不要になり、現状の設備に手を入れることなく、短期間でスムーズに導入できます。

バルブの部品は利用に伴い徐々に消耗・劣化していきますが、経年や利用頻度、扱う流体等の条件によって、そのパターンは様々です。本サービスでは、on/off制御バルブの開閉の動作をデータで収集し可視化することで、バルブの状況を把握します。クラウドに保存されたこれらのデータをAI技術でスコア化、キッツの専任チームが毎日監視し(キッツの営業時間内)、異常の予兆を診断した場合は、メンテナンスが必要であることをお客様にお知らせします。

トータルコストと開発効率の観点から、SORACOMを採用

デバイスとクラウド間の通信にSORACOMを採用した理由は、データ通信だけではなく、IoTシステム開発に必要なサービスが提供されていることです。これらの利用でシステム開発・運用においてトータルコストが抑制でき、リーズナブルだと感じたと、本プロジェクトをアイディア提案から一貫して推進してきた バルブ事業統括本部 ビジネスプロモーションセンター ES開発部 メンテナンスソリューショングループ長の西澤 勲氏は語ります。

「クラウド連携がスムーズで、データ暗号化などのセキュリティについても顧客要望を満たしていました。結果的にSORACOMのサービスを活用したことで、ランニングコストが当初の想定の1/5に抑制できました。

基本的にはKISMOSチームでセンサーや通信ゲートウェイの初期設定から、お客様の設備への設置までを担当します。使用状況によってセンサー設定値を変更したい場合には、SORACOMのオンデマンドアクセスサービスで、現地に行く必要がありません。サーバーからSORACOM IoT SIMの入った通信ゲートウェイ経由でセンサーにアクセスして、遠隔から設定を変更できます。当初は自分達でこの機能を開発する予定でしたが、開発せずに済みました。とても便利なサービスです」(西澤氏)

今後の展開

事後保全から予防保全へ

2022年2月にリリースされ、現在はプラントメーカーを中心に工場やプラントでKISMOSが採用されています。バルブトラブルの予兆検知の実績は、液体、粉体、ペレットなどさまざまな流体で利用されるバルブでも増えてきています。

あるお客様は、これまで利用期間毎に定期的にメンテナンスを行うTBM(Time Based Maintenance)でしたが、KISMOSの導入により、実際の状況にあわせてCBM(Condition Based Maintenance)に切り替えました。予兆検知で設備の突発的な停止を防ぎながら、TBMによる不要な交換を削減し、さらにこまめなメンテナンスで部品を延命するなど、コスト抑制に成功しています。

社内からも予想外の反応がありました。お客様との強力な接点を築くことができるツールになるという反響です。バルブは代理店販売で提供していることもあり、お客様の生の声を聞き逃さないために苦労していました。KISMOSはお客様との直接の契約のため、困り事や課題、やりたいことなどを伺えるようになり、製品の提案やニーズの把握など営業活動のモチベーション向上につながりました。

「実際にデータが蓄積することで、流体の種類や用途によって、動作不良になるプロセスが異なることも見えてきました。これらのデータは予兆検知の精度向上にもつながりますし、部署を超えて製品開発にもフィードバックできます。引き続き、より多くのお客様にご活用いただけるサービスに育てていきたいと考えています」(西澤氏)

株式会社キッツ

株式会社キッツ

バルブ事業統括本部 ビジネスプロモーションセンター
ES開発部 メンテナンスソリューショングループ長
西澤 勲氏

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