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株式会社ソラコムがお送りする「IoT速報 - ビジネスの最前線」。今回は、神奈川県相模原市の金属加工メーカー・コバヤシ精密工業株式会社が、自社の課題解決をきっかけにIoTで使用電力量の見える化や管理に成功した事例をご紹介します。
【この記事でわかること】
- 中小製造業が自社の課題から出発し、IoT電流計を開発。設備・機器毎の電力量、電気料金、CO2排出量を計測可能に。
- 電気工事不要のクランプセンサーとセルラー通信の組み合わせで、導入のハードルを大幅に低減
- SORACOMの通信プラットフォームを活用し、セキュリティや顧客へのデータ連携を実現
【SORACOM活用のポイント】
- SORACOM IoT SIMにより、工場内での安定した通信を確保。セルラー通信で電磁環境に左右されないデータ収集を実現
- SORACOMのデータ転送機能でデバイス側の暗号化・認証処理をSORACOMで実施。シンプルなデバイス設計とセキュアなサービスを両立
- データの転送先を柔軟に設定できる仕組みにより、顧客ごとの自社サーバーへの直接連携にも対応
導入の背景
「設備ごとの電気が見えない」という中小製造業共通の課題
コバヤシ精密工業株式会社は、神奈川県相模原市で金属加工を手がける製造業です。同社がIoT電流計の開発に乗り出したきっかけは、自社工場で経験した「設備ごとの電力が測れない」という課題でした。
約7年前、同社は省エネ施策として工場内の照明をLED化しました。しかし、ちょうど業績が好調だった時期と重なり工作機械を増設したことで、工場全体の電気使用量はかえって増加してしまいます。LED化によって照明の消費電力は確実に下がっていたものの、設備ごとの電力を手軽に計測する手段がなく、補助金申請に必要だった省エネの効果を数字で証明することができませんでした。
システム開発を担当した二関 智司氏は当時についてこう語ります。「設備ごとの電気の使い方がわからないと、何が効いていて何がムダなのか判断できません。中小の現場では、この"見えない"ことこそが大きな課題だった」といいます。
当時の市場には、中小企業が手軽に導入できる電力計測ソリューションがありませんでした。そこで「自分たちで作ってしまおう」となり、地元・相模原の企業仲間に声をかけ、各社が得意とする技術を持ち寄り、約1年でプロトタイプを完成させました。
次に課題となったのが通信環境です。同社の工場には約80箇所のブレーカーがあり、手作業での計測・記録は現実的ではありません。当初はWi-Fiでデータを送信する仕組みを構築しましたが、溶接機や大型モーターなどが発する電磁ノイズとの干渉により、通信が安定しませんでした。この課題を解決したのが、SORACOM IoT SIMを使ったセルラー通信の採用です。工場内の電磁環境に左右されない安定した通信が可能になり、電流データを集約してクラウドへ自動送信する仕組みが完成しました。
「使ってみたらAWSとの親和性がとてもよく、SORACOMは開発の生命線になりました」(二関氏)
実現したサービス
挟むだけで始まる「電気の見える化」と、セキュアなデータ連携
プロトタイプから約5年をかけて完成した製品版「ENIMAS」は、中小企業の現場に寄り添った設計になっています。計測は、分電盤の電線にクランプセンサーを挟むだけ。SORACOMの通信によりネットワーク環境の整備も不要で、USB給電をすれば取り付けたその日から利用を開始できます。1台で最大8回路を同時測定し、1分ごとにデータを記録します。

計測したデータは、専用Webアプリでいつでもどこからでも確認できます。電力量・電気料金・CO2排出量がリアルタイムにグラフ表示され、CSV出力にも対応。本社から遠方工場の稼働確認や、海外拠点のモニタリングも可能です。複数拠点を統合管理したい場合には、有料版「ENIMAS PRO」でカテゴリ別のエネルギーバランスシートも確認できます。

この電力計測のシステムは他の企業からも「ぜひ使いたい」という声が寄せられ、コバヤシ精密工業は「ENIMAS」として外販可能な製品へと進化させることを決めました。
製品化の過程で大きな役割を果たしたのが、SORACOMのデータ転送機能です。二関氏はこう説明します。「製造業でIoT機器を開発・販売しようとするとき、通信セキュリティの専門知識は大きな壁になります。ENIMASのデバイス本体にはセキュリティ機能を搭載していません。暗号化や認証といった処理はすべてSORACOMのプラットフォーム側で行う仕組みにしているので、私たちはセキュリティの実装に悩むことなく、お客様が安心して利用できるサービスを提供できています」

デバイスに複雑なセキュリティ機能を持たせると開発やメンテナンスの手間がかかりますが、SORACOMのサービスでクラウド連携のための認証や暗号化を行うことで、開発工数を抑えながらセキュアなIoTサービスを実現しています。
さらに、このデータ転送の仕組みはビジネスにも新たな広がりをもたらしました。開発当初は自社アプリでのデータ表示のみを想定していましたが、SORACOMのプラットフォームを経由して、顧客が運用する独自サーバーへ電力データを直接送信することも可能になりました。「暗号化をプラットフォーム側で行えるうえ、顧客サーバーへの直接転送まで実現できたことで、製品としての提供範囲が大きく広がりました」と二関氏は振り返ります。
導入企業からは具体的な成果も報告されています。ある製造業の企業では、24時間通電し続けていた変圧器を発見し年間約40万円のコスト削減を実現。別の企業では冷暖房費の比率が想定以上に高いことが判明し、運用見直しで年間20%の節電を達成しています。
ENIMASの導入先は、当初想定していた中小製造業にとどまりません。電気工事不要で手軽に設置できる点が評価され、誰もが知るような大手企業にも採用が広がっています。また、飲食業では複数店舗の電力使用量を本部から一括で把握し、店舗ごとの省エネ改善に活用するといったケースも生まれています。業種や企業規模を問わず「設備ごとの電気を見たい」というニーズに応えられることが、ENIMASの強みです。
相模原市の省エネルギー化普及啓発事業や川崎市の「電力見える化サポート」事業でも採用されるなど、自治体の脱炭素施策を支えるツールとしても評価が広がっています。
今後の展開
「電気の見える化」を、脱炭素社会のインフラに
コバヤシ精密工業の自社課題から生まれたシステムは、2022年に設立された子会社・株式会社エニマスのソリューション「ENIMAS」として着実に成長を続けています。省エネ大賞(省エネルギーセンター会長賞)や第49回発明大賞(発明功労賞)を受賞し、海外展開にも意欲的で、ドイツのハノーバーメッセをはじめヨーロッパやアジアの展示会でも好評を得ています。

「もともとは自分たちの困りごとを解決するために作ったものです。でも、同じ悩みを抱えている中小企業はたくさんあります。ENIMASなら電気工事も専門知識もいりません。クランプで挟んで電源を入れるだけで、その日から見える化が始まります。まずは気軽に試していただきたいですね」(二関氏)
自社の困りごとから出発し、地元の仲間と作り上げたプロトタイプが、5年の試行錯誤を経て製品となり、いまや業種や規模を超えて多くの現場で活用されています。コバヤシ精密工業の取り組みは、中小製造業がものづくりの力でIoTサービスを生み出し、社会課題の解決に貢献できることを示す好例といえるでしょう。
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