IoT導入の背景

お客様の水まわり空間の課題に寄り添い、長期にわたり顧客ニーズに応え続けたい

トイレやお風呂、キッチンなどの水まわり製品やサービスを提供する株式会社LIXIL(以下、LIXIL)。同社では2022年3月より、パブリックトイレのメンテナンス業務をIoTとAIを用いて刷新するサービス「LIXIL Toilet Cloud」の提供を開始しました。

これは、トイレの利用状況をモニタリングし、LIXILが独自に開発したAI分析システムにより清掃時期を判別、清掃作業員が持つスマートフォンに、そのトイレの状態に応じた最適な清掃の指示が届くというサービスです。このサービスで実現しているのは、「トイレ空間におけるDX」です。利用状況をデータで管理することで、清掃品質を保ったまま清掃業務を効率化するなど、トイレ管理におけるさまざまな課題を解決していくことを目指しています。

LIXILでIoTをパブリックトイレに活用するプロジェクトが始まったのは、2016年でした。これまで、確かな品質の住宅設備機器を製造・販売してきましたが、製品の性質上、販売後はお客様との接点を維持することが難しく、長期的に関係を継続できる方法を模索していました。

当時、IoTやDXの社会的な盛り上がりを背景に、会社としてビジネス変革の機運が高まっていた時期でもありました。こうした流れを受けて、お客様に製品を販売するだけにとどまらず、製品を使っていくライフサイクル全体を見据えた課題解決も担っていく新しい取り組みとして、IoTをLIXILの製品で実現するプロジェクトが立ち上がりました。

パブリックトイレの清掃課題に着目。作業員と共に清掃しながら製品開発を進行

IoTを活かした新サービスの製品開発は、「トイレ空間におけるDX」というコンセプトで始まっていきますが、その背景にあったのは、ビルマネジメント業界の長年の課題でした。

業界の課題は大きく分けて2つあります。1つは清掃作業員の不足です。商業施設やオフィスなどのパブリックトイレは、使用回数が多く汚れやすいにも関わらず、清潔でなければその施設を訪れる人にマイナスイメージを与えてしまいます。そのため、トイレの清掃業務はほぼ毎日数回という高頻度で行う必要があり、人材不足は大きな課題となっています。

もう1つの課題は、日々の清掃業務にムリ・ムダ・ムラがあることです。よく使われるトイレもあまり使われないトイレも、すべて同じ清掃作業を行っているうえ、昨今は感染症の影響で清掃業務の作業内容が増加したこともあり、負荷が増しています。

現在プロジェクトを推進する小川祥司氏は、「清掃作業員はスマホに慣れていない方もいらっしゃいます。そんな方々にも問題なく使っていただけるようにUIの改善を重ね、実際に使っていただきながら何度もブラッシュアップした末にようやく“現場のお墨付き”をいただき、『これなら事業になる』と確信しました」と語ります。

そこからさらに、プロジェクトに協力してもらえる商業施設やオフィスを探し、実証実験を重ねることで実績を積み、2022年3月、事業化に至りました。

実現したサービス

AIが提供する適切な清掃プロセスで、品質を保ったまま業務効率化を実現

完成した「LIXIL Toilet Cloud」は次のような仕組みになっています。

まず、パブリックトイレに設置したセンサーが、トイレの利用を検知。LIXIL独自開発のAIが、センサーから得たデータを用いてトイレの利用状況をリアルタイムで分析します。その後、各清掃作業員が持つスマートフォンの清掃業務効率化支援AIアプリに、トイレの利用状況が送信されます。清掃作業員はスマートフォンアプリの画面を見て利用状況を確認し、清掃が必要なトイレから清掃する、という仕組みです。データ分析や業務設計はアプリにお任せできるため、サービスを導入すればすぐに清掃作業の効率化を始められます。

このサービスのポイントは、トイレの清掃品質を保ったまま、清掃工数を減らせることです。すべてのトイレを一律に清掃するのではなく、AIの分析結果に従って必要な箇所のみを掃除することで、トイレ全体の清掃品質を効率よく保てます。

清掃業務効率化支援AIアプリのデータ送信に関わる部分には、データ通信サービスSORACOM Airを利用しています。センサーから取得したデータを、SORACOM Airを組み込んだ通信ゲートウェイに集約し、セルラー回線でクラウドに送信しています。

今後のサービス展開

トイレ空間をより快適な空間に

「LIXIL Toilet Cloud」は現在、さまざまな商業施設やオフィスにサービス導入を進めています。また、清掃業務支援のIoT技術だけでなく、トイレの点検・排水管洗浄サービスもセットで提供し、さらにはオプションでトイレの修理交換サービスも提供しています。「LIXILのトイレでなくてもサービスは利用可能ですので、今後はより広く展開していきたいと考えています。清掃業務のように毎日実施する業務の効率化は、DXの効果が得やすい分野です。特に階をまたぐ高層ビルや広い敷地を持つ店舗など、移動の距離があるケースでは、本サービスで得られる効果は高いでしょう」(小川氏)

この「LIXIL Toilet Cloud」は、トイレメーカーとして培った技術・ノウハウと最新のIoT技術を組み合わせたサービスです。LIXILは今後、このサービスを各施設に展開することで、快適で清潔なトイレ空間の実現に貢献していきます。

株式会社LIXIL

株式会社LIXIL

ビジネスイノベーション部
小川 祥司 氏

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