IoTでシェアサイクルのスマートロックを制御。シームレスな位置測位も可能に

チャリチャリ株式会社

Contents

1 導入の背景
- 1.1 セルラー通信を利用したIoTシステムで4400台の自転車を管理
2 実現したサービス
- 2.1 SORACOM導入でスマートロックの自社開発がスムーズに
3 今後の展開
- 3.1 日常の移動を支えるインフラとして、技術的課題への挑戦

【この記事でわかること】
・チャリチャリ株式会社が運営する「Charichari（チャリチャリ）」は、福岡市を中心に全国展開するシェアサイクルサービス
・ユーザーが快適に使えるサービスにするため、IoTデバイスとしてのスマートロックを自社開発、量産に着手した
・SORACOMの導入でバッテリー消費を軽減しながら、自転車の管理に必要なデータ管理が可能に

【SORACOM活用のポイント】
・スマートロックの振動に強いICチップ形状のeSIMを搭載、スマートロックをリモート制御
・IoTデバイスから送信されたデータをSORACOM側で暗号化してセキュアにクラウド連携

導入の背景

セルラー通信を利用したIoTシステムで4400台の自転車を管理

Charichariは、福岡市からスタートし、今では名古屋市、東京都区部、熊本市と全国展開しているシェアサイクルサービスです。街中のポートに配置された自転車を、スマートフォンアプリだけで簡単に使うことができます。

すでに、約4400台の自転車と1100ヵ所以上の駐輪ポートを展開し、累計のご利用回数は1500万回以上を超え（2023年5月時点）、生活圏の移動を支える手段として着実に地域に浸透しています。前身となるプロジェクトは、メルカリの子会社だったソウゾウが2018年2月にスタートした「メルチャリ」で、2019年にneuetに事業主体が移行し、サービスを拡充してきました。

お客さまが自転車を利用する際に重要な役割を担うのが、自転車に取り付けられたスマートロックです。スマートロック上のQRコードをアプリで読み込むと、その情報がクラウド上のCharichariの管理システムに連携され、スマートロックの解錠、施錠を管理しています。

自転車が配置されているポートの場所や、今使える自転車が何台あるかといった情報は、常に最新の情報として把握する必要があります。そのため、自転車の位置情報を管理してアプリに連携させているほか、整備・点検や再配置などのオペレーションを効率的に行うために活かしています。

このように、「必要な時にさっと自転車を利用できる」スムーズなサービス体験を実現するために、セルラー通信を利用したIoTの仕組みを活用しています。

実現したサービス

SORACOM導入でスマートロックの自社開発がスムーズに

初代のスマートロックは外部の協力会社にすべての開発を依頼していましたが、バッテリー消耗などで大きな課題がありました。そこで、2代目のスマートロック開発と投入を行いました。2代目では既製のハードウェアをカスタマイズして対応しています。

しかし、解錠の安定性や、通信の方式によるバッテリーの消耗などの課題に対して、独自にチューニングしたいというニーズがあったこと、さらに全国展開を見据えて管理オペレーションを実施しやすくするため、チームとしては初となるIoTデバイスとしてのスマートロックの自社開発と量産に着手することになりました。

自転車に取り付けるスマートロックでは、大きな揺れや衝撃への耐性が求められます。当初、カード型SIMを差し込むことを計画していましたが、2代目以降ではより耐衝撃性の高いSORACOMのチップ型SIM（eSIM）を採用しました。すべてのスマートロックをセルラー搭載にしたことで、自転車1台1台の管理が可能になりました。

電力消費の面においても、デバイスとクラウド間をデータ量を抑制しながら接続できるプロトコル（MQTT）を採用しました。データ通信の暗号化にもSORACOM Beamを利用することで、セキュリティ品質を保ちながら、バッテリーの消耗を大幅に軽減し、デバイス開発・管理にかかる手間も削減できました。

今後の展開

日常の移動を支えるインフラとして、技術的課題への挑戦

利用者数も展開するエリアも増え、お客さまがより快適に使えるようシステムやオペレーションも進化し続けています。

「シェアサイクル運営のポイントは、『解錠・施錠がきちんとできること』『自転車の再配置などオペレーションの効率化』『アプリの使いやすさ』の三点です。SORACOMを活用して自社でIoTデバイスを開発・量産できたことで、全国展開できるサービスになりましたが、まだこれから改善したいポイントもあります」

「例えば、直近では一時駐輪機能のリリースなど、新たな価値の提供に向けてサービスをどんどん進化させています。日常の生活に欠かせないインフラとしての役割も高まっているため、ハードウェアとしても、位置情報の取得精度の向上など、技術的な改善点が多く求められています。引き続きSORACOMの各種サービスを組み合わせることで、これらのハードウェア開発をより早いサイクルで行うことを目指し、多くのお客さまに快適に使っていただけるサービスにしていきたいと考えています。」（チャリチャリ株式会社 VP of Engineeringの蛭田慎也氏）