自動ドアの点検回数を減らし、人手不足の課題解決にアプローチ

防犯用センサーや自動ドアセンサー、車両検知センサー、水質管理ソリューションなど、様々な用途にセンシング技術を展開しているオプテックス株式会社(以下、オプテックス)。中でも、自動ドア開閉のためのセンサーは40年ほど前から提供を始め、現在のシェアは世界で約3割、国内では約半分を占めています。

同社は2021年1月、IoTを活用して自動ドアの利用状況を遠隔モニタリングする「自動ドアデータプラットフォーム」を開発し、自動ドア装置の販売や保守メンテナンスなどを行う企業への提供を開始しました。そして第1弾として本サービスを活用し、フルテック株式会社(以下、フルテック)が「自動ドア保守契約サービス Fi-R(エフ アイ リモート)」をリリースしました。

一般的に自動ドアの点検はだいたい3カ月に1回のペースで、毎回1~2人が現地に赴いて実施します。点検頻度からも推測できるように、そこには多くの人手や時間がかかっています。そのうえ、業界には若い人材がなかなか入ってこないといった現状もあり、人手不足や後継者不足が課題となっていました。

今回フルテックがリリースした「自動ドア保守契約サービス Fi-R(エフ アイ リモート)」は、そういった課題を解決するため、自動ドアの点検の効率化を図るサービスとして設計されました。「自動ドアデータプラットフォーム」によって、自動ドアの状態をリアルタイムでモニタリングすることで、従来のサービス品質を維持しながらも、年4回実施していた点検の回数を年1回に減らせるようにしています。

クライアントからの要望で、初のIoTシステムの開発に着手

「自動ドアデータプラットフォーム」は、センサーから取得した自動ドアのデータを、フルテックのような提供先企業へインターネットで共有するまでの役割を果たしています。オプテックスはセンサーの開発に特化してきた企業であるため、今回が初めてのIoTシステムの開発となりました。

そもそもリアルタイムにデータを取得したいという要望は、フルテックからあがってきたものでした。そこでオプテックスは、自動ドアは日本全国の様々な場所に設置されていることから、全国どこでもつながる通信手段が必要だと考え、セルラー通信を利用することにしました。

開発を手掛けたエントランス事業本部 開発4課の宮原氏は、2016年からソラコムのサービスリリースを継続的にウォッチし、ユーザーグループなどにも参加してIoTに関する知見を深めてきました。

セルラー通信サービスはいくつかの企業を比較し、SORACOMに決定。通信のセキュリティが担保されていることや、コスト面などQCDのバランスが決め手になりました。また、APIも複数用意されており、通信の利用開始・終了がオプテックスの手を介さずに直接IoT機器の設置現場からアプリ経由でできる仕組みがつくれたことも、大きな魅力だったと言います。

従来の通信をもとに構築した「自動ドアデータプラットフォーム」の仕組み

自動ドアは、通行する人を検知したセンサーが、ドアシステムの制御部分に信号を出して開閉を指示します。このとき、ドアが1回開いて閉まるまでの間にセンサーがきちんと生きているかどうかを確認するため、CAN通信という手段を用いて、自動ドアの駆動部とセンサー間の情報共有をしています。

今回の「自動ドアデータプラットフォーム」では、そこにLTEの通信を行うゲートウェイを追加開発し、センサーや自動ドアのエンジンコントローラーの死活状態だけでなく、検出回数など、メンテナンスに活用できるデータをリアルタイムでクラウドに転送する仕組みをつくることで、自動ドアの状態をモニターできるようにしました。

クラウドに蓄積されるデータは、提供先企業で可視化や分析を行って、メンテナンスなどに活用します。フルテックが提供する「自動ドア保守契約サービス Fi-R(エフ アイ リモート)」では、データから従来の点検の報告に代わるレポートを作成し、顧客とのコミュニケーションに利用しているとのことでした。

実際にサービスを利用している企業からは、「コロナの影響でビルに入場できなくなり、点検が滞っている設備もあったので、点検回数を減らすことができて良かった」「点検回数が少なく契約料金が安いので、コストダウンにもなり大変助かる」との声が聞かれています。ショッピングモールなどでは、各テナントとの点検日時の調整に手間がかかっていたため、その回数が減らせることが喜ばれています。

データは、点検に代わるレポーティングだけでなく、たとえば故障したときにどこが壊れたのかという予測にも役立ちます。また、故障の予兆が見えたときに自動ドアの設置先のお客様に「大丈夫ですか」と声をかけたり、経年劣化で故障する前に検知回数が一定数を超えたら交換の提案に行ったりと、お客様から連絡をもらってからリアクションするのではなく、提案型の営業ができるようになることもモニタリングの大きなメリットです。マンションなど、自動ドアが24時間365日休みなく動く施設からは、「管理員が不在の場合でも、不具合に気付いてもらえるのは安心」との声が寄せられています。

IoTで、センサーの提供だけではない付加価値を

「自動ドアデータプラットフォーム」は、今後も様々な自動ドアメーカーや販売会社に提供していく予定です。
「現時点では、業界内の生産性向上に貢献するプラットフォームの提供にとどまっていますが、今後は自動ドアを通行される方や、自動ドアシステムを利用している店舗様、行政などに向けても、『安心・安全・快適』に加え、皆様に『感動』して頂けるような付加価値を提供していければと考えています。」(竹田氏)

オプテックス株式会社

オプテックス株式会社

エントランス事業本部 開発部 開発4課 宮原 大輔 氏
エントランス事業本部 国内営業部 S&M1課 竹田 和義氏

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