即時に取得できる気象データとの掛け合わせで、新たなビジネスシーンでの活用を広げる

工場やビルなど作業現場における強風対策や、屋外イベント・レジャー施設・ゴルフ場・保育園や小学校での熱中症対策、施設の強風や強雨に対する安全対策のほか、ドローン物流における安全運航、農作物の生育管理、ビジネスデータと組み合わせたマーケティング分析など、気象データは、様々な自社データとの組み合わせによる利用ニーズが高まっています。

世界最大級の民間気象情報会社として、気象情報サイト「ウェザーニュース」などを運営する株式会社ウェザーニューズ(以下、ウェザーニューズ)。同社はこれまで、海運、航空、鉄道、道路、流通、スポーツ、モバイル・インターネット、放送などの様々な業界に向けて、気象情報を活用した支援サービスを展開してきました。

それらのサービスの一環として、ウェザーニューズは2020年9月に小型の高性能気象IoTセンサー「ソラテナ」を開発。気象情報を必要とする現場に設置し、その場の風量や風速、雨量など8項目を数値として見える化することで、現場の安全対策や作業の効率化などにつなげています。観測データはクラウドへ保存され、APIで提供するため、データの閲覧や保存だけでなく、お客様のアプリケーションやシステムに組み込むことが可能です。

このソラテナに、ソラコムはIoT向け通信サービスの「SORACOM Air」を提供。現地で通信設定などを行う必要がなく、電源を入れると同時に観測が始められるという仕様の実現に貢献しています。

なお、SORACOM Airは、同じくウェザーニューズが開発した花粉飛散量のIoT計測センサー「ポールンロボ」にも使われています。こちらは春の花粉シーズンに、自宅に設置してくれる人を募集し、より高精度な花粉情報の収集に活用。ウェザーニューズが台本考証・美術協力を行っているNHK連続テレビ小説『おかえりモネ』のワンシーンにも登場しました。

今回の事例では、ソラテナに焦点を当て、開発の背景や実際に活用されている様子、これからの可能性などをご紹介します。

今の現場の気象状況を、安価に測定するニーズに応えたい

近年は、豪雨や強風をはじめ、災害や被害を引き起こしやすい「気象の極端化」が頻繁に見られるようになっています。そういった背景もあり、「まさに今ここの気象状況がどうなっているのかを測定したい」という声が、以前から聞かれていました。

ウェザーニューズが事業を通して目指すのは、気象による災害や被害を極力減らすことや、気象をうまく活用して様々な企業のビジネスに役立てること。そのためには、現地の気象情報を得ることが非常に大事です。しかし、気象庁が設置する「アメダス」などの既存の観測システムだけでは、ピンポイントで現地の気象情報を得ることは難しいため、周辺の観測値などから解析した値を用いざるを得ません。

この課題を解決するためには、現地に観測機の設置が必要となります。ところが、雨量や風速をはじめマルチな要素を測定できる既存の観測機は、非常に大きくて高価なものばかり。だからといって、雨量計だけ、風速計だけと個別に設置しても、結局は費用が嵩んでしまうといったことがありました。

IoTの通信はSORACOMに任せることで、本来の開発に集中

そこでウェザーニューズは、小型で現地に設置しやすく、安価でマルチな要素が観測できる観測機の開発に着手。通信面はすでにポールンロボで導入していたSORACOM Airを使用したため課題はなかったとのことでしたが、ほかに「どういったセンサーを使うのか」「観測システムをどう構築していくのか」といった課題がありました。開発にかけた期間は2~3年。センサーメーカーにも協力を仰ぎながら、フィールドテストや耐久テストなどを行い、ソラテナを完成させていきました。

そうしてできたソラテナの最も大きな特徴は、小型で、1分ごとに気温・湿度・気圧・雨量・風速・風向・照度・紫外線という8つの要素をマルチに測定できること。電源を入れるだけで観測を開始し、SORACOMの通信を通じて自動的にデータがサーバーに送られます。ソラテナを導入した事業者はAPIを通じてデータを取り込み、閾値やアラートの設定をしたり、自社のデータと連携して応用したりということができるようになっています。

「IoTにおいて、通信は非常に重要なファクター。そこを安心して任せられるのは、ソラコムさん以外にはありませんでした」そう語るのは、ウェザーニューズでモバイル・インターネット事業部 マーケティング チームリーダーを務める上山亮佑氏。

実は、ソラテナはこれが2代目。1代目のときは自社で通信まわりを構築していたそうですが、とても大変だったとのこと。「我々の本来の仕事は、サーバーに上がってきたデータをいかに提供するかというところ。通信部分をソラコムさんにお願いできるようになったことによって、本来やるべきことに集中できるようになりました」(上山氏)

農業やドローンなど多岐に渡る分野で気象データの活用広がる

気象データは、ショッピング店や建設現場をはじめ、実に多種多彩な業界でニーズがあります。なかでも現在最もソラテナのニーズが高いのは、農業分野やドローン分野です。

農業は毎日の作業が天候に影響されますが、テレビの天気予報を見ても、自分の畑や工場を取り巻く天気とは大なり小なり異なります。その際、畑や工場の気象をピンポイントで観測できれば、適切なオペレーションを選択することができます。ソラテナは小型なので設置場所に悩むことがなく、コストも安価なため導入しやすいとして、活用が広がっています。

ドローン分野では、運行管理を行う事業者にソラテナが注目されています。ドローンには飛行できる風速の制限があり、離発着のときに風速の上限を超えていないかを確認する必要があります。これまでは人間の感覚で判断していましたが、ソラテナを導入したことで、数値で明確な判断ができるようになりました。ソラテナの観測データは、ドローンの運行管理システムに連結し、電波やカメラの状態などと合わせて一体で管理されています。

ほかにも、高速道路のメンテナンスを請け負う会社では、冬場に道路の凍結抑制剤を撒くかどうかを判断するためにソラテナで現地の気温などを観測。道路が凍りそうな気象になっている場所があれば、優先順位を上げて巡回するといった形で活用されています。

気象による災害に対しても、キーとなるプロダクトに

今後、需要予測などのビジネスデータと掛け合わせ、近未来のビジネスインパクトをさらに正確に予測できるようになる見込みです。ウェザーニューズではそうした気象データと最新技術の活用により企業のDXを推進し、ビジネス課題を解決するWxTech®︎(ウェザーテック)サービスを提供しています。WxTech®︎の一つであるソラテナの観測データが導入先で蓄積されていけば、現地の気象予測などもできるようになると考えられています。

「市場からの期待は感じられるので、これからどんどん広がっていくといいなと思っています。ソラテナはまだまだローンチしたばかりですが、性能の高さや導入コストの安さから、まずは既存の高価な観測機を導入していた事業者さんが乗り換えてきている状況です」(上山氏)

今後の展望として、大きくウェザーニューズが目指すところの「災害や被害を減らす」といった方向に対しても、今後まだまだ活用可能性を模索していきたいと考えています。また、現時点ですでに海外からのニーズも聞かれていることから、海外への展開も視野に入れています。さらにハード面では、SORACOMのAIカメラである「S+ Camera Basic 」を活用し、空や現場の様子を映した映像データも掛け合わせて、より現地の気象を詳細に観測する取り組みを行いたいと考えています。

「可能であれば、ソラテナ自体ももっと安価に、もっと手軽に多くの人が活用できるようにして、ユーザーの裾野を広げていきたいですね。今後さらにIoTの技術が発展していけば、気象による災害に対してももっと役立てられるようになるでしょう。ビジネスはもちろん、災害から人や財産を守るといった面でももっと気象データが活用できるよう、ソラテナが一つのキーとなるプロダクトに育ってくれるといいと思っています」(上山氏)

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