株式会社ソラコムがご紹介する「IoT事例-ビジネスの最前線-」。今回は、”カレー×IoT”で、飲食店におけるデジタル活用例を見ていきましょう。

【この記事でわかること】
・株式会社FOODCODEが運営するアプリでのみ注文するカレー店「TOKYO MIX CURRY」
・アークヒルズ店ではカレーの調理温度を最適に保つために視認性の高いIoT温度計を導入
・顧客からの味への評価が向上。アラート通知や蓄積データの活用も視野に

【SORACOM活用のポイント】
・食品専用の温度センサーにつながった液晶ディスプレイで現場スタッフ全員がカレーの温度を認識できるようになった
一日の調理温度の推移を振り返り、オペレーションの最適化に貢献
・調理温度が逸脱するとSlackやLINEなどに通知される仕組みも構築

導入の背景

「カレーがぬるい」を解決したい

株式会社FOODCODEが運営する「TOKYO MIX CURRY」は、アプリでしか購入できないOMO型(オフラインとオンラインが融合した)カレー店です。都内14店舗に加えて企業へのデリバリーも展開しています。

専用アプリから注文して受取店舗を指定し、カレーの種類や辛さ、トッピングなどを選んで事前にモバイルオーダーで決済。店舗では容器に入ったカレーを受け取り、そのままテイクアウトかイートインかを選べます。

アプリ画面

来店前の顧客接点をアプリでのやり取りに集約することで、人件費削減や業務効率化につながることに加えて、顧客データを一元化できるためきめ細かな顧客対応も可能になるという利点があります。

いつも同じメニューを注文する人に対しては、受け渡し時に「来週から新メニューが出ます。よかったらお試しください」と提案したり、割引クーポンを送信したりと顧客ひとりひとりに合わせた接客が可能だといいます。

食事の感想もアプリを通じてフィードバックがもらえるので、すぐに改善につなげられます。アークヒルズ店では、これまで一日の特定の時間帯で「カレーがぬるい」というフィードバックが複数寄せられていたといいます。

FOODCODEのCTOで専用アプリの開発者でもある平井祐樹氏は、「カレーは熱々で提供するのが理想的。温度への不満解消は喫緊の課題でした」と語ります。

FOODCODE CTOの平井氏

とはいえ、食に関する評価は主観的になりがちなことも。カレーの温度が低くなっている事実の有無を検証するため、IoTデバイスを用いて温度データを取得してみることにしました。

実現したサービス

IoTデバイスで調理温度の視認性アップ

FOODCODE社が温度測定のIoT化を依頼したのは、ソラコムのパートナー企業でもある株式会社シードプラスでした。

「従来使用していた温度計は視認性が悪く、混雑時など繁忙時にスタッフが確認しにくいケースがありました。そこで、シードプラスさんに調理温度が見やすくでき、かつ遠隔からでも温度が確認できるようIoT化をお願いしました」(平井氏)

従来の温度計

シードプラス社の前嶋武社長は、ディスプレイ、操作ボタンのついた小型のマイコンモジュールを用いた温度管理用IoTデバイスを開発しました。

衛生面や耐熱性で食品への利用に配慮された専用温度計センサーをカレー鍋にセット。マイコンからセルラー通信搭載のルーターを経由して、取得した温度データをIoTプラットフォームSORACOMに送ります。

蓄積されたデータを可視化するとともに、設定した閾値を超えた場合に温度表示の色を変更したり、コミュニケーションアプリのSlackやLINEを通じてスタッフへ通知したりすることも可能にしました。

実験段階のエラー表示

閾値を超えると温度表示の色が変更する(試験中の画像)

「調理温度の変遷を見える化することで、実際に温度が低くなってしまうことがあると分かりました。デバイスを壁に張って視認性を高めたことで、スタッフが以前にも増して調理温度を気に掛けるように意識づけができ、安定して最適な温度でご提供できるようになりました。

システムを導入以降、カレーの温度に対するご不満の声は一切なくなり、味への評価も上昇しました」(平井氏)

OMOによる顧客体験の向上を目指すTOKYO MIX CURRYの理念に沿うIoTシステムの実現に、SORACOMの利便性も寄与しました。

「アラート通知にもSORACOMのサービスを利用しています。閾値の設定は、SORACOMのユーザーコンソール上で気軽に変更でき、温度表示の色を変更するにも通知を飛ばすにも、温度以外のトリガーが不要だったので、とても導入しやすかったです。

現場スタッフはアルバイトも多く、誰でも分かりやすいシステムは教育コストも下げてくれるので、より接客に対して注力できます」(平井氏)

「味への評価につながる切実な課題である一方、現場のスタッフの使い勝手も鑑みてなるべくシンプルな構成で可視化できるように設計しました」(前嶋武社長)

シードプラス代表の前嶋氏

今後の展開

盛り付けサポートや混雑状況の把握でさらなるオペレーションの向上を

平井氏は、店舗へのIoT導入にさらなる活路を見出しています。

「注文ごとに複数あるトッピングの種類が異なるため、どうしてもヒューマンエラーは避けられない。IoTで盛り付けをサポートできればオペレーションのシステム化が加速し、さらに顧客体験の向上に思考を割くことができます。

さらに、クラウド型カメラを活用すればリアルタイムで混雑状況を把握することもできます。利用者、管理者どちらにとっても有用なため、ぜひ検討したいです」(平井氏)

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