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物流業界の諸問題をデジタルでサポートしたい
オンラインで様々なものを購入する機会が増えた今、物流はこれまでよりもさらに身近で、ますます社会に欠くことのできないインフラとなっています。しかしその一方で、物流の需要が労働人口を超えていることや、一人当たりの仕事量の増加傾向もあいまって物流業界は人手不足という大きな課題を抱えています。
株式会社Hacobu(以下、Hacobu)はこの状況に対して、「運ぶを最適化する」というミッションのもとに、物流業界の課題をテクノロジーで解決するアプリケーションを開発しています。「物流の現場は、紙やFAXのやりとりを中心としたアナログ世界。トラックのドライバーが常に足りていないという状況を変えていくには、デジタル化によってデータを取得し、無駄を省いて効率化していくことが不可欠です。」と、プロダクト企画本部 プロダクト企画部 プロダクト責任者の久住大樹氏は語ります。
個人に身近な物流は、自宅に注文品などが届けられるBtoCの宅配です。受け渡しの接点はラストワンマイルと呼ばれており、大手の宅配業者によって配送状況のリアルタイムトラッキングやサインレスといった形でデジタル化が進められています。Hacobuが効率化を目指すのは、その手前の企業間物流(BtoB)です。
物流業界の構造を紐解けば、荷主であるメーカーや運送業者、卸業者、物流業務を包括的に受託する様々なプレイヤーがいて、場合に応じて各社が連携しながら荷物を運びます。BtoBの世界は中小企業がほとんどを占めるため、事業者数は数万にものぼりますが、それぞれの事業者が自社でシステムを導入しても個別の最適化にしかならず、小規模の運送会社は取引先の様々なシステム形態に対応しなければならないということが起きています。
「そこで我々は、事業者間で共通して使える仕組みを創り、事業者間の配送状況の管理やコミュニケーションのやりとりをデジタル化・効率化するためのソリューションを開発しようと考えました。」(久住氏)
安価なサービスで中小企業にも取り入れやすく
Hacobuが提供しているサービスは、「MOVO(ムーボ)」という5つのアプリケーションと、日野自動車株式会社をはじめとする外部企業サービスとの連携や協業から成り立っています。
その中でも最初に開発されたのが動態管理サービスの「MOVO Fleet(ムーボ・フリート)」です。これは、GPSの付いたIoT端末をトラックに装着することで、現在位置や配送ルート、到着予定時刻を把握できるサービスです。
「物流業界のBtoB領域を構成する中小の運送会社は、車両の配送状況が見えないために、配送ルートの効率化や改善ができていないという課題に最初に取り組みました。ITに投資しようにも中小企業にとっては大きな予算が必要になるので、我々が安価に動態情報を管理できるツールを提供することで、業界全体のデジタル化の底上げができるのではないかと考えました。現在は中小の運送会社に限らず、大手小売、卸売会社の配送でも使われています。」(久住氏)
低価格で管理しやすいサービスの開発には、SORACOMの親和性が高かった
MOVO Fleetの開発では、安価であることはもちろん、運送会社の運用負担が少ないツールを目指しました。そこで、車両に簡単に抜き差しでき、GPSも付けられるシガーソケット型のデバイスを国内外から探し、評価して絞っていきました。
IoTの通信には、ソラコムのデータ通信サービス SORACOM Airを採用しました。通信面で条件としていたのは、第一にコストが抑えられること。通信は高頻度ながら、1回のデータ量がそこまで多くないという利用環境に適切なものがないかを検討しました。また、デバイスからは通信状態の良し悪しがわからないため、遠隔でモニタリングできることも重要でしたが、SORACOM Airでは、管理画面で見られることも評価されました。
加えて、事業の成長度にあわせてスモールスタートからシームレスにスケールできることも重要でした。その点でもソラコムは、最少で1回線から発注でき、注文手続きも簡単にできるために使い勝手が良いと感じたといいます。いろいろなAPIが用意されていることも、今後の可能性や親和性があると考えました。
MOVO Fleetは2016年に開発に着手し、半年ほどの開発期間を経て、2017年にリリースに至りました。当初はユーザーとして運送会社を想定していましたが、メーカーや小売などにも広がり、今では500社以上の企業に導入されています。
問い合わせ数の削減と、配送ルートの最適化を実現
MOVO Fleetの特長の一つは、IoTデバイスを取り付けた車両の位置情報を5秒に1回の頻度で取得できること。これまで運送会社は、運送先の企業から荷物がいつ届くのかという問い合わせを電話で受けていました。中でも渋滞や悪天候、自然災害などがあった場合は、ドライバーに電話確認したり、依頼している協力会社に電話し、依頼先の会社がさらにドライバーに電話確認したり・・・というように、電話リレーが起きていました。
それに対し、MOVO Fleetでは車両の位置が一目瞭然で把握できることに加え、URLを共有すると配送先企業でも画面が見られるようになるため、車両の到着時間に関する問い合わせをなくすことができます。「協力会社の車両にもIoTデバイスを取り付ければ、自社の車両と同じ画面で管理できるところもポイントです。」(テクノロジー本部 エンジニアリングマネージャー 吉田武史氏)
すべての車両の配送計画を一括で管理できる機能もあり、その中で全車両が目的地に到着したかが画面上で確認できるようになっています。遅れそうであればアラートが通知されるため、即座に状況確認に移ることができます。走行履歴も取得でき、より走行距離や時間の短いルートを検討しながら最適化していくことに役立ちます。
2018年には、ドライブレコーダーを兼ね備えたMOVO Fleet用のIoTデバイスも新たに開発しました。以降、車両が排出するCO2を見える化する機能など、高頻度で機能追加を進めています。
企業間データ連携やCO2排出量の見える化も見据えて、物流業界の未来を支えたい
現時点でも、URLを共有することで企業間の連携が取れる機能はありますが、「MOVOはオープンな仕組みなので、今まで以上に複数の事業者で一つの情報を共有して使える仕組みにしたいと考えています。」と、久住氏は今後のサービス展開について話します。さらにその先には、データ活用のニーズが高まることを見据えてAPIを強化し、いろいろな事業者が好きなときにデータを自社システムに取り込み、加工して使えるようにすることも目指しています。
もともとは動態管理のためにMOVOを導入した運送会社が、MOVO Fleetのデータを活用したルートの最適化で配送車両を8台削減し、その車両を使って新たな事業を始めたという成功事例もあります。加えて、カーボンニュートラルの実現に向けて、CO2排出量削減など環境に配慮した経営への関心はますます高まると考えられます。久住氏は「それらをサポートできるような機能やデータをしっかりと提供していきたい。」と、展望を語りました。
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