IoT導入の背景/課題

デジタル化発展途上の保育業界をDX。自社保育園から地域のモデルケースへ

福岡県北九州市で待機児童解消と子育て支援を目的に同市の認可小規模保育事業所の運営も手がけている、株式会社ハピクロ(以下、ハピクロ)。より良い保育サービスを提供し、保育士がより働きやすい環境を作るべく、保育園のIT・IoTでのデジタル化を推進しています。

また、ハピクロは得られた知見を元に製造業・飲食業などのIT・IoT導入サポート事業も手がけており、地域ビジネス向けのデジタル活用の専門家としての顔も持ちます。

保育業界では保育士不足が深刻となっており、労働環境の改善が叫ばれている一方で、紙で業務を進める園はいまだ多く、テクノロジー活用の余地は大きいという指摘があります。同時に、保育士がIT関連にあまり明るくない場合も多いため、彼らが使いやすいデジタルツールの導入が必要でした。このような背景から、IT・IoTの力でさまざまな業界に好循環を生み出すビジネスモデルを目指し、2017年にハピクロはスタートしました。

代表取締役社長の中田佳孝氏は、「保育士は忙しいうえに、ITやIoTに精通している方はまだ少ない印象です。デジタルツールを使い慣れていない方々でも、簡単に導入・活用できるシステムを提供できれば、にじいろのはな保育園だけではなく、地域の保育園全体で保育士がより働きやすい環境へと変わっていくはずです。さらに、IT化の発展途上にあるほかの業界にも、テクノロジーの活用事例を応用できると期待しながら、保育園のIT・IoT化を推進しています」と、語ります。 ハピクロ中田氏

 

防犯カメラの死角と台風対策。保育園の安全管理にまつわる2つの課題

にじいろのはな保育園では、安全管理について以下のような2つの課題を抱えていました。

1つ目が、防犯カメラの死角の問題です。にじいろのはな保育園では2018年の開園時から、不審者対策などの一環として、配線工事等が必要な従来型の防犯カメラを玄関や保育室に設置しています。しかし、防犯カメラを運用する中で、カメラが捉えきれない死角があることに気づきました。

死角をなくすためには、カメラを動かす必要がありますが、配線工事を伴うため簡単には動かせません。死角を補う追加のカメラを設置するという手もありますが、従来型の防犯カメラでは追加設置コストは大きな負担になります。また、ストレージに制約があるため、カメラの台数を増やせば録画映像の保存期間が短くなってしまう、という問題も生じます。

工事の手間や追加コストを抑えながら、必要な時間分の録画を残せるようなカメラが求められていました。

 2つ目は、北九州市で年に1回程度発生する台風への対応です。にじいろのはな保育園では、これまで台風が夜間に通過することがわかると、中田氏を中心とした職員が園内に泊まり込みで待機し、園の安全を確保していました。職員の負担はとても大きいものでしたが、共働き世帯が半数を超える現代において、保育園は働く親から子どもを預かる社会インフラのひとつとも言える存在です。もし台風被害を受けて開園できない場合、園児の保護者が仕事に行けないという事態も発生します。

同園の位置する地域は2022年度から市内の高潮警戒区域に指定されたこともあり、さらなる安全意識の向上も求められていました。持続可能な体制構築のためにも、職員への負担を軽減しつつ、園内の安全を常時確認できる仕組みづくりが必要でした。

実現したサービス

クラウドカメラサービスで、防犯カメラの死角をカバー。台風発生時は園内の安全確認をリモートで実施可能に

保育園の抱えるこれら2つの課題を解決するために、ハピクロでは「Soracom Cloud Camera Services ソラカメ」を導入しました。ソラカメはコンセントとWi-Fi環境があれば、付属部品等を使うことであらゆる場所に設置できるクラウドカメラサービスです。iOSやAndroidの専用アプリを使って簡単にセットアップでき、スマートフォンアプリで、手軽にリアルタイム映像のモニタリングや過去録画の確認が可能です。

 同園ではまず、既に設置されている防犯カメラの死角を補えるよう、保育室2部屋と玄関に、合計3台のソラカメ対応カメラを設置。これまで安全管理の面で不安要素となっていた死角をなくすことができました。

また、台風発生時には、中田氏が自宅からからスマートフォンで園の安全確認を実施。いつでもどこでも園内の様子を見たいときにすぐに確認できるメリットを感じたといいます。

 「正直、実際に使ってみないと、どのカメラソリューションが自分達の期待を満たしてくれるのか分かりませんでした。その点、ソラカメは、ほかの製品・サービスと比べてもカメラの本体価格が3,480円(Atom Cam2)と非常に安く、設置工事も不要ですから、導入は非常にスムーズに進めることができました。初期設定も簡単で、カメラデバイスが手元に届いてから10分ほどで利用を開始できました。

録画した映像やリアルタイムの映像をスマートフォンで確認できる点も、導入の後押しになったポイントです」と、中田氏は振り返ります。

リアルタイムおよび録画映像をスマホで簡単に確認できる点については、実際に利用開始後に「想像より素晴らしい」と感じ、追加購入を決めました。

「必要なタイミングで必要量だけ購入できるのも、とてもありがたいです」(中田氏)

ソラカメ導入エリアを拡大

ソラカメの導入効果を体感した中田氏は、保育園と同じく自社で経営する、子ども連れで利用できるレンタルスペース「BABY ROOM」にも導入を決定。リモートでも複数の居室を確認できる環境を整え、管理工数の削減に成功しました。

「現場で使ってみて、当初は想定していなかった課題解決にも応用できると気付きました。導入ハードルが低いソラカメだからこそ、横展開もスムーズです。今では、保育園にも更にソラカメを追加しています」(中田氏)

今後のサービス展開について

保育園のドライブレコーダーに!ソラカメを用いた自社ノウハウをソリューションとして提供も

ハピクロでは今後、自社で運営する保育園の安全管理からさらに一歩深いところにまで進み、保育業界全体の安全管理体制の向上に貢献していきたいと考えています。

「他の保育園からも相談を受けたり、TVのニュース番組に取り上げられたりする機会が増えました。改めて、我々の取り組みへの関心が高まっているのを感じています」(中田氏)

 残念ながら、保育園や幼稚園などの幼児を預かる施設において、子どもの大ケガといった重大な事故は毎年発生しています。内閣府子ども・子育て本部によれば、保育園や幼稚園における「重大事故」は、2021年に1872件も発生したことが明らかになりました(出典:内閣府子ども・子育て本部 「令和3年教育・保育施設等における事故報告集計」)。

中田氏は上記のような状況を踏まえ、今後の展望について次のように語ります。

「このような事故が発生してしまう背景には、保育業界の慢性的な人手不足に加えて、危険回避の判断が保育士の性格や経験値に委ねられている部分も大きいことが考えられます。保育士の目が届かないところで子どもたちがケガをしてしまったり、経験不足で危険予測ができず、子どもたちの安全が守れなかったりする状況が、全国の保育施設で起こっているのです。

 そこで、ハピクロでは今後、ソラカメを活用した危険予知システムを構築したいと考えています」

具体的には、ソラカメで保育室をリアルタイムに撮影し、九州工業大学と共同で開発中のAIでその映像を分析。危険箇所が検出された場合に、保育士が持つスマホやタブレット、園で使用するパソコンに表示されるほか、危険発生時にはリアルタイムで通知され、即時に危険回避行動がとれるようにしたいとのこと。

本システムで予知した危険箇所は保育士の安全教育にも活用でき、保育業界の安全管理体制の底上げにつながります。2022年現在、本システムは北九州市内の小規模保育園や幼稚園で実証実験中です。北九州市の産学官金連携による支援プログラム「SIT-K(スタートアップイノベーショントライアル-北九州)実証支援」にも採択されており、2024年ごろの実用化に向けて構築を進めています。

 また、近年大きな話題となった保育園・幼稚園バス内の園児置き去り事故の防止に向けて、SORACOM LTE-M Buttonというボタン型のIoTデバイスを利用して、全員の降車をチェックしたことを報告する仕組みを開発し、実証実験を開始しました。

その他にも、保育園のお散歩ルートの自動記録システムなども考案しており、保育園のデジタル化のアイディアはまだまだたくさんあるという中田氏。

「にじいろのはな保育園では、クラウド上に記録が残せるCO2・温湿度センサーも導入し、ウイルス対策などの観点からも安全管理を徹底しています。ハピクロが蓄積した安全管理の知見とIoTを活用しながら、保育園・幼稚園における安全管理や業務改善にトータルで貢献可能なサービスを整えていきたいです。保育業界のDX施策が、ひいては日本のさまざまな分野のDXにつながっていけば嬉しいです

株式会社ハピクロ

株式会社ハピクロ

代表取締役社長 中田 佳孝氏

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