株式会社ソラコムがお送りする「IoT速報-ビジネスの最前線-」。今回は、三菱電機のFA機器による新規事業創出プロジェクトより、IoT緑化シェードをご紹介します。

導入の背景:FA機器の新規事業創出プロジェクト、オープンイノベーション始動

三菱電機は、これまでの枠を超えた「つながり」を重視した活動の推進により、FA技術を活かした共創によるイノベーションを実現し、活力とゆとりのある社会の実現と発展に貢献したいと考え、さまざまな取り組みを行っています。その取り組みのひとつが、都市の緑化を促進する「IoT緑化シェード」プロジェクトです。

プロジェクトの発端は2019年のビジネスアイディア公募にさかのぼります。Society5.0、SDGsの観点で選ばれた鈴田峠農園の企画提案から、農業や教育向けソリューション化を目指し、害虫が嫌う成分を含んだパッションフルーツを使った「IoT緑化シェード」プロジェクトのPoC(実証試験)がスタート。植物の屋根と気化熱で都市に快適な空間を作り出すことを目的に、FA機器を使って灌水やミスト制御を自動化し、管理の手間を削減することに成功しました。

2022年には、事業化を検討する中で「屋外の日陰をつくる」から「人を集める」へとソリューションをピポットし、対象顧客も幼稚園・学校から不動産デベロッパーへと転換。シェードに使う架台の強度や見栄え、水回りの施工などに建設会社のノウハウが必要となったため、大阪・京都で実施したPoCからは青木あすなろ建設も加わり、さらなる異業種のコラボレーションプロジェクトへと発展しました。

また、「人を集める」ソリューションを不動産デベロッパーの提供施設に設置するためには、人流の把握のデジタル化が必要で、そこで出会ったのがソラコムのAIカメラソリューションでした。

実現したサービス:「屋外に日陰をつくる」から「人を集める」ソリューションへ

顧客起点でカメラの導入や高機能化を取り入れ、緑化シェードの利用人数をカウントするため、SORACOMのセルラー通信搭載のエッジAIカメラを採用、自社開発したAIアルゴリズムを用いた人数カウントや、パッションフルーツの生育状況の判別を行いました。パッションフルーツは熟すと緑から赤く変化するため、AIで5段階に推論し、収穫のタイミングまで判断できる基準を作りました。

FA機器につながった土壌センサでプランターの水分率を取得し、しきい値を下回ると自動で水を供給する制御をしています。一般的には毎日定刻に一定量の水やりをしますが、雨天でも水やりを続けてしまうという課題があったため、それを解決することができました。

取得したカメラの映像やデータはクラウド上のダッシュボードで共有し、遠隔から社内外の関係者が確認できるようにしました。すぐに行けない離れた現場の情報もリアルタイムで把握でき、さらなる管理工数削減へとつながりました。

さらに進化したサービス:「人を集めるソリューション」から「省エネソリューション」へ

2023年は、不動産デベロッパーから「IoT緑化シェード」をビル屋上の室外機の省エネソリューションとして活用できないかとの提案を受けたため、東京都内のビル屋上にて検証を行いました。都内にあるオフィスビルの屋上に並ぶエアコンの室外機と室外機の間にパッションフルーツの枝葉で日陰を作り、その下の空気を冷やす取り組みです。冷やした空気を室外機が吸うことで、エアコンの消費電力を抑えることができるかどうかを検証しました。今回のPoC(実証実験)では、「IoT緑化シェード」の基本システムに加えて、ソラコムのクラウド型カメラサービス「ソラカメ」を室外機の上下に6台ずつ計12台使い、2つの目的で運用しています。


2023年の実証実験の様子(上図)

1つ目は、パッションフルーツの枝葉が室外機に侵入していないかを、シェードより上につけたカメラ映像とAIで検知しています。


室外機の上から、枝葉の侵入をAIで検知している画像(ファンに届きそうな部分を黄色で可視化)(上図)

2つ目は、室外機の下にカメラをつけて、パッションフルーツの繁茂率や実の成熟度をAIで測っています。


室外機の下から、上の日陰を見上げた画像(上図)


パッションフルーツの実の成熟度をAIで分析している画像(上図)

カメラ活用以前は、現地の情報を自分の目で確認することができず、確認が必要な場合は現地に行く必要がありました。映像で確認した上でメンテナンスに行くことができるため、カメラは効率化に貢献するとともに、遠隔地でのPoC(実証実験)を可能にしています。

ソラカメを採用した3つの理由

まず、室外機の間という狭い場所にも設置できる小型カメラであることです。ソラカメ対応カメラのATOM Cam Swingは、アプリケーションやウェブブラウザから画角の変更が可能な上、高さ12cm・幅5.3cmと非常に小型で、今回の要件にピッタリとはまりました。

次に、パッションフルーツは成長がそれほど早くないため、リアルタイム性は必要ありません。ソラカメはクラウドに常時録画されるプランがあるため、最適でした。結果的にクラウドのコンピューターリソースを使って、より高度なAIアルゴリズムが実施できるようになっています。

最後に、設置後もカメラの画角を変えるために現地に訪問する手間なく、リモート操作し画角を微調整できる点が効率的でした。撮影した動画の中から複数の静止画を抽出し、スティッチという技術で1つの画像に統合して推論しています。その結果は、SORACOMのデータ蓄積サービスとダッシュボードサービスを活用して、共有しています。

様々な試行錯誤を経て、広範囲な撮影範囲を遠隔操作でカバーしながら、ソラカメの持つAPIで品質を落とさずにAI推論を行うことができています。最新のIoT緑化シェードは、フルリモートで稼働することに成功しました。

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