IoT 導入の背景

AIで人手のオペレーションに依存する現場の仕事を進化させる

Intelligence Designは、「AIをまだデジタル化が進んでいない業界や地域でも当たり前に使えるように社会実装」することを理念に、AIのプロフェッショナルが創業した会社です。

Intelligence Designでは、お客様の要望にあったAI活用を提案するコンサルティング事業と、AIエンジニアやデザイナーが集い開発するコミュニティIDlabの運営と、より簡単に画像認識、音声認識、数値分析などAI活用を利用できるソリューションパッケージ「IDEA」シリーズを提供しています。

従来、AIなどの先端テクノロジーの活用は、先行投資が可能な大手企業が先導してきました。Intelligence Designは、まだまだAIへの期待が見込まれる分野に対して、AIを活用いただくことに挑戦しています。具体的には、労働力不足が問題視される作業現場、夜間の監視・警備業務などに着目、未だ人手に依存するオペレーションをAI活用、デジタル化することを目指しています。このような取組みの中、「交通量調査」業務でAIを活用してデータを取得、デジタル化するプロジェクトが始まりました。

IoT 導入の課題

交通量調査をAIで!お客様に届けるためのパッケージ化で直面したハードル

「交通量調査」とは、店舗の出店計画やビルテナント募集などで使われるデータです。現地チームを配備し、人が手元のカウンターで通行人をカウントとし集計、もしくは通行人にアンケートをとるといった方法で行われます。交通量調査は今まで人手で実施されてきましたが、カウント要員の人件費や準備にかかるコストに加え、人が見て主観で判断するためデータの誤差が発生するという課題がありました。

そこでIntelligence Designでは、「交通量調査」をカメラを用いて画像解析、データ取得するAIアルゴリズムを開発しました。その後、「お客様が簡単に使える」形で提供するため、カメラ、クラウド、ダッシュボードといった必要な技術をパッケージ化することを検討しました。しかし、実際に始めてみると、カメラの初期設定や現地での設置、アルゴリズムの更新、得られたデータの管理など、AIアルゴリズム以外にも多くの検討項目があることがわかりました。カメラひとつとっても、ハードウェア特有の構成部品や電源などソフトウェア開発にはない検討項目があります。これらは「お客様が簡単に使える」ことを実現する上でのハードルでした。そんな時、開発責任者の小峰氏は、展示会でソラコムの「S+ Camera Basic」に出会いました。

SORACOMが選ばれた理由

SORACOMプラットフォームのサービスをフル活用し、社内リソースはAI開発に集中

「S+ Camera Basic」は、ソラコムが提供するエッジ処理カメラです。カメラの筐体にマイコン(RaspberryPi)とセルラー通信、電源が内蔵されており、設置すればすぐに使い始められます。

「S+ Cameraがあれば、私達の開発したAIアルゴリズムを、より気軽にお客様にご利用いただけると直感しました」(竹野氏)

このシステムでは、カメラ側で交通量調査のAIアルゴリズムを動かし画像解析を実施、人数や、年齢層など属性情報だけをSORACOMの通信で送信します。データ蓄積・収集にはSORACOM Harvest Dataを、お客様向けダッシュボード提供にはSORACOM Lagoonを利用し、他のクラウドなどにシステムを持つことなく、SORACOMのサービスだけでお客様向けのシステムを構築しています。

SORACOMプラットフォームの利用は、運用面でもメリットがありました。AIアルゴリズム開発直後は、より精度を上げるためにAIアルゴリズムを頻繁にチューニング、カメラに更新する必要があります。そんな時は、S+ Cameraとともに用いることができるエッジプロセッシングを支援するSORACOM Mosaicを利用することで、SORACOMユーザーコンソールやSORACOM CLIの操作だけでカメラに直接アクセスすることなく、最新のAIアルゴリズムに更新することができます。また、メンテナンス作業時は、オンデマンドでリモートアクセス可能となるSORACOM Napterを用いて、sshでカメラに直接アクセスし、メンテナンスを実施しています。

「SORACOMプラットフォームを活用したことで、システム構築のスピードが上がりました。従来ならこれらの作業実施には、カメラひとつひとつにユニークなIDや証明書を登録するなどの手間がかかります。SORACOMのように必要に応じてサービスを組み合わせて使うことができるプラットフォームは、専門特化した技術者集団にとって利用価値があると感じます。必要なものだけ組み合わせて使うことでインフラや通信の専門知識をショートカットして、本来集中すべき業務に注力することができます」(小峰氏)

システム構成図

導入の効果

交通量調査ソリューションを稼働させて見えてきた次のニーズ

交通量調査ソリューション「IDEA Counter」をお客様に提供開始しました。テナントビルの軒先にカメラを設置し、電源を供給すれば交通量調査を始められます。すでに、原宿にある宮崎ビル様に設置、ご利用頂いています。

ビルオーナー様からも「取り付けが簡単」「始めやすい」と評価いただいています。実際に得られたデータをビルオーナー様に見ていただいたことで、新たな発見もありました。今まで人手で行われてきた交通量調査は、交通量の多い交差点などのポイントでは実施されますが、特定のビルの前といったピンポイントでは実施されないという「エリア的な網羅性」、特定の曜日、週で取得したデータしかないという「時間的な網羅性」という課題がありました。AIカメラを利用した交通量調査は、この2つの課題を解決します。24時間365日、毎日継続して、同じ判断ロジックで判断された交通量データというものは実は今まで存在しなかったのです。

これがAIカメラによる精緻かつ継続的な「交通量調査」は、複数のデータを重ねることで、地域内のデータをまとめた地域行動導線調査などの新たなデータソースを創出し、さらなるデータ活用の可能性を秘めています。

今後の展開について

AIカメラを起点に不動産・ビルの業務をデジタル化、新たなデータを創出

「IDEA Counter」で取得できるデータを順次拡張していく計画です。例えば、原宿エリアであれば、持っているファッション雑貨や着ている服の色といったデータが取得できれば、マーケティングに活用できます。また、ビル保安の観点から、侵入者の検知や落書きなどの迷惑行動の検知など、ビルの周りで起きている出来事を検知するニーズも見えてきました。

「取得する属性情報を追加する際も、SORACOM Mosaicで遠隔からアルゴリズムを更新し、SORACOM Inventroyで取得するメトリクス数値を増やすだけで対応可能です。将来的にはお客様のからの個別カスタマイズのリクエストも受けていきたいです。」(小峰氏)

「プロジェクトの始まりは通行量調査でしたが、ビルに気軽に取り付けられるAIカメラを起点に、不動産・ビルに関する業務をデジタル化していきます。すでにあるデータをAI分析する試みは増えてきました。だからこそ私達は「今はまだないデータ」をAI分析することに挑戦することで、あらたな社会の有り方や成長に貢献できればと考えています」プロジェクトを推進する末廣氏は、AI活用の未来について力強く答えました。

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