Contents
株式会社ソラコムがお送りする「IoT速報 – ビジネスの最前線」。今回は、福島県いわき市で廃棄物処理事業を展開する株式会社クレハ環境が、SORACOMを活用し、既存設備への後付けで工業用水の遠隔監視システムを構築した事例をご紹介します。化学工学を専門とする設備担当者が、IoT専門人材なしで構想から10ヶ月でシステムを開発。長年の課題だった水圧低下の解消や検針作業の省力化など、多方面で成果を上げています。
【この記事でわかること】
- 従来のDCS(分散制御システム)とケーブル敷設に代わり、無線通信とクラウドを活用した遠隔監視の実現方法
- IoT専門人材がいない現場で、担当者2名のみが構想から10ヶ月でシステムの開発・導入・運用を実現した進め方
- データの「見える化」による水バランスの最適化、水圧低下の解消、検針作業の省力化など多用途での活用事例
【SORACOM活用のポイント】
- SORACOM IoT SIMを活用することで、有線ケーブル敷設を最小限に抑え、工場内の様々な場所にある計器データを収集
- SORACOMのサービスのみで、データ蓄積からダッシュボード作成、リアルタイムの可視化・グラフ化を実現
- 既存設備改造を最小限にしつつ、後付けでIoT化が可能。データ収集箇所の増設も容易で、拡張性が高い
導入の背景
分散制御システムの容量逼迫とケーブル敷設コスト。従来の集中管理方式の限界
クレハ環境は、福島県いわき市に本社を置き、「人と自然の未来のために」を掲げ、廃棄物の適正処理を通じて地球環境保全に取り組む企業です。低濃度PCB廃棄物、PFAS含有廃棄物、医療系廃棄物の無害化処理に加え、サーマルリカバリーによるカーボンニュートラル推進、環境エンジニアリング事業、環境修復事業など、持続可能な社会の実現に向け幅広い事業を展開しています。
同社工場では、工業用水の圧力低下が頻発し、重要な大型機器の安定稼働に影響が出ていました。焼却炉での水使用量増加を検討する中で、工場全体の水バランスを定量的に把握する手段がなく、どこに余裕があるのか見えない状況が続いていました。
そこで流量計と圧力計の増設を進める中で、新たな壁に直面します。既存の分散制御システム(以下、DCS)は、ネットワークケーブルで運転制御室にデータを集約する方式のため、機器増設には追加工事が必要で、閲覧できる場所も限定されていました。「必要な時に、どこからでもデータを確認できる仕組みがほしい」という思いから、IoTを活用してクラウドにデータを収集する新しい仕組みの検討が始まりました。
設備管理部で省エネ推進やDXを担当する河口氏は、当時の状況をこう振り返ります。「正直、IoT化でここまで成果が出るとは思っていませんでした。人も予算も限られた中で、何とか進めなくてはいけない状況でした」
実現したサービス
構想からわずか10ヶ月。IoT専門人材なしで遠隔監視システムを構築
大規模なケーブル敷設を避けるため、クレハ環境が着目したのが無線通信によるデータ収集でした。同社として無線化は初の取り組みです。2023年4月の展示会でソラコムと出会い、他社との比較テストを経てSORACOMの採用を決定しました。
取り組み開始時、社内にIoT専門人材はおらず、外部ベンダーへの発注も予算面で困難でした。河口氏は「外部に見積もりを依頼しましたが予算が折り合わず、社員2名のみで進めることになりました」と語ります。化学工学が専門でIT経験が少なかった河口氏ですが、ソラコムのサポートとシンプルなシステム構成により、構想から約10ヶ月で開発・導入・運用開始を実現しました。設備部門主導で進めたことがスピーディな導入につながりました。初期接続は14台の機器からスタートし、導入コストは約40万円、運用コストは月々わずか数千円と低コストでの構築に成功しました。
クラウド化により、従来は運転制御室や現場でしか確認できなかったデータが、パソコンやスマートフォンからいつでも閲覧可能になりました。実現できたことは大きく3つ。水バランスの「見える化」によるリアルタイム監視、水バランスの最適化による圧力低下の是正、そして水使用量増加時の影響評価です。

データが裏付けた対策と、現場の働き方を変えた遠隔監視
導入から半年後、工場内の圧力低下を是正する大きな成果が得られました。長年にわたり冷却水の供給圧力が低く、炉の安定稼働に影響を及ぼしていた箇所です。クラウド上で複数地点の圧力をリアルタイム監視したところ、ある地点だけ圧力が高いことが判明。配管のバイパス化工事を実施した結果、流量の大小にかかわらず圧力の底上げが確認でき、ついには水量低下の警報がゼロに。供給能力も向上し、長年の課題であった水圧低下は解消。焼却炉での水使用量増加も可能になりました。
遠隔監視は業務の省力化にもつながっています。従来、取水制限時には運転員が離れた2カ所の水道メーターを1時間おきに巡回していた作業も、クラウド監視により不要に。現地に赴くことなく取水制限値を超過しない運用が可能になりました。

河口氏は導入効果についてこう語ります。
「これまでは感覚的に業務を進めてしまうことがありました。IoT導入後は、現場の状況をデータで正しく把握できるようになり、PDCAの精度が向上しました。トラブル発生時も迅速に原因を特定し、効果的な対策を打てるようになりました」
SORACOMだけでデータ蓄積からダッシュボードまで完結
SORACOM採用の決め手は、IoT向け通信の使いやすさと安定性に加え、クラウドやサーバーを別途準備せずに機器データの蓄積からダッシュボード作成・グラフ化まで完結できる点で、データ駆動の改善を進める際に役立ちました。

システム構成はシンプルで、4-20mAアナログ信号を出力する流量計と圧力計をIoTゲートウェイに接続し、SORACOM IoT SIMのセルラー回線で1分毎にデータを取得。データの収集・蓄積には「SORACOM Harvest」、ダッシュボード作成・グラフ化と共有には「SORACOM Lagoon」を利用しています。SORACOM IoT SIMが入ったゲートウェイを後付けするだけで増設でき、4-20mA出力対応の機器であればデータ収集が可能なため、今後の拡張にも柔軟に対応できます。
今後の展開
漏水検知から電力・空調・災害監視まで、工場全体へ横展開
クレハ環境では、今回構築したシステムをさまざまな用途に応用していく計画です。
今後の計画として、電力使用量(電流)や圧縮空気(流量・圧力)などの状態監視を検討中です。さらに、空調管理(温湿度)、災害時の水位監視、騒音モニタリングにも活用できると見込んでいます。
また、これまで監視カメラでチェックしていた漏水検知についても、センサーを利用して精度の高いリアルタイム監視を行えます。漏水センサーを導入することで、わずかな異変にも直ちに検知できるようになります。
化学工学が専門の設備担当者が始めた後付けIoTの取り組みは、データ駆動の設備管理への変革をもたらし、工場全体のスマート化を推進する足がかりとなっています。
目次
DOWNLOAD
導入事例ダウンロード
さまざまな業界のSORACOMを利用した最新IoT事例集をダウンロード頂けます。
下記フォームを入力いただき、送信ボタンを押してください。
全て必須項目となります
個人情報の取り扱いについては、
お客様の個人情報に関するプライバシーポリシーをご確認ください。









