株式会社ソラコムがお送りする「IoT速報-ビジネスの最前線-」。今回は決められた動きを代替する産業用ロボットに、より人に近い作業をさせるための挑戦についてご紹介します。

【この記事でわかること】

  • 産業用ロボット向けの制御ソフトウェアを提供するリンクウィズ株式会社
  • 独自技術でロボットの動きを補正、人のような微細な作業や検査ができるように
  • 産業用ロボットが対応できる作業を増やすことで、製造業の現場で働き方を変える

【SORACOM活用のポイント】

  • IoT通信により、検査業務のデータをセキュリティに考慮した上でクラウドに送信、蓄積したデータを分析して製品品質・生産効率を改善
  • 導入先に設置された端末にオンデマンドで遠隔アクセスし、現地に行かずに設定変更や保守が可能

導入の背景

ロボットからのデータをクラウドへ安全に送りたい

リンクウィズ株式会社は、工場で使われる産業用ロボット向けに、自律的に動きを補正する制御ソフトウェアや、検査作業を代替するソフトウェアを開発・提供しています。ソフトウェアの提供から事業を始めましたが、手作業がロボットに代替される中で、様々なデータが蓄積されていきました。これらを有益な形でお客様に提供できないかという新たな試みの中で、3年前からIoTプラットフォームSORACOMを自社サービスへ組み込み、クラウドにロボットからのデータを送る、ロボットのIoT化を始めました。

クラウドへのデータ送信は、Wi-Fiでも技術的には問題ありません。しかしお客様は製造業の中でも自動車製造や組立を行なっている方が多いため、ネットワークセキュリティ要件が厳しく、リンクウィズの機器をお客様のネットワークにつなぐことは難しい場合が多くありました。ネットワークごと用意した方がお客様も導入しやすいという現場の実情に合わせ、SORACOMの通信をセットで提供することにしました。

外部のネットワークを用いてクラウドにデータを送ることに対して、セキュリティを懸念されるお客様もいました。しかしセルラー通信は認証されたネットワークを利用できる上、SORACOMのサービスを使い、エッジ側に接続情報を残さない設計にすることで、お客様も納得して導入を進めていただけました。

実現したサービス

IoTの利用でロボットからのデータを活かした製造へ

工場ではロボットアームが稼働していますが、あらかじめプログラミングされた定型の単純作業を得意としています。ただ扱う製品や工程によって作業や製品の形状にばらつきがあるため、ロボットはその変化に対応できないことが多く、ロボットの不得手を人間が目で見て補っているのが現状でした。ロボットを導入したにも関わらず、動作を修正するために人が必要という声が多くありました。このような調整を、ロボット自身が行うサービスとして3Dロボット検査システム「L-QUALIFY」と、ティーチングデータ自動補正システム「L-ROBOT」を開発しました。

産業用ロボットの先端に独自開発の3Dスキャナを取り付け、取得した点群データにより作業対象の形状を3次元で精緻に把握します。現場の現物の形状に合わせてロボットの動きを自動で生成・補正することで、加工不良ゼロの実現につながります。

取得したデータは、ソフトウェアのインストールされた産業用パソコンで演算処理され、検査結果は産業用ロボットや周辺の機械のデータ、映像分析などの周辺データとともにAmazonのクラウドサービス Amazon Web Services(AWS)に送信、保管されます。この産業用パソコンとクラウドの間の通信にSORACOM IoT SIMが使われています。検査結果はただ合格・不合格というデータだけでなく、加工前の計測も行い誤差や設置位置のズレを蓄積することで、前工程の検査へとつなげています。蓄積されたデータから、ばらつきの発生箇所を特定し、工程をさらに改善していくことができる流れです。

これら一連の製造過程のデータを収集〜分析するクラウドサービス「LINKWIZ FACTORY CLOUD」も提供しており、自社製品からのデータだけでなく、他設備からのデータ取得も可能です。品質や生産性を簡単にダッシュボード化し、どこからでも確認できる仕様になっています。

導入直後の細かな設定変更やメンテナンスもリモートから対応

各種サービスは国内外の企業に採用されていますが、SORACOMのオンデマンド遠隔アクセスサービスを利用して、静岡の本社から顧客先の端末にアクセスし、メンテナンスや不具合の対応を実施できます。特に導入直後のお客様からの依頼は多く、設定変更や予期せぬトラブル対応なども遠隔からスムーズに実施しています。

リンクウィズ株式会社 UX開発課 課長 石井 航氏は、「SORACOMに出逢ったのは、プロトタイプを開発していた時でした。1回線からウェブで購入できる調達の容易さがきっかけでしたが、回線の状況を一覧で管理できる点が便利でした。また当社サービスのデータをAWS上に集めていますが、SORACOMはAWSと連携しやすく、非常に利便性が高かったです。クラウド連携だけでなく、遠隔アクセスもサポートしていることがわかり、最終的にトータルコストとセキュリティの観点からSORACOMを選びました」と語ります。

今後の展開

ロボット活用の対象を広げ、世界中の現場へ

検査業務では、数十秒で数十カ所の検査項目を目視でチェックするケースもあり、作業者には練度が必要です。また不具合を出せば、前後のロットの回収や再発防止策を講じるために工場のライン操業を止める事も考えられ、経営的にも大きな打撃となります。このような工程は業界を問わず多くの現場が世界中にありますので、ますますロボットの活用は進んでいくことが推測されます。

産業用ロボットをもっと活用したいというニーズは、人件費が高騰している国では特に急速な高まりが見られます。リンクウィズでも北米、南米で既にサービス提供を始め、さらなる展開も視野に入れています。

「これまでは、産業用ロボットと人は安全柵で完全に区切られていました。近年使用が増加している協働ロボットとリンクウィズのサービスを組み合わせて、産業用ロボットが人のように自律的に判断できるようになれば、同じスペースで人とロボットが協働する事も増え、製造業の現場の作業は変わっていくでしょう。世界中でリンクウィズのサービスを使っていただきたいですね」(石井氏)

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