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IoT 導入の背景
IoTボタンデバイスとの偶然の出会いから始まった新プロジェクト
エムスリーキャリアは、医療関連ビジネスを展開する東証一部上場企業エムスリーのグループ企業です。医療の現場では高齢化の進展によって医療需要が高まる一方、医師をはじめとする医療従事者の偏在、医療機関の分散でサービス供給が追いつかず、人材確保が課題になっています。エムスリーキャリアでは病院・クリニック・薬局などの医療機関から求人依頼をうけ、医師・薬剤師の人材紹介サービスを提供するとともに、情報メディア事業・経営コンサルティング事業なども運営しています。
「IoTボタンという面白いデバイスがある。これをビジネスで使えないか?」ある日エンジニアリング部門を訪れた事業部長との雑談からIoTへの取り組みが始まりました。
IoT 導入の課題
事業部とのサービス設計を通じて見つけたボタンが活かせる課題
「SORACOM LTE-M Button」はLTE-Mのセルラー回線内蔵でどこでも設置可能、乾電池で動くためバッテリー接続も不要です。サービス顧客へ配布するには最適ですが、「どういった目的・ゴールを設定すべきかが決まっていませんでした」(岸川氏)そこでエンジニアリング部門とサービス事業部が協力し、業務ヒアリングやサービス設計を進めていきました。
ヒアリングを進める中で見えてきた課題は顧客の求めるタイミングでコミュニケーションが取れないケースが生じていることでした。エムスリーキャリアから行う連絡の相手は現役の医師であることも多く、日中は患者様への対応に追われています。結果として必要な連絡のためにパソコンを開いたり、電話をしたりすることが難しい場合が多いということがわかってきました。
「私たちエムスリーキャリアも顧客に相談のニーズがあることを知りながらうまく連携が取れずに悩んでいました。私たちから連絡を差し上げても、実際にコミュニケーションができる確率は10%程度であったため、顧客の期待に応える新しいコミュニケーション手段の開発が急務でした」
「ボタンを押すだけなら診療の合間やふと思い立ったとき、1Clickするだけで連絡が可能です。そこで『相談事項が発生したらすぐにボタンを押して当社にご連絡いただく』『当社を身近な存在として感じていただく』ことをゴールに、IoTボタンを使うことを決めました」(岸川氏)
SORACOMが選ばれた理由
SORACOM LTE-M Button利用により、わずか一日でプロトタイプが完成。SORACOM Funnelでデバイスの初期設定は一切不要に
プロトタイプ開発にはAWS連携が簡単にできるボタンデバイス「SORACOM LTE-M Button powered by AWS」を利用しました。
「実際に開発してみるとプロトタイプ開発にかかった日数はわずか1日。思った以上に簡単でした」(岸川氏)
ボタンが押されるとAWS IoTに連携、そこから顧客基盤のセールスフォースにデータ連携し、通知の履歴を登録すると同時にエムスリーキャリアの担当にGmailで通知を飛ばす仕組みです。
徐々に利用台数が増える中で初期キッティングが課題になりました。「SORACOM LTE-M Button powered by AWS」は、AWSとの連携設定をひとつひとつのボタンデバイスに対して行う必要があります。そうするとサービスを拡大するフェーズでは業務負担が大きくなるという新たな問題が生じました。そこで後に発売開始となった、クラウド連携をSORACOMのユーザーコンソール側で一括設定可能な「SORACOM LTE-M Button for Enterprise」への切り替えを実施。新ボタンとSORACOM Funnelの活用でAWS IoT連携に必要なx509証明書をSORACOM側で管理し、グループに所属するボタンに一括設定ができるようになり、ボタンデバイス側の設定は一切不要となりました。
「その他にも電池のバッテリー残量を取得して自動通知する仕組みを作り、バッテリーが切れそうな際にも連絡ができるようにしました。電池切れに気付かないまま、ボタンを押しているのにエムスリーキャリアから連絡が来ない状況になったら顧客体験を損ねてしまいます。ボタン配布後の運用で問題が出ない工夫にも力を入れました」(岸川氏)
システム構成図
導入の効果
「IoTボタン」がつなげたお客様とエムスリーキャリアの間の信頼
プロトタイプ開発はスムーズだったものの、顧客へデバイスを配布する試みはエムスリーキャリアで初めてのこと。導入について慎重に話し合いが行われました。
「エンジニアリング部門としてはIoTボタンを利用した仕組みはすぐに開発できました。しかし私たちの目的はIoTボタンを配ることではなく、クライアントの『顧客体験』をより良くすることです。お客様へのサービス説明方法、ボタンの外観など、サービス事業部と丁寧に議論を重ねました」(岸川氏)
こうしてエムスリーキャリア仕様の「IoTボタン」が誕生しました。このプロジェクトが発足してから数か月後、複数のクライアントで試験運用が始まりました。相談や依頼が生じた際にボタンを押すと、エムスリーキャリアの担当から連絡が来る仕組みです。
「この試験運用でボタンの効果に手応えを得ました。クライアントの担当者からは『ボタンを押すだけならすぐできる』『エムスリーキャリアさんとの距離感が縮まったように感じる』などのポジティブな反応を数多くいただきました。またサービス事業部側でも、IoTボタンで通知を受けたすべてのクライアントとコミュニケーションできたと報告があり、IoTボタンを導入する以前は連絡が取れる確率が10%程度だったことを考えると大きな改善です。顧客が希望するタイミングでコミュニケーションできる方法を作ることができ、私も大きな達成感が得られました。『もっと配布数を拡大したい』という現場の声をうけ、現在は配布対象を拡げています」(岸川氏)
今後の展開について
成功事例によってさらに拡がる「顧客体験」を進化させる活動の輪
「IoTボタン」が変えたのは顧客が相談を依頼する際の体験です。これまで医療機関の担当者が連絡する時は、診察室から自分のデスクに戻り、パソコンを開け、連絡先を検索し、連絡をするという複数のアクションが必要でした。「IoTボタン」導入後は必要な作業はボタンを押すだけで完了します。
スピードを要する業務で顧客満足度を上げる取り組みに、IoTボタンがフィットすることがわかり、エムスリーキャリアではスピードや顧客満足度を重視する他のサービスにもIoTボタンの活用が検討されています。
「これまで取り組んだことのないプロジェクトを進める際は、ビジネスオペレーションを、社内調整や顧客のフィードバックを受けながら柔軟に進化させていく必要があります。『SORACOM LTE-M Button for Enterprise』は設定が簡単で柔軟性も高く、ビジネスサイドの要望にフレキシブルに応えることができます。また大規模サービスでも安定した運用・保守が可能です。今後の新プロジェクトでも中心的な役割を果たせるものと期待しています」(岸川氏)
「IoTボタン」の取り組みは、社内でも「顧客体験」を変えた業務改善事例として注目され、他の部署も巻き込んで「顧客体験」を進化させる活動が拡がっています。
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