【この記事でわかること】
・大手音響機器メーカーTOAの新規事業を通じて誕生したotonoha
・IoTサウンドデバイスからの音響で、集中できる空間の演出や、Web会議の音漏れなどをマスキングし、最適なオフィス空間をつくる
・音環境コンサルティングで働く人のウェルビーングと仕事の効率を両立

【SORACOM活用のポイント】
・IoTサウンドデバイスを遠隔で操作するため、セキュアな通信で秘匿性を担保
・ネットワークをSORACOMに一任したことで、社員はビジネスに注力できた

導入の背景

コロナ禍でのオフィス利用の変化で見えた音響の可能性

株式会社otonohaは、大手音響機器メーカーのTOA株式会社による新規事業を通じて「良い音環境の体験からビジネスを支援するスタートアップ」として、2023年4月に誕生しました。

otonoha社が提供する「sound veil」は、IoTを活用して音漏れのマスキングや集中できる空間をつくるオフィス向けの音環境コンサルティングサービスです。サービス開始からわずか数か月で、大手メーカーや商社を含む多様な企業への導入が相次いでいます。

otonohaのsound veil事業部長の竹本悠平氏によると、コロナ禍を経てワークプレイスの空間づくりにおける音の活用に変化が表れたそうです。

「これまで空間づくりに音が用いられる場合、ホテルや店舗などで外部顧客に対して快適性や非日常感を演出する際に活用されていました。

コロナ禍以降は働きやすいオフィスづくりの一環として音環境の効果が評価され始めています。リモートワークの普及で全員が出社する機会が少なくなり、オフィスフロアを縮小する企業も増えました。一方、出社した社員がオフィスでリモート会議に参加する際の声や音漏れが気になる、という新たな課題が出てきました」(竹本氏)

otonohaの竹本氏

sound veilでは、観賞植物としてそのまま置ける植栽型やデスク下に設置するデスク型など、さまざまなIoTサウンドデバイスから自然音などを最適なボリュームで再生することで音漏れをマスキングします。

ほかにも、会議の内容に適したBGMやリラクゼーション用音楽を流してオフィス内のストレス軽減を図るなど、個別の課題に対応したサービスを提供しています。

otonohaの多様なサウンドデバイス

実現したサービス

主観で判断されがちな「音」への評価をデータ化

特筆すべきは、主観で捉えられがちな音響効果に対する評価をデータ化して品質向上につなげるという点です。利用者は、IoTサウンドデバイスに記載されたQRコードからデバイスを操作し、音響への評価も入力できます。

「アンケートから得られるフィードバックも重要ですが、無意識に行う音量調整や、利用者の音源選択操作から得られる評価データの有用性が特に高いですね」(竹本氏)

オフィス環境を管理する部門の担当者は、操作ログと、この音響評価データを加えたレポートを受け取ります。そのレポートと利用状況が可視化されたUI画面から、sound veilのカスタマーサポートがより最善な音環境づくりを提案します。

soundveilのUI

「例えば自然音でも、特徴的な鳴き声の鳥が入っているような”自然すぎる”音は集中力を削いでしまうという声があり、実際にボリュームも絞られていたケースがありました。

sound veilでは、クリエイターと組んでオリジナル音源も作成しているため、上記の例であれば鳴き声をなくしたり、小さくしたりするなど、オフィスごとのオーダーに合わせて微調整も可能です」(竹本氏)

この「音」の評価のデータ化に寄与したのが、IoTプラットフォームSORACOMです。サウンドデバイスはSORACOM IoT SIMによるセルラー通信が搭載されており、アプリケーションから利用データや設定情報をみることができます。

さらに、SORACOMのサービスを利用することで、サウンドデバイスとクラウド上のotonohaのシステムを閉域網で接続し、デバイスに安全にアクセスできる環境を整えました。これにより、先述のようにスマホアプリからサウンドデバイスへの柔軟な設定変更を可能にしています。

soundveilスマホアプリ画面

「音の特徴に無意識に伝達する役割があり、災害時の放送などにも活用されます。その反面、意図的な誤情報を流布される危険性を排除するためにも秘匿性が重要です。SORACOMの通信はセキュリティ面が万全なので、その点を気にすることなく本来のコンサルティングサービスに専念できるのがありがたいです。

また通信用ケーブルが不要なため、設置場所の自由度が高まったことも利点ですね」(竹本氏)

今後の展開

「音」をWell beingな空間づくりに欠かせない要素に

「WELL認証」は、ビルやオフィスの空間づくりに関して、「人の健康とウェルビーイングに影響を与える様々な機能」をパフォーマンスベースで測定・評価・認証するアメリカで始まった評価システムで、世界中に広がり日本でもグローバル企業中心に導入・検討されています。

この評価システムでは、空気・水・食物・光・運動・温熱快適性・音・材料・こころ・コミュニティの10のコンセプトをベースに117の評価項目があり、オフィスや空間の「音」が人間の健康に影響を与えうるということが示されています。

「sound veilが誕生したのは、複数企業によるコンソーシアムである『point 0 marunouchi』での実証実験がきっかけだったのですが、ここは日本のコワーキングスペースで初めてWELL認証を取得しています。音に関する評価では、実は、静かすぎるのもだめだとされていて、”音のムラ”が重要なんです。

sound veilでは複数のサウンドデバイスを活用することで、音の強弱やシーンごとの表情を作り出すことができます。

今後、気分や仕事内容で働く場所を変えるABW(Activity Based Working)が主流となるなかで、魅力的なオフィスづくりは人材確保の面からも欠かせません。快適な空間づくりとして照明や空調などは注目されやすいのですが、音に関してはまだまだ認知を広める余地があります。

こちらからの提案で初めて、音漏れ対策の重要さに気づいてくださるクライアントも多数いらっしゃいます。今後は、オフィス以外の空間づくりにおいても音が与える影響について考えることが常識になるようにしていきたいです」(竹本氏)

 

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