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株式会社ソラコムがお送りする「IoT速報-ビジネスの最前線-」。今回は、北海道発のスマート農業ソリューションで、農業×IoTの活用例をご紹介します。
【この記事でわかること】
- 農業ICTシステムの開発・提供およびコンサルティングを行う株式会社農業情報設計社
- 農業版カーナビアプリ「AgriBus-NAVI(アグリバスナビ)」をはじめとするスマート農業システムを提供
- 将来的には農業の全自動化を目指す
【SORACOM活用のポイント】
- IoTに最適化された通信を利用して、トラクターの位置情報をセキュアな通信でAWS上に送信すると同時に、位置補正情報もリアルタイムで受け取ることができるように
導入の背景
測位のズレを最小限に抑えるデバイスを安価で提供したい
国内の農業従事者が減少の一途をたどるなか、デジタル活用で農業をスマート化させる取り組みが加速しています。農業ICTシステムの開発・提供およびコンサルティングを行う農業情報設計社のスマート農業システム「AgriBus」シリーズは、全国の各種農家で採用されています。
とりわけ、スマートフォン(スマホ)向け農業版カーナビアプリ「AgriBus-NAVI」は、トラクターなど農業機械の位置をGPS/GNSS測位し、運行情報をリアルタイムで可視化。田んぼや畑を肥料や農薬の散布などの作業時に、等間隔で直進できるよう支援するシステムです。
作業を見える化することで能率が上がり、アプリ未使用時と比べて燃費や散布物のコストを1割ほど抑えられるほか、作業のモレを防ぐことで収穫量や品質も向上するなど、農家の生産力を高める効果があります。国内のみならず海外でも140カ国で導入が進んでいます。
2015年に登場したAgriBus-NAVIは当初、スマホ内蔵GPSを使用していましたが、測位に利用する衛星情報とのタイムラグにより数メートルの測位のズレが生じていました。
「測位の制度は顧客満足度に直結しているため、ズレを最小限に抑えるのは喫緊の課題でした」と、農業情報設計社CEOの濱田安之氏は振り返ります。
そこで、超高精度のGPS/GNSS測位用IoTデバイス「AgriBus-G2」を自社開発し、SORACOMの通信が採用されました。
実現したサービス
超高精度な位置情報で把握し農作業を効率化、自動操舵も実現
Agribus-G2には、SORACOMのIoT向けに最適化された通信が搭載されており、ユーザーはデバイスを農機に取り付けるだけで、超高精度な測位情報が取得できるようになりました。
「通信の安全性に加えて、APIが使える点もSORACOMの大きなメリットです。継続的に管理するデバイスが増えても、APIによってデータ通信状況の把握や回線管理などの機能を当社の管理システムにプログラムで連携できます。
SIMが悪用されないようにSIMとデバイスを紐づけてロックが掛けられるIMEIロックの機能など、IoTでの利用シーンを熟知して”あったら便利”なサービスが用意されており自社で追加開発をせずに、細かい設定ができるのがうれしいです」(同社開発エンジニア吉田大輝氏)
基準局の設置で誤差を最小限に
測位情報を発信している人工衛星は常に移動し続けており、その速度に比べてゆっくりと移動する農機だけで測位する場合、いくら超高精度なGPS/GNSSを用いても1メートル前後のズレは生じてしまうとのこと。
誤差を最小限に抑えるには、定点となる「基準局」の設置が効果的でした。農機と基準局の位置関係を設定しておくことで、たとえ農機の測位がズレてしまっても、基準局の位置情報を基軸に補正できるのです。
そこで、自宅や事務所を基準局化するデバイス「AgriBus-GMiniR」を開発し、常に補正情報を送り続けられるようにしました。基準局「AgriBus-GMiniR」からクラウドを経由して得た補正情報をAgriBus-NAVIを介してAgribus-G2に送信することで、誤差は数センチ程度にまで抑えることができました。
その結果、実際の進路がリアルタイムでスマホやタブレットで確認でき、肥料や農薬散布の重複やムラが防げたり、枕地での農機の切り替えが不要な”1本抜き走行”で燃料を削減できたり、専用ハンドルを取り付けて自動操舵ができたりと、農作業の大幅な効率化に成功しました。
後から作業ログが確認できるビューワーを活用すれば、収穫量に影響を及ぼす農地の高低差をチェックすることも可能なため、品質のばらつきが防止できるようになりました。
今後の展開
データ活用や全自動化で、次世代のスマート農業を目指す
国内ではすでに農機の自動操舵まで実現している同社は、将来的に人が農地に縛られないことを目指しています。
「お客様のなかには、農機には乗っても自動操舵により農業機械の操作以外のことを考える余裕ができた、という声もいただいています。農家の本来の仕事はお客様先へ農作物を届けたり、作物の品質向上のために時間を割いたりすることで、農機に乗ることではないはずです。
今後は必要な時にだけ、作付けから収穫までアウトソーシングできるような仕組みを作りたいと考えています。そのためには気候条件などの社外パートナーとの協業も視野に入れたデータ連携の構想もあります。”農作業を買ってもらう”、そんな時代が訪れるようコア技術の発展に注力したいです」(濱田氏)
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