1台のロボットで、清掃と警備における人手不足の解消を目指す

オムロングループのオムロン ソーシアルソリューションズ株式会社(以下、オムロン ソーシアルソリューションズ)は、社会課題の解決を大きなミッションに掲げるソリューション事業を展開しています。

事業の主軸は、駅の自動改札機や券売機、道路の交通管制システムや信号機など、社会インフラに関するソリューションの提供です。その傍らで、IoTに関連する事業も展開しています。オムロンはもともとセンサーメーカーですが、何らかの事象を測定するだけでなく、それらのデータを用いて課題を解決するという領域にも事業を拡大する中で、IoTの活用も行ってきました。

今回、オムロン ソーシアルソリューションズがIoTを活用して開発したプロダクトが、清掃・警備・広告という3つの機能を併せ持った複合型のサービスロボット「Toritoss」です。商業施設や百貨店、スーパーマーケット、オフィスビル、空港、工場といった様々な施設で、人の作業をサポートし、現場の負担を軽減します。

近年は、人口減少による人手不足があらゆる業界で顕在化しています。社会課題の解決をミッションとするオムロン ソーシアルソリューションズは、中でも清掃や警備の業務での人手不足がより顕著にあらわれていると考え、その解決策となるプロダクトの企画を目指しました。

しかし、技術レベルと実現するためのコストの双方を考えたとき、清掃においても警備においても、ロボット1台で人間1人分の作業を丸ごと肩代わりすることはできません。たとえば清掃であれば、床掃除はロボットができても、トイレ掃除やゴミ捨てなどの複雑な動作や、目視による判断が含まれる作業は、人が実施する必要があるため、効率化しにくいという課題があります。

そこで構想したのは、1台のロボットに複数の機能を付けることで、トータルでの提供価値を最大化することでした。清掃と警備の何割かを同時に担いながら、万引きの防止や広告による顧客満足度の向上といった価値も付加して、複合型のロボットとして1台で大きな効果が出せるようにと考えました。

開発現場は試行錯誤の連続。通信には柔軟で効率的なSORACOMを採用

企画を立案し、開発に着手したのは2019年4月頃。当初はオムロンが持っている工場用のモバイルロボットをベースにマーケティングや課題抽出を実施し、安全性に配慮しながら、現場での試行を重ね、必要な改良を加えていきました。

新たにサービスロボットを開発するにあたって、これまでと大きく変えたのは開発の流れです。これまでの製品開発では仕様を明確化し、それを確実に実現するために、ウォーターフォール形式で行っていました。しかし今回は、お客様の現場やニーズに合わせてより良い製品にしていきたいという思いがあったため、現場で使っていただきながら、いただいたフィードバックを基に開発を行っていくアジャイル形式を採用。これは初めての挑戦で、多くの学びがあったといいます。

開発で最も苦労したのは、ロボットが移動することで直面する様々な課題に対処することでした。たとえば、スーパーマーケットなどであれば販促用のPOPが通路に飛び出していたり、椅子や段ボールが進路を遮っていたり、施設によって使われている床材が異なったりなど、利用される環境によって多様な違いがあります。

「開発の段階である程度のことは想定していたものの、実際の現場では想定通りにいかないことも多くあり、トライアンドエラーの繰り返しでした。この課題は、お客様の協力を得ながら現場で試すことによって少しずつ改善し、今ではいろいろな環境に対応できるようになってきています」(事業開発統轄本部 ソーシャルデザインセンタ 生活オートメーショングループ 澤村一輝氏)

遠隔で動くロボットとの通信は、データ通信サービスのSORACOM Airです。SORACOMは社内の別部署の紹介から知り、複数社と検討したうえで選びました。SORACOMを選んだ理由は大きく分けて二つあります。一つは、通信量に応じたプランを柔軟に調整できたことです。複合型のロボットなので、それぞれのお客様が重点的に使いたい機能は異なります。たとえば、警備機能をメインで使いたいお客様であれば動画の送信でデータ通信量が非常に大きくなりますが、そうではないお客様の場合はデータ通信量が抑えられます。ロボットのサービス利用料は月額定額制のサブスクリプションモデルで、通信量に大きな差異があると事業にも大きな影響が出る懸念があったため、定量のデータ通信が含まれたプランを選択できるSORACOMに魅力を感じたといいます。

もう一つは、ウェブサイト上のSORACOMの管理画面で注文、通信の疎通、通信量の確認などができることです。それによって、製品を組み立てる段階でSIMを組み込んでおき、製品を使うタイミングで通信を開始でき、簡便で効率的だと感じられたことも決め手となりました。

商業施設や百貨店からのニーズが高まっている

「Toritoss」の特長は、複合型であることはもちろん、お客様などたくさんの人がいる環境下でも人にぶつからずに、スムーズに移動ができることです。それにはオムロンのセンシング技術が使われており、あらかじめ設定したルート上にある障害物を検知して迂回したり、人が飛び出してきたときには一時停止したりといった安全対策が講じられています。充電がなくなれば自動で充電器のところに戻る機能や、スケジュールの予約機能も搭載されており、運用になるべく人の手を介さない設計になっています。

ロボットの管理はクラウド上のシステムで行います。そこで、ロボットからインターネット経由で送られてきた警備カメラの映像の確認や、広告や清掃の設定、履歴の確認などができるようになっています。また、保守には必要なときだけリモートアクセスを可能にするSORACOM Napterも活用しています。

現在、実際に現場で動いている「Toritoss」は、20~30台ほど。幅広い施設で使われていますが、広告効果を求めながら掃除や見回りができ、売り場も広いという理由で、商業施設や百貨店からのニーズが高まっているそうです。

商業施設マルイを運営する株式会社丸井は、2021年秋から有楽町、新宿、北千住、なんばの4店舗で1台ずつ「Toritoss」を活用しています。現在は日中の清掃と広告をメインにしていますが、今後は夜間の警備員の見回りに合わせて清掃を行うといったように、活用の幅を広げていく予定です。

また、小さな子どもが訪れる施設では、ロボットが動いているというだけで高い注目を集めているとのことです。重要なセンサーにさえ触れなければラッピングもできるため、子どもが喜びそうなデザインに装飾している施設もあります。

今後は、お客様の声を聞きつつ、例えば「売り場までのご案内」「不審者の検知」など、もう一つ大きな機能を付加し、商品としての価値を高めたいと考えています。さらに、そもそもの課題であった人手不足の解消に向けて、「Toritoss」をほかのロボットやサービスと連携させるなど、より価値のある製品に昇華させていくことを目指しています。

オムロン ソーシアルソリューションズ株式会社

オムロン ソーシアルソリューションズ株式会社

事業開発統轄本部 ソーシャルデザインセンタ 生活オートメーショングループ
澤村 一輝 氏

事業開発統轄本部 技術創造センタ
前田 政幸 氏

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