株式会社ソラコムがお送りする「IoT速報-ビジネスの最前線-」。今回は、株式会社OND(オンド/以下、OND)が開発した、山中での安全性を確保するGPS端末「IBUKI(イブキ) GPS(以下、IBUKI)」をご紹介します。

【この記事でわかること】
・京都のインターネットサービス企業ONDが、山中での活動を見守るGPSトラッキングサービス「IBUKI」を開発
・山間部での位置情報をほぼリアルタイムで配信し、遠隔地から進行状況が把握できる
・遭難事故を未然に防ぐなど安全管理ができ、緊急事態の迅速な対応も可能

【SORACOM活用のポイント】
・山間部でもつながるSORACOMの省電力データ通信サービス(LTE-M)の利用で、端末の電池の消耗も最小限に抑制
・IoTデバイスの代わりに暗号化処理をSORACOMで行い、サーバーへ転送。安全性の確保はもちろん、消費電力や通信量の抑制に成功

導入の背景

山中での遭難を未然に防ぎ、トレラン大会の安全性を確保したい

ONDは、インターネットサービスの企画・開発等を行なう京都の会社です。同社は、登山やトレイルランニング(以下、トレラン)など、山中での活動の安全を守るGPSトラッキングサービス「IBUKI」を開発しました。

開発のきっかけは代表取締役社長 近藤淳也氏の趣味であるトレランでした。自然を楽しみながら未舗装の山道を走るトレランは、近年人気のアクティビティの一つで、全国各地で大会が開催されています。近藤氏は独自で開拓した未知のコースをブログで発信するうち、徐々に活動の幅が広がり、大会運営にも関わるようになりました。

気軽に挑戦できるショートコースから、何日もかけて走るロングコースまで楽しみ方はさまざまですが、山でのアクティビティにはリスクも背中合わせ。遭難やケガなどに備え、十分な安全対策が必要です。スマートフォンでも位置情報の確認は可能ですが、いざという時に備えてバッテリーを温存できればより安心です。

これまでトレラン大会の安全対策は、まずコース上の各チェックポイントで参加者の無事を確認。この時、参加者が到達していないことがわかって初めて異変に気づき、山中を捜索するというものでした。捜索には人員や時間的コストがかかるのはもちろん、参加者と主催者の双方に危険が伴います。どうすればいち早く緊急事態を察知できるかが課題でした。

また、選手の進行状況が把握できないため、開催地に点在する給水・給食施設のエイドステーションでは、長時間の待機はやむを得ない状況でした。「参加者・主催者ともに安心でき、より楽しめるトレラン大会を」との思いから、GPSトラッキングサービス「IBUKI」の取り組みがスタートしました。

実現したサービス

山間部という環境を考慮し、繋がりやすさと省電力を重視

「IBUKI」の使い方はとても簡単で、専用のGPS端末を携行して山に入り、ライブ配信を開始するだけです。

配信を始めると、端末から3分間隔で発信される位置情報が、SORACOMサービスを通してIBUKIサーバーに転送され、位置情報がブラウザから確認可能となります。大会主催者だけでなく選手の家族や友人も、スマートフォンやパソコンからほぼリアルタイムで、全選手の現在地を把握できるようになります。

山間部での使用のため、開発のポイントは繋がりやすさと省電力。さまざまな回線を検討した結果、通信には基地局の多い携帯電話回線(LTE)が適しているという結論に至り、SORACOMのIoT SIMを採用。携帯電話のサービスエリアマップでは山間部はほとんどカバーされていないものの、実際の山中ではスマートフォンが繋がりやすいという経験から、LTEの実地検証を進めました。

また、バッテリーの維持対策として省電力通信規格のLTE-Mを使用し、データはできる限りシンプルに。SORACOMのデータ転送支援サービスを使用して、データを暗号化した上でIBUKIサーバーに転送しています。軽量でありながらセキュリティが担保される仕組みです。

運営の効率化やタイムリーなサポートが可能に

IBUKIは大会運営のさまざまな場面で重宝されています。主催者は選手の位置情報をチェックし、少しでも道に迷っている様子があれば、すぐに電話連絡をするなどの対応ができるようになりました。エイドステーションでも、選手の到着に合わせて準備ができるようになり、タイムリーなサポートが可能に。こうした利便性の高さから、IBUKIを一度導入した大会での継続率は高くなっています。

さらに、選手同士がお互いの位置を把握して位置情報をレースに生かしたり、応援する人がぴったりのタイミングでコース上に駆け付けたりと、安全対策以外でも活用の幅がどんどん広がっています。

今後の展開

あらゆるアウトドアスポーツイベントの安全性確保を目指して

IBUKIリリース当時はコロナ禍の影響で大規模レースは中止となり、小規模レースが増加し始めた時期でした。小規模レースでは特に人員確保が難しく、いかに効率よく運営できるかが重要です。そういった状況も重なり、IBUKIが求められるようになりました。

現在は大規模レースが徐々に復活。ONDではIBUKIの台数を増やし、すでに1000人規模の大会まで対応可能となりました。今後は国内を代表する大会での導入を目指しています。また、最近ではサイクリングイベントでの導入事例もあり、トレラン以外のアウトドアスポーツでの普及も見込まれています。

山を愛好する一人として、近藤氏は次のように語りました。

「IBUKIには個人ユースもありますが、登山者の間でGPS端末を別途携帯することは、まだそこまで広がっていません。今後は個人ユーザーへの啓蒙活動にも積極的に取り組み、遭難者の削減や安全管理に繋げたいと考えています。安全性を確保することで、誰もがもっと気軽に山の楽しさを感じてもらえたら嬉しいです」(近藤氏)

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