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株式会社ソラコムがお送りする「IoT速報-ビジネスの最前線-」。今回は、IoTの力で電気設備保安管理の業務効率化・高品質化を実現した事例をご紹介します。
【この記事でわかること】
・四国エリアで法人等を対象に電気設備の保安管理サービスを展開する一般財団法人 四国電気保安協会は、電気保安サービスのIoT化を実現
・電気設備にデータ収集装置と通信装置を設置。電流や電圧などのデータを数分~数十分程度の高頻度で取得し、クラウド上のシステムでリアルタイム確認が可能に
・電気設備のデータを遠隔で取得できるため、業務効率化や感電リスク減など、より高品質な電気保安サービスの提供へ
【SORACOM活用のポイント】
・SORACOMの採用により、従来の3G回線から4G回線への切り替え、セキュリティの確保、初期設定の効率化を実現
・クラウド上でのデータ一括管理や、お客様の要望に応じた取得データのカスタマイズが可能に
導入の背景
四国電気保安協会が行う「電気設備の保安管理サービス」とは
一般財団法人 四国電気保安協会(以下、四国電気保安協会)は、主に法人を対象とした電気設備の保安管理サービスを四国で展開しています。電気事業法に基づき「電気主任技術者」という国家資格の保有者をビルや工場などに派遣し、設置されている電気設備の点検や保守を行っています。
通常、ビルや工場などには、高電圧(6,600V)で受電し、屋内で使用できる電圧へと変換する電気設備が設置されています。取り扱いを誤ると、近隣エリアの停電や人の感電といった事故を引き起こし、また設備の老朽化が進めば、機能低下に加え、漏電のリスクも高まります。安全に電気を使うために絶対に欠かせない、法律で義務付けられた保安管理業務を、企業からの委託を受けて行っています。
3つの課題に直面し、業務効率化とサービスの質向上を目指す
業界内で解決が急がれる課題を背景に、2018年にDX推進プロジェクトが立ち上がりました。当時、同協会が解決策を思案していた課題は大きく分けて3つあります。
1つ目は人手不足です。この問題は、複数の要素が絡み合って深刻化しています。東日本大震災以降、太陽光発電の建設数が増え、点検の需要も社会全体で大きく増えています。しかし、有資格者は需要の伸びに対して増えておらず高齢化が進み、今後ますます人手不足が加速すると懸念されています。さらに、委託を受けて保安管理業務を行うには一定の実務経験も必要で、将来的に業務を持続可能にしていくためにも、効率化は喫緊の課題でした。
2つ目は3G回線の停波です。2026年3月には全通信キャリアでサービス終了となりますが、お客様の電力量や漏電の監視装置は3G回線で稼働させており、約16,000台をLTEや4Gに対応したものへと入れ替える必要がありました。
「せっかく入れ替えるのなら、業務の効率化に繋がり、お客様の利便性向上にも結びつくような装置をつくった方がいいのではないか」―3G回線の停波と装置の入れ替えという課題と向き合う中で、DX推進プロジェクトではそのような考え方が大きくなっていきました。
3つ目は競合他社の参入により、他社を意識したサービス構築を行う必要が出てきた点です。DX推進を通じて、コストとサービスの質の観点から差別化を図ろうとする機運が高まりました。
これらの課題に対する解決策を見出すべく、IoTに着目し展示会を通じて知ったSORACOMのサービスを導入。各種センサーをクラウド上のシステムと繋ぐことでリアルタイムに電力の状況を把握できる監視システムを構築し、新たな電気保安サービス「RemoSOL(リモソル)」を開始することにしました。
実現したサービス
電気設備の状況をリアルタイムで監視できる「多機能監視システム」
これまでの監視装置は何十年もの利用実績があり、電気保安業務の一つの仕組みとして確立していました。それをIoTでいかに便利に、信頼性を保ちながら、安定的に運用できる仕組みへと代替していくかは非常に難しく、考え抜かなければならないポイントでした。IoTの詳しい知識を持っていたわけではなかったため、プロジェクト開始当初はソラコムの支援を受けながら、試行錯誤を重ねて理解を深めていきました。
構築したシステムは、SORACOMのセルラー通信を搭載したゲートウェイとマルチデータ収集装置を繋げており、電流と電圧、漏洩電流のデータを毎分~数十分に1回という高頻度で取得しています。これにより、お客様は遠隔から電気設備の状態をAmazonのクラウドサービス Amazon Web Services(AWS)上でリアルタイムに確認したり、機器の制御を行うことができます。
これまで電力や電圧、漏洩電流といった基本的な項目しかデータを集められず、一括で管理することは叶いませんでした。しかし、今回実現した多機能監視システムはクラウド上でデータを管理でき、さらに要望に応じて音や振動などの新たな項目もセンサーの追加で取得可能です。
また、電気設備状況の確認は従来1~3カ月に1回という頻度でしかできませんでしたが、高頻度に取得した連続性のあるデータを見ながら、電気設備の状態を確認できるようになりました。これまで気づけなかった異常にも気づきやすくなり、電気設備の安全性を高く保つことができます。機器の遠隔制御により、現場で技術者が測定器を出さずともデータを取得・確認できるため、人手不足の中でも点検業務を大幅に効率化・コスト削減できます。さらに、従来の点検業務では技術者が感電するリスクもありましたが、遠隔で設備状況を確認できるようになったことで、業務上の危険性を減らすことにも繋がっています。
今後の展開
IoTで「スマート保安」を実現し、新たなソリューションも構築したい
多機能監視システムは、お客様や社内の声をもとに、現在も改修や改善が続けられています。今では約2万件のお客様のうち、2023年度末に1,200件ほどのお客様が多機能監視システムへと移行しつつあります。今後このシステムの導入先を増やしながら、IoTを活用した「スマート保安」で電気設備の保安管理業務の質を上げていきたいと考えています。さらに、IoTの力でお客様の課題解決に貢献できる新たなサービスを開発・提供していければと考えています。
今回のプロジェクトの立役者である保安事業部 技術センターの福本康二朗氏は最後に、IoTを初めて活用する企業が取り組みを円滑に進める秘訣についても語りました。
「今回のプロジェクトを通じて、IoTを活用していく上では、まずはできることからIoT化を進めていくことが重要だと感じました。とにかく始めてみることで新たな知見が得られ、それがより良い仕組みの構築に繋がっていくことも多々あります。最初からしっかりとしたIoT製品・サービスをつくろうとせず、“とりあえずやってみる”という点をぜひ大切にしていただけたらと思います」(福本氏)
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