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株式会社ソラコムがお送りする「IoT速報-ビジネスの最前線-」。今回は、IoTの力で医療・介護現場の課題解決に貢献する、株式会社 星光医療器製作所の取り組みをご紹介します。
【この記事でわかること】
・国内トップシェアを誇る歩行車メーカーが、これまで医療や介護現場で手動で計測してきた歩行記録を自動計測できる「センシング歩行車」を開発
・既存の歩行車に後付けできるデバイスで車輪の回転情報を読み取り、歩行距離・時間・速度を計測し、クラウドへデータを保存
・個人、施設単位で記録していた歩行記録を全国単位で集約・蓄積することが可能に。データを分析、活用することで利用者の歩行機能改善にも期待
【SORACOM活用のポイント】
・Wi-FiルーターにSORACOMのセルラー通信を採用。医療・介護現場に適したネットワークの構築と、コストダウンが可能に
・データ転送時の暗号処理にSORACOMのサービスを利用。開発コスト削減やセキュリティを担保
導入の背景
主力製品の歩行車をIoT化し、医療・介護現場の課題を解決したい
ものづくりのまち・東大阪で、医療・介護機器の設計・製造・販売を行う株式会社 星光医療器製作所。同社の主力製品である歩行車は「アルコー」ブランドとして広く認知され、国内トップシェアを誇ります。
歩行車は医療・介護施設において、患者や利用者の歩行訓練に利用されています。これまではリハビリ担当者が、歩行距離を目視で、歩行時間をストップウォッチで計測し、紙に記入して記録。この方法では、データが蓄積されていかないことや、担当者により測定値にばらつきが出ることが課題でした。
同社取締役の平岡孝輔氏は、歩行車で距離などを測定する案を着想。「データをもとにリハビリを行う」という機運の高まりや、介護現場にテクノロジーを取り入れる「ケアテック」という考え方の拡がりがきっかけでした。他社の先行製品が高価で導入ハードルが高いことに着目し、「既存の歩行車に専用機器を後付けしてIoT化し、安価に提供する」という新プロジェクトがスタートしました。
実現したサービス
既存の製品をIoT化した「センシング歩行車」で、測定の効率化が実現
この新プロジェクトで実現したのが、既存の歩行車にデバイスを取り付けた「センシング歩行車」です。デバイスが車輪の回転情報を読み取り、2秒に1回の頻度でWi-Fiルーターを通してクラウドにデータを送信。歩行距離・時間・速度を自動的に計測・記録します。測定や記載といったデータ化の人手が省けることによる業務の効率化はもちろん、計測者によりばらつきのあった測定値の精度が確保され、長期での歩行データの蓄積も可能になりました。
管理画面では日々の歩行記録がグラフ化されます。大きな変化があれば、歩行訓練以外の事象(内服薬やリハビリメニューの変更等)との相関性の推測にも活用が見込めます。歩行訓練者用のスマートフォン画面では、トレーニングの進捗をリアルタイムで確認できるため、利用者のモチベーション維持にも効果的です。
最低限のコストでスピード感をもって、プロトタイプを形に
歩行車に後付けする機器に通信機能をそれぞれ搭載すると費用が増加することから、Wi-FiルーターとSORACOMの通信を採用。「トレーニングの場では複数台の歩行車の使用が想定されるため、データ集約を考えた場合にもルーターが適している」「ネットワーク環境がなくても、携帯電話が利用できる場所ならWi-Fiルーターを使うだけですぐに通信できる」ことも、採用理由となりました。
また、機器から送信するデータをシンプルで容量を軽くする仕組みにもSORACOMのデータ転送サービスを利用しています。機器で行う暗号処理が不要となるため開発が短期間となり費用が抑えられ、またセキュリティも担保できます。
「利用者に受け入れてもらうには概念だけでなく、実用性を体感してもらってこそ」との思いから、早期の試作品完成を目指し、約10カ月というスピードで実現。まずはシンプルに動くものを完成させ、フィードバックを得るという流れが奏功し、利用者の反応は上々。量産に向け、現在も実証実験を重ねています。
今後の展開
直感的な使いやすさと愛着感が普及拡大のポイント
「どんなに便利でも、誰もが使えないと浸透しません。使われなければ、現場の負担軽減にはつながりません」と平岡氏。それには直感的な使いやすさと、使いたいと思えるファン化要素が必要だといいます。
そのため、簡単に起動できるようID・パスワードによるログインを省略、かつセキュリティを担保する仕組みを構築しました。現在は、利用者のフィードバックから、音声機能の追加を進めています。これは「何メートル歩きました」「お疲れ様でした」と音声サポートをすることで、歩行訓練者のさらなる動機づけを図るというものです。病院・介護施設側だけでなく、歩行訓練者にとっても便利で愛着の湧く製品を目指しています。
全国普及によりデータ集積が進むと、現場に還元できる情報も増えていく
センシング歩行車が実現する未来について、平岡氏は次のように語りました。
「今後、このセンシング歩行車が普及すれば、全国でデータ収集・比較が可能になります。その蓄積したデータを分析することで、類似症例の比較や定量的データに基づいたリハビリプログラムの作成など、歩行データの二次的な活用方法も見えてくるのではと思います。
全国に普及させるには、まずは1つの施設で事例を積み上げていくこと。具体的な活用事例や、新しい事例の発見、その積み重ねが普及拡大につながると信じています。その成果がケアテック推進にもつながれば良いですね」(平岡氏)
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