Contents
【この記事でわかること】
- エネルギーコスト削減、安定した電力供給で期待される仮想発電所(VPP)
- VPPのために独自のIoTデバイスを開発、エネルギー機器をオンデマンドに制御
- 電力の効率的な利用によりエネルギーコスト削減を実現、持続可能なエネルギー社会へ貢献
【SORACOM活用のポイント】
- 通信に加え、クラウド連携やリモートアクセスにもSORACOMのサービスを活用
- フルマネージドなSORACOMのサービスの利用で、開発スピードを向上
- APIを活用した回線管理やリモートアクセスで、効率的に運用
導入の背景
IoTとAIで、エネルギー効率を最適化する仮想発電所の実現
自然電力グループの株式会社Shizen Connectが提供する「Shizen Connect」は、太陽光発電設備・蓄電池・EV充電器・エコキュート(*1)などのエネルギー機器をクラウドにつなぎ、IoT/AI技術で制御するエネルギー管理システムです。小売電気事業者との連携を通じて電力供給を効率化し、各種エネルギー機器の制御により企業や家庭のエネルギーコスト削減に寄与しています。
近年、カーボンニュートラルを目指す社会的な取り組みが加速する中、仮想発電所(Virtual Power Plant、以下VPP)という概念が注目を集めています。VPPは、蓄電池や太陽光発電などの発電設備、EV充電器などの分散型エネルギーリソースを束ね、あたかもひとつの仮想の発電設備として機能させる仕組みです。電力の効率的な利用や安定した供給、さらには再生可能エネルギーの普及を支える重要な技術です。
VPPの仕組みには、電力ビジネスの知識はもちろんのこと、IoT、AI、クラウドなど一連の技術を統合する必要があります。Shizen Connectは、様々なメーカー、様々な種類のエネルギー機器をつなぎ、それぞれの機器やVPPの制御を一元管理できる点が特長です。また、小売電気事業者や機器メーカーのニーズに柔軟に応えるため、自社開発のIoTデバイスである「Shizen Box」経由、及び機器メーカーの遠隔制御システム経由の2種類のシステム構成を用意しています。協業先も増え、家庭用蓄電池のVPPプラットフォームとして、東京ガスや東京電力エナジーパートナー、北陸電力などに採用されています。
制御対象のエネルギー機器をインターネット経由で「Shizen Connect」に接続し、遠隔制御するために重要な役割を果たしているのが「Shizen Box」です。最新版である「Shizen Box2」に、IoTプラットフォームSORACOMが採用されました。
実現したサービス
独自のIoTデバイスで、分散型エネルギーの統合へ
「Shizen Box2」は、自社でハードウェアから手掛けた初の電力IoTデバイスです。制御対象の機器に取り付けることで、電力需給のリアルタイムモニタリングができます。また、小売電気事業者の需要データなどからクラウド側で最適なプランを立案し、充放電するための遠隔制御を行います。本デバイスに、それぞれSORACOM IoT SIMが内蔵されています。
本製品の開発にあたっては、増加するデバイスの管理に加え、さまざまな要件があったとShizen Connect 代表取締役CEOの松村宗和氏は語ります。
「電力サービスに求められるのは、まず低コスト、次いで多くの機器に対応できるシステム、そしてスピーディな制御と信頼性です。制御対象の機器も、引き続き大規模に増えていく事が予想される上、事業拡大による新領域の電力制御、グローバル展開も見込まれます。低コストでハイスペック、そして将来のアップデートも柔軟にできるデバイスが必要でした」
SORACOMの採用でスムーズなクラウド連携と高いセキュリティを実現
「Shizen Box2」では、SORACOMの通信だけでなくプラットフォームのサービスを採用し、エネルギー管理システムの効率的かつ迅速な開発と運用に役立てています。
SORACOMを採用した理由は、「サービスの豊富さ、グローバル対応、セキュリティの3点」だと松村氏は説明します。
「IoT向けの通信に加え、SORACOMのクラウド連携や遠隔アクセスなどのサービスを利用すれば、短期間で専門的なシステムを開発でき、運用時のサービス監視やアップデートも任せられます。私達のチームにおいて、開発や運用にかかるコストを下げながら、開発スピードをあげることができました」(松村氏)
具体的には、クラウドへの接続に必要な認証の管理や、リモートアクセスのサービスを利用するほか、APIを利用して自社システムから回線管理できるようにしています。
資源エネルギー庁は、ユーザーが所有している発電設備や需要設備、蓄電池などを集約し、電力の需要バランスを調整するERAB(Energy Resource Aggregation Business)事業向けに、サイバーセキュリティガイドラインの刷新を進めており、IoT機器のセキュリティ要件も高まりつつあります。
「これからVPPにつながる蓄電池などのエネルギーリソースは膨大になり、将来的には発電所と同じ規模のエネルギーを扱う事になります。そのためセキュリティにも配慮されたサービスを利用する必要があります」(松村氏)
今後の展開
持続可能なエネルギー社会を目指し、仮想発電所を当たり前のものに
家庭用蓄電池等による低圧VPPは、2026年度からの需給調整市場への参加が認められるなど、ますます電力システムの安定化に必要な調整力としての期待が高まり、IoTによる制御の役割も重要性を増しています。すでに、Shizen Connectの低圧VPPプラットフォームは、複数の電力会社による採用実績があります。
低圧VPPに加えて、発電所や配電設備といった電力系統や再生可能エネルギー発電所などに接続する系統用蓄電池の制御・運用代行や、公共施設等に設置される産業用蓄電池の制御などの分野でも実績を伸ばしています。また、グローバル展開も視野に入れています。
「パ-トナー企業とともに、仮想発電所を日本中に広め、VPPを当たり前にしたいと考えています。あらゆるエネルギー機器がつながりVPPが浸透すれば、企業や家庭のユーザーは意識しなくても、電気代削減や環境負荷軽減の恩恵を受けられる社会になります。グローバル規模で起きている電力業界の変革に、日本発の会社として挑戦していきます」と松村氏は語ります。
※1 「エコキュート」は、電力会社・給湯機メーカーが推奨する自然冷媒(CO2)ヒートポンプ給湯機の愛称であり、関西電力株式会社の登録商標です。
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