IoT導入の背景/課題

睡眠の検査を、誰もが簡単に受けられるようにしたい

2017年に創業した株式会社S’UIMIN(以下、S’UIMIN)。同社が提供するのは、人が眠っている間に脳波の情報を取得し、その情報をAIで解析して、睡眠の質を可視化するサービス「InSomnograf(インソムノグラフ)」です。

これまで医療分野では、睡眠の疾患が疑われた際に、睡眠の質を測定する検査を行っています。しかし、この検査を受けるには入院が必要となるうえに、頭には大量の電極を、鼻や胸部、腹部、指先などにも測定用のセンサーを付ける必要があります。

創業者の柳沢正史氏は、ただでさえ睡眠の質に問題があることが疑われる人に対し、大掛かりな装備を着けて慣れない環境で眠るという検査になっていることに、課題意識がありました。睡眠の質の低下はうつ病やメタボリック症候群などの疾患の原因になることも多いため、もっと簡単かつ気軽に検査を受けられるようにしたいと考えました。

実現したサービス

試作で出てきた課題から、IoTの導入に行きついた

InSomnografは、コードの先に電極が付いた計測デバイス、計測した脳波情報を受け取って解析するAI、解析した情報をユーザーに提示するためのウェブアプリケーションから成っています。電極を取り付けるのは、額と両耳の後ろの3箇所。デバイスにはSORACOMのデータ通信SIMを搭載し、電極から取得した脳波情報をクラウドシステムにアップロードして、それをAIが解析する仕組みです。

2018年から開発をスタートし、現在の形になったのは2020年。試作して課題を見つけてはまた次の試作に取り掛かり、デバイスに通信モジュールを付加するという改良を加え、IoTデバイスにしたことで、ついに現在の製品ができあがりました。

最初に構成したサービスの流れは、貸し出した測定デバイスに1週間分の脳波情報を蓄積し、返却後にデバイスからそのデータを取り出して解析し、レポートするというものでした。

しかしそれでは、サービス利用者が測定結果を受け取れるのが、測定開始から1週間以上も後になってしまい、その際の自分の睡眠の感覚を思い出して測定結果と照らし合わせるのは難しくなります。睡眠を効果的に評価するには、朝起きて間もないうちに客観的な計測結果を見ながら自分の認識を振り返ることが必要なのではないかと再考し、測定結果を翌朝見られるような仕様にしたいと考えました。

そこで、デバイスに通信モジュールを搭載し、直接クラウドにデータを送れるようにしたのです。

前職で扱っていたSORACOMを継続して採用

デバイスに搭載する通信モジュールにSORACOMを採用したのは、開発担当者が前職で利用した経験があったためでした。前職でIoTを開発した際には、ほかにIoT向けのSIMがあまりなかったこともあってSORACOMを取り入れましたが、S’UIMINでも導入を決定。使い慣れていて、サービスに完全に満足していたので、継続して採用したとのこと。コストも安く、テクニカルサポートのほか、優秀なエンジニアがいることも知っていたため、何かあっても安心だという思いもあったといいます。

返却されたデバイスからデータを取り出す方式だった頃は、人が作業を行ううえに、たまに人的ミスも発生してしまうため、ダブルチェックも行うなど余計な手間がかかっていました。しかし、デバイスから直接クラウドにデータを送れるようにしてみると、データの取り出しから解析までがすべて自動でできるようになり、改良のための開発もスピードアップしました。

眠りを妨げない設計が好評。病院の検査に対して計測精度は80%以上

InSomnografのサービス利用者は、デバイスを1週間レンタルし、夜は電極を装着して寝ます。すると、翌朝に前夜の睡眠をAIが解析した結果が見られるという流れになっています。

サービスの主な提供先は健診センターで、健診メニューのオプション検査として取り入れられ始めています。今後は、脳ドックや遺伝子検査と並ぶオプション検査の標準ラインナップとして、日本全国で受けられるようにしたいというのが目標です。

また、睡眠を改善する機器や、睡眠の質が上がることを謳っている飲料・サプリなどを提供するメーカー企業と連携し、その効果を実際に数値化するという取り組みでも引き合いが生まれています。ほかにも、サッカーチームなどのスポーツチームでの活用も始まっており、パフォーマンス向上に役立てられています。

今後の展開について

睡眠の改善による翌日のパフォーマンス向上を啓蒙していきたい

サービスの提供を通して睡眠データが蓄積すれば、それに疾患データを組み合わせて睡眠と疾患の関係に学術的な示唆を得られたり、そのほかのデータとも組み合わせることでまた別の発見につなげられたりするのではないかと期待しています。その中で、多くの人に共通する課題が見つかれば、ソリューションとして展開することも考えています。また、取得する睡眠データ自体の幅も広げられるよう、電極にいろいろなセンサーを追加していくことも検討中です。

将来的には、健診センターや睡眠に関する商品を提供しているメーカーだけでなく、睡眠にあまり満足していないといったライトな課題を抱える層や、そもそも現時点では睡眠にあまり関心を持っていない層にもアプローチしていきたいと考えています。技術開発本部 井上 裕晶氏は「睡眠の質を改善できれば翌日のパフォーマンスが上がるということを、データで世間一般に示せれば、もっと盛り上がるのではないかと思っています。ゆくゆくは広く展開できる睡眠改善のソリューションを開発し、それとともに個人向けの展開も行っていきたいですね」と語ります。

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