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株式会社ソラコムがお送りする「IoT速報-ビジネスの最前線」。今回は、農作物の長期保存を支える冷凍冷蔵設備メーカー、大青工業株式会社が、IoTを活用した遠隔監視システムを開発し、温湿度管理の最適化を実現した事例をご紹介します。
【この記事でわかること】
- 独自の冷凍冷蔵技術「氷温」で農作物の長期保存と商品価値を維持
- 温湿度管理を徹底するために、リーズナブルな遠隔監視システムを開発
- AIによる故障予測やエネルギー効率の最適化も視野に入れ、農業の持続可能性に貢献
【SORACOM活用のポイント】
- クラウド連携をスムーズに実現
- リモートアクセスサービスを利用し、メンテナンスや設定変更を効率化。機器導入の全国展開を支える
導入の背景
農作物の長期保存を支える冷蔵冷凍技術と新たな課題
青森県の冷凍冷蔵設備メーカー、大青工業株式会社は、「冷熱をデザインする」をモットーに、農作物の保存に最適化した設備を提供してきました。同社が確立した管理技術「氷温」は、冷蔵でもなく冷凍でもない中間領域の温度帯を、厳密に維持する最新技術です。食品の保存期間を飛躍的に延長し、食品内部のアミノ酸を増加させることで、一層の美味しさや糖度を高めることができます。これにより、地元特産品のリンゴやニンニクなど農作物ごとの氷温を維持し、長期間鮮度を保つことが可能です。さらに、旬の時期を過ぎても美味しい食品を市場に出荷できるよう商品価値を維持することは、売上の向上にもつながります。
このような冷凍冷蔵設備では、非常に精密な温湿度管理を必要とします。例えばひとつの設備内でも、場所による違いが出ないような空調制御が必要です。大型の設備では、管理する食品の総額が億を超えることもあり、予期せぬ故障や温度変化は大きなリスクです。異常を早期に発見するために、設備の稼働状況を管理する遠隔監視システムを従来から取り入れてきました。
しかし、電話回線やINS回線を利用していた遠隔監視システムは高額だったこともあり、必要性を認識していても導入するユーザーは多くありませんでした。そこで、リーズナブルかつ高機能な遠隔監視システムの提供を目指し、IoTとクラウドを活用したリニューアルに取り組む事になりました。新たなシステムでは、ソラコムのIoT向け通信サービス SORACOM IoT SIMのほか、プラットフォームサービスも採用されています。
実現したサービス
冷凍冷蔵設備の正常・異常を遠隔から管理するシステムを安価で提供、全国展開もサポート
遠隔監視の目的は、大青工業とユーザーが設備の異常をいち早く把握することです。そのために、冷凍冷蔵設備内部に複数の温湿度センサーを取り付け、データを定期的に取得してクラウドで記録、管理しています。収集されたデータは、現地に赴くことなく、インターネットを通じてパソコンやスマートフォンなどのウェブブラウザから閲覧できます。
ダッシュボードは、グラフや設備の稼働状況を一覧表示し、視覚的にすぐに正常や異常がわかるよう工夫しています。また温湿度は、事前に設定した基準値を超えると管理者にアラート通知する仕組みです。
<コンテナ型冷蔵庫のダッシュボード例>
遠隔監視システムの研究開発をリードする米塚明央氏は、「SORACOM IoT SIMは、オンラインから簡単に注文でき、リーズナブルな価格で利用できます。SORACOMの採用で、設置コストも非常に安く、経済的なシステムが完成しました。これなら、多くの農家さんにお勧めできます。AWSとのクラウド連携にもSORACOMのサービスを利用しています。IoT通信やクラウド連携の柔軟性が、私たちの技術をさらに引き立てています」と語ります。
さらに、空調ファンやヒーターの設定を遠隔から変更できるIoTコントローラーも開発しました。この遠隔アクセスにSORACOMのサービスを活用しています。
「遠隔地に設置された試験用冷蔵庫へのアクセスが容易となり、リモートでの開発やトラブル対応が大幅に効率化されました。その結果、当社がある青森から、沖縄や九州などの遠方のお客さまもサポートできるようになり、導入が増加しました。事業展開の大きな支えとなっています」(米塚氏)
現在では、遠隔監視機能とダッシュボード機能を標準搭載したIoTコントローラーを、冷凍冷蔵装置のオプションとして販売提供しています。
今後の展開
データとAIで故障の予兆検知、エネルギー効率向上にも取り組む
AIを活用した取り組みも進んでいます。そのひとつが、遠隔監視システムで得られたデータをメンテナンスの効率化にも活かす試みです。設備の正常時と異常時のデータをAIを活用して学習し、故障の予兆を分析しています。故障の可能性を早期に検知できれば、事前に部品交換などの対応ができるようになります。設備は夏は冷凍冷蔵に、冬も凍結を防ぐために年間を通して使われるため、隅々まで検査できるタイミングは倉庫が空になる短かい期間に限定されます。予兆検知が実現すれば、メンテナンスの効率化を実現し、繁忙期に集中する修理依頼を避けることにつながります。
<長崎県に設置されたコンテナ型冷蔵設備>
もうひとつの取り組みが、冷凍冷蔵設備内の温度差を推測する「AIアシスト」機能です。設備の温度管理は、空調の近くの場所、棚の上段と下段、壁際と中央部など、場所によって細かく変化します。これらの違いをAIが推測することで、設置するセンサーを最小限にしながら、最大の効果を得られるようにしています。
また、昨今、電力コスト削減や環境負荷軽減への要望も高まってきています。遠隔監視システムで冷凍冷蔵設備にかかるエネルギー効率の最適化を視野に入れ、再生可能エネルギーや蓄冷材を活用し、運用コストを削減するさまざまな技術の検証にも取り組んでいきます。
「温湿度管理を通じて、農業の持続可能性を高めると同時に、私たちの技術で地域や農家に貢献していきたいです」と米塚氏は語ります。
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