【この記事でわかること】

  • トヨタ自動車株式会社のデジタル変革推進室が取り組むIoTの民主化
  • 同推進室と有志社員によるデジタル化支援組織「D-ROOM」がIoTによる業務効率化の実現可能性を高め開発期間も大幅に削減
  • 技術系以外の社員によるプロジェクトの実装など複数案件を成功に導いている

 

【SORACOM活用のポイント】

  • セキュアな通信で製造機器の稼働データを収集したり、簡単に遠隔モニタリングや各クラウドサービスとの連携もできたりするため、PoC(実証実験)への障壁を下げた
  • 多様なIoTデバイスが1台から購入でき、需要に応じた柔軟な仕入れが可能なため幅広いプロジェクトに即座に取り掛かれる
  • 通信料も安く1回線だけの利用や、デバイスも1つから購入できて費用を抑えられるため社内決裁も通りやすくIoTの民主化の促進を後押し

導入の背景

改善策や新たな発想を鉄の熱いうちに実行したい

国内随一のグローバル企業であるトヨタ自動車。組織の大きさ故にさまざまなプロジェクトに関する決裁に時間と労力が割かれてしまうという実情は、他の大企業同様スピード重視のデジタル化社会において大きな障壁となっていました。

「業務効率を上げるため、製造工程以外でもデジタル化の改善策や新しい発想があらゆる部署の社員から持ち込まれるのですが、いずれも稟議を通すのに時間を要したり、セキュリティやコスト面で解決までに検討事項が多かったり。

現状の困りごとを解消したくても、思いついたその時に実行に移すための壁が厚いことへのジレンマがありました。失敗してもやってみることに価値があるし、やってみせればその意義を説得できることが分かっていても、スタート地点に立てない。まさにニワトリと卵でした」(トヨタ自動車株式会社デジタル変革推進室D-ROOM支援グループ グループ長 古谷公哉氏)

そこで、デジタル変革推進室を筆頭に社内の”デジタル技術通”の有志社員が、2018年にデジタル化支援グループ「D-ROOM」を組織しました。社内でデジタル化施策を提起したい人は直接D-ROOMに相談を持ち掛けると、システム構築のアドバイスがもらえたり必要なデバイスを貸し出してもらえたりします。

D-ROOMの設置後、相談と支援の輪は広がって多拠点化し、2023年9月時点で40カ所にD-ROOMが誕生しています。

「相談案件は部署も用途もさまざまですが、D-ROOMが集約することで横展開しやすいユースケースを特定し、汎用性の高いデバイスを選択して一括で注文もしておけるようになります。案件ごとに予算を立てて決裁を通す必要も最低限にできるのです」(同社第1電動先行開発部 第2試験課 組長 森直之氏)

D-ROOMのデジタル化支援を陰から支えたのがSORACOMのIoTプラットフォームとデバイスでした。

実現したサービス

製造データの可視化から物流カートの遠隔監視まで

SORACOMを活用したIoT事例は多岐にわたりますが、今回は3つをご紹介します。

1.非技術者が実装まで1か月で完遂したカートの遠隔監視

まず一つ目が、「工場内の物流カートの運行状況を遠隔モニタリングし、スマホやモニターで共有する」というもので、管理者の負荷を大幅に削減しました。実はこのプロジェクト、発案者は技術系以外のバックオフィス部署の社員でした。

広大な工場内を無人で走る自動運転カートの運行状況がリモートから確認できると管理者の業務効率が向上するのではという視点からスタート。技術的な知見がなかったためD-ROOMに相談したところ、GPSマルチユニットSORACOM Editionを活用したシステムを提案されました。

1台で位置情報(GPS)、温度、湿度、加速度センサーと充電式のバッテリーを内蔵したこのデバイスをカートに設置。IoTプラットフォームSORACOMを経由して、Microsoft Power Appsで作成したアプリで送信した位置情報をPCから確認できるようにしました。D-ROOMの支援とSORACOMのサービスの利用で非技術者によるIoTプロジェクトが約1か月で実装に至りました。

無人の自動運転カート

2.自動車製造データを自動収集し、5日で可視化!

2つ目が、「IoTで工場内のPLC(Programmable Logic Controller、工場設備の制御装置)機器から自動車製造データを自動収集し、BIツールで可視化する」というプロジェクトです。製造データをタイムリーにクラウド上に収集することができるようになり管理者の負担が大きく軽減されました。

自動車製造で用いるPLCと簡単に接続できる小型のゲートウェイ「PUSHLOG」を使って、機器のON/OFF情報や設定したトリガーデータを自動で収集し、蓄積データの可視化から分析まで行うBIツールにセキュアに送信するシステムを構築。完成までに要したのは、たったの5日でした。

セキュリティ上、工場内の有線LANやWi-Fiが使えないケースも多いという制約もあるなか、SORACOM IoT SIMによるセルラー通信を活用することでネットワーク使用の申請不要で、導入できた点も大きな利点でした。シンプルかつ安全なシステム設計だったため全社での展開が可能となりました。

小型ゲートウェイを活用して自動収集したデータの可視化から分析までを担うBIツールにセキュアに送信するシステムをたった5日で構築。

3.リモートワーク中のオフィスポストの状態を把握

3つ目は、「在宅勤務中のオフィスポスト内の状態を定期的に自動で通知する」という事例です。先ほども登場したGPSマルチユニットSORACOM Editionを活用し、郵便ポスト内の状態を定期監視。Microsoft Office365と連携してメンバー間で共有することで、場所問わず郵便物の有無を確認できるようになりました。

リモートワークの普及で以前のようにポストを確認できず郵便物が溜まっていましたが、このシステムを導入したことで通知を受けたメンバーのうち出社している人が、リアルタイムで受け取れるように。

「通知機能から派生して、誰が郵便物を取りに行ったかが可視化されることによって、チーム内で感謝や気遣う言葉が交わされるようになり、チーム内のコミュニケーションが活発化しました。これは想像できていなかったことで、実施して新たに発生した効果です。やはり”やってみる”ことの価値を再認識できました」(古谷氏)

インターネット契約や常時給電のための配線準備の必要がなく、SORACOMのセルラー通信用 IoT SIMを差し込んで設置するだけで簡単にデータを取得できる点、デバイス以外の費用がかからず費用を抑えられる点が導入の決め手でした。

かんばんを倒すことでセンサーが反応し、郵便の到着を通知

今後の展開

社内での活用促進の向けた相談窓口にも

D-ROOMの取り組みは社内での認知が広がり、技術系以外の社員からの利用も増えてきました。

「リスキリングの文脈においても、IoTの民主化を促進するという文化をさらに醸成していきたいですね」(古谷氏)

一方、D-ROOMの存在も活動も知ってはいるけれど「IoTは難しそう」という先入観から一歩踏み込めていない部署や社員がいる、と指摘するのは、同社上郷下山工場エンジン製造技術部の樟智裕氏です。

「デバイスを使いこなせるのか不安を抱く人も多く、より広く情報を提供していきたいです。もっと気軽に声を掛けられる相談窓口を常時設置するのもいいかもしれません」(樟氏)

現状は、有志社員が本業と兼務しながらあくまで自発的に支援していますが、今後はD-ROOM専任スタッフの確保も視野に入れています。

 

トヨタ自動車株式会社

トヨタ自動車株式会社

トヨタ自動車株式会社デジタル変革推進室D-ROOM支援
古谷 公哉氏
トヨタ自動車株式会社第1電動先行開発部
森 直之氏
トヨタ自動車株式会社上郷下山工場エンジン製造技術部
樟 智裕氏

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