集合住宅のEV充電器の予約管理をIoTで効率化。電気自動車の普及を後押し

ユアスタンド株式会社

Contents

1 アプリの提供で、誰もが電気自動車を購入しやすい環境に
2 SORACOMはセキュリティ面の強化や遠隔からの操作に役立っている
3 手厚いワンストップサービスで、導入数は順調に伸長

アプリの提供で、誰もが電気自動車を購入しやすい環境に

2018年に創業したユアスタンド株式会社（以下、ユアスタンド）。同社は、電気自動車（以下、EV）の充電器の予約・支払いができるIoTシステムを開発・提供するとともに、EV充電器の設置と運用も行っています。

日本政府は2021年1月、2035年までに新車販売をEVのみとする方針を打ち立てました。しかし、EVの普及はまだまだ進んでいないのが現状です。その理由の一つに、充電できるスポットが少ないことが挙げられます。

加えて現在、EV購入者の9割は一戸建てに住んでいるといわれています。マンションやアパートの住人に購入者が少ないのは、充電できるスポットが自宅マンションに設置されていないことが大きな理由です。充電器が自宅になければ、専用の充電スタンドや自動車販売店まで行って充電する必要がありますが、充電には急速充電器であれば数十分、普通充電器であれば数時間といった時間がかかります。

理想は、マンションに住んでいる人であっても自宅で過ごしている時間に充電が充分にできること。しかし、マンションの共有駐車場に充電器を導入する場合は、誰がどの充電器をどれくらい使用したかをきちんと把握し、適切に課金できる仕組みが必要でした。

そこでユアスタンドは、スマホのアプリから充電を予約、時間になると充電器の電源が入り、使用分だけ課金できるシステム「ユアスタンドアプリ」を開発。メーカーが販売する充電器の設置とあわせてシステムを提供することでマンションでも気兼ねなく導入できるようにし、EVの普及を促進したいと考えました。

SORACOMはセキュリティ面の強化や遠隔からの操作に役立っている

ユアスタンドの創業者である浦伸行氏も、EVを購入したにもかかわらず、住んでいるマンションに充電器がないという課題に直面した一人でした。ならば、自分の手で作ろうと考え、開発に取り組みました。

開発にかかった期間は3～4カ月。何台かのプロトタイプ開発を経て、現在はシングルボードコンピュータのRaspberry Piを使用しており、移行の際にSORACOMを導入しました。その理由を「IoTならSORACOMという雰囲気があったから」と、開発を担当した望月雄太氏は語ります。それゆえに、ほとんど迷わずに採用を決めたといいます。

現在使用しているサービスは、IoT向けのデータ通信サービスであるSORACOM Air for セルラーと、デバイスにリモートからセキュアにアクセスできるSORACOM Napterの2つ。Raspberry Piへの移行の際に課題となったセキュリティ面の強化は、「外部からのアクセスが基本的にできない仕様のSORACOMを利用することで、ある程度対策できたことが大きかった」と望月氏は振り返ります。

SORACOM Napterはデバイスを遠隔から整備したいときにも役立っているそうです。「かつてはアップデートなどでデバイスのデータを書き換えようと思ったら、当社のサービスを導入しているすべてのマンションを回る必要がありました。しかし、SORACOM Napterの導入後はオフィスや自宅にいながら作業ができるようになり、そこまで大きなコストや時間がかからなくなったため、気になったことが出てきたタイミングで少しずつ更新することができています」（望月氏）

現在、サービスの展開地域は関東圏が中心ですが、2022年以降には大阪や名古屋、北海道などにも拡大する予定です。遠く離れた地域で問題が起きた際にも、SORACOM Napterの活躍が期待されています。

また、設置先の現場での保守は電気工事士が手がけていますが、IoTにはあまり詳しくないため、修理まではすることができません。そこで、SORACOMのUSBドングルを持ち歩いてもらい、不具合があった場合にそれをデバイスに差してから連絡してもらうようにすることで、遠隔から修理できるようにしています。

手厚いワンストップサービスで、導入数は順調に伸長

ユアスタンドは、EV充電器の設置やアプリの提供のほか、設置に伴う現地調査や補助金の申請サポート、居住者から問い合わせがあった場合には、マンションの管理組合もしくは管理会社への提案まで、ワンストップでサービスを提供しています。

導入数は順調に伸びており、2021年末時点で首都圏を中心に150棟のマンションに導入されています。また、政府がEVに関する方針を打ち立てた影響もあって、問い合わせが増加しているといいます。「充電器が自宅マンションに導入されたことをきっかけに、EVを買ったという声も聞かれています」（広報デニス・チア氏）

今後は首都圏以外にもサービスの展開地域を広げていくほか、現在は分譲マンション中心のところを、新築マンションやオフィスビル、商業施設など、設置場所の幅も拡大させていく見通しです。