株式会社ソラコムがお送りする「IoT速報 – ビジネスの最前線」。今回は、コンクリートの製造プロセスに革新的なカーボンリサイクル技術を提供するCarbonCure Technologiesがグローバル展開する、コンクリート製造時のセメント使用量の削減と、炭素排出の低減に向けた取り組みをご紹介します。

【この記事でわかること】

  • コンクリート製造プロセスにおける、二酸化炭素削減の実現方法
  • IoTによる管理・制御システムによる製造工程の効率化とデータ活用

【SORACOM活用のポイント】

  • グローバルで展開しているIoT通信を活用して、リアルタイムなデータ収集と制御ソリューションを国を超えて提供
  • SORACOMのサービスにより、安全な双方向通信とクラウド連携を実現

導入の背景

コンクリート製造を変革する、脱炭素のテクノロジー

世界で最も多く使われている素材はコンクリートです。しかし、その主原料であるセメントの製造には、膨大なエネルギーが必要とされており、世界の温室効果ガス排出量の大きな割合を占めています。ある調査によれば、もしこの産業が一つの国だったとすると、排出量は中国、アメリカに次いで世界第3位に相当するとされています。

一方でコンクリートは、人々の移動を支える道路や、気候変動に強い都市インフラを支えるために、今後も不可欠な建材です。そのため、持続可能性と強度の両立を実現する、新しい製造手法の確立が求められていました。

2012年にカナダ・ノバスコシア州で創業したCarbonCure Technologiesは、この課題に取り組んでいます。同社は、二酸化炭素をコンクリート製造時に精緻に注入し、素材内部で固める独自技術を開発。二酸化炭素は、固定化したコンクリートを製造するだけでなく圧縮強度も高めるため、原料となるセメント使用量の削減と炭素排出の低減を両立させています。

実現したサービス

二酸化炭素の注入制御と最適化を支えるIoTシステム

より高性能で再現性の高いコンクリート製造を目指していた同社は、技術的な課題を解決するパートナーとして、カナダ・オンタリオ州に本社を置く設計・製造会社NeuronicWorksと協業し、コンクリートの製造現場に設置するIoTシステムを開発しました。

システムは、現場に複数台設置するフィールドユニット「Valve Box」と、それらを中央で制御・監視するコントロールユニット「Control Box」によって構成されます。各フィールドユニットはコンクリート混合設備の動作を制御し、同時に注入プロセスに関するデータをリアルタイムで取得します。これらのデータを元に、遠隔から稼働状況のモニタリングや注入プロセスの管理が可能です。

「私たちは各装置の状態を把握し、すべてが正しく動作しているか、二酸化炭素の注入が適切に行われているかを常に確認できます」と、CarbonCure TechnologiesのBrad Vickers氏は語ります。「製造したロットごとの二酸化炭素注入量を正確に把握することで、高品質なカーボンクレジット(炭素排出権)を創出できます。また、製造ロットと注入データを突き合わせることで、材料の混合プロセスや比率の効率性を分析し、最適化することも可能です」

この技術はすでに、Amazon HQ2(バージニア州アーリントン)、LinkedIn Middlefield Campus(カリフォルニア州マウンテンビュー)、Infosys Innovation Hub(インディアナ州インディアナポリス)など、北米を代表するプロジェクトに導入されています。

コンクリートの製造現場は、必ずしも安定したインターネット環境が整っているとは限りません。遠隔地や仮設の製造拠点でもリアルタイムにデータを取得・送信するには、セルラー通信が不可欠でした。
「私たちには、現場のデバイスとクラウド上のサーバーを、安全かつ双方向でつなぐ通信手段が必要でした」と、Vickers氏は述べます。

SORACOM IoT SIMを活用することで、このソリューションをグローバル展開できるようにしています。また、セキュリティにおける課題は、データの送信時にSORACOMのサービスを用いてプロトコル変換することで、IoTデバイス開発の負荷を抑えながら、安全かつ効率的なデータ通信を実現しています。

今後の展開

世界に広がる低炭素コンクリート、持続可能な建設業の未来へ

すでに、CarbonCure Technologiesとそのパートナー企業によって、2,800万立方ヤードを超える低炭素コンクリートが納品されています。2021年4月には、二酸化炭素を有用な技術に変換する革新的なソリューションを競う国際コンペ「Carbon XPRIZE」で優勝。さらに、2022年にはCNBCが選出する「Disruptor 50」に名を連ね、クリーンテック分野のグローバルリーダーを讃える「Cleantech 100 Hall of Fame」入りも果たしました。

このような実績を背景に、CarbonCureはすでに30カ国以上でシステムを展開し、グローバル規模での成長を加速させています。その原動力となっているのが、継続的な実験と迅速な技術進化へのこだわりです。

「今後は、既存のPLC(Programmable Logic Controller:設備や機器の制御装置)に取り付ける方法以外の利用も検討を進めて利用範囲を拡大し、大小さまざまなコンクリート製造業者のサスティナブルな生産活動を支援していきたいと考えています。現時点でも私たちのソリューションには十分な機能がありますが、その可能性を最大限に引き出すために、継続的な改良を重ねています」とVickers氏は将来の展望を語りました。

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