IoT 導入の背景

遠隔地からの発電設備の制御調整の必要性

IHIの原動機プラントSBUは、ガスタービン発電設備の設計・製造・据付および整備、すなわちライフサイクルに亘るサービスを提供しております。これらの設備の運転データを、1995年に遠隔モニタリングシステム“あいモニタ”を初導入以来、遠隔でモニタリングしています。さらに最近では収集したデータの分析による、ガスタービンをはじめとした機器のリアルタイム診断に注力しています。

発電設備の各機器は各々最適化した設定で納品しますが、季節変動や経年劣化により、制御パラメータの再調整・再設定をする必要性が生じる場合があります。リアルタイム診断結果としてその必要性が示された場合、これまでは現場まで赴き、制御修正を行ってきました。

しかし、場合によってはサービス員の派遣・到着が間に合わず、運転に障害が発生する場合がありました。

このような場合、IHIとお客さまの現場の制御装置をつないで、IHIから制御修正を行えるようにすれば、従来と比較して格段に迅速な制御修正が可能になり、お客さまの発電設備の信頼性を向上させることができるはずです。

IoT 導入の課題

セキュアに社内とお客さまのシステムをつなぐ方法

この思いは以前からあり、IHIからお客さまサイトの制御装置を修正するメカニズムは数年前にはできていましたが、「通信」セキュリティが課題でした。

遠隔モニタリングを実現している方法でも遠隔メンテナンスは可能です。しかしお客さまのシステムに外部からインターネット(公衆回線)を経由してアクセスすることは、運転データを一方通行で送出することに比べて、お客さまの安全性への懸念が大きく、そのセキュリティ要件を満たすハードルは高いものがありました。

一方、IHIの社内ネットワークと社外のシステムをつなぐ点においても、社内の情報システム部門から懸念の声が上がりました。

SORACOMが選ばれた理由

海外でも使え、必要時のみセキュアなネットワークを構築

その両方の課題をリーズナブルなコストで解決したのがSORACOMでした。

決め手となったのは「SORACOM Gate」です。社内ネットワークを利用せず、専用端末からSIMを介してセルラー回線だけを用いて、インターネットを介さずに閉域網を構築し、その中で遠隔制御修正を行うことが可能です。これにより、お客さまと社内双方のセキュアなネットワークに対する課題を解決することができました。

また、3G/LTEを利用したセルラー回線であれば、自前の専用回線を使う構成よりも大幅にコストを削減することができます。遠隔制御修正用の回線は遠隔モニタリング回線のように利用頻度が高くないため、初期費用を抑えて必要な時だけ利用することができ、データ通信料は使った分だけの従量課金となる料金体系は私達の用途にマッチしていました。話を聞いて、すぐに試せる敷居の低さも、迅速な導入の決断につながった要因の一つです。

また、IHIがこれまで納入したガスタービン発電設備の半数以上が海外に設置されていますので、SORACOM Air for セルラーのグローバル向けなら、日本での契約が可能で、1枚のSIMで世界どこでも利用ができる点も大きなメリットです。

システム構成図

導入の効果

物理的距離に関わらず遠隔からメンテナンスが可能に

セルラー通信は、物理回線の敷設なしで利用することができ、調達も設定もスピーディに行えます。ルーターにSORACOM Air SIMカードを入れて、現地に設置すればすぐに遠隔制御修正を開始できることも利点です。

SORACOMが提供しているAPIも便利です。社内のメンテナンス担当が使う操作画面は、SORACOMのAPIを利用して自社で開発しました。これによりメンテナンス担当は、専用知識がなくても、必要なときにワンクリックでプライベートネットワークに接続し、遠隔制御修正を開始することができるようになりました。

遠隔制御修正サービス用ネットワークを構築できたことにより、緊急を要する制御修正に迅速に対応可能な、お客さまの発電設備の信頼性向上に寄与できる体制が整いました。また、信頼性向上とは別に、些細な制御修正のためにメンテナンス担当を現地に出張させることはお客さまにとっては無駄なコスト、弊社にとっては無駄な労力を費やすことになっていましたが、些細な修正を設置場所の物理的距離に関わらず、迅速に手間暇かけずに対応できるというお客さま・弊社双方の副次的メリットがあることを使い始めてから実感しております。

今後の展開について

グローバルのお客様向けに運用支援サービスを発展させていく

IHIはライフサイクルサービスとして、納入後のお客さま運用支援サービスの強化を進めていますが、サービスメニューの1つとして遠隔制御修正サービスを付加することができたことで、設備のリアルタイム診断の価値を一層高めることができました。

今後IHIは益々グローバルに、新興国を含めた様々な国の様々な場所に、ガスタービン発電設備を提供したいと考えています。設置地域がより広範になるほど、また、アクセスの条件が悪い場所ほど、遠隔制御修正の価値が高まりますので、この新サービスを全面的に展開、発展させていきたいと考えています。

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