実現したいこと・解決したい課題

排水処理システムの実験設備は、監視や緊急対応に人手とコストが必要

化学の力で多種多様なソリューションを手がけ、あらゆる産業の基盤を支えている三菱ケミカル株式会社(以下、三菱ケミカル)。同社は化成品やプラスチック加工品、炭素素材、農業・食品素材・ヘルスケアなど、多岐にわたる事業分野を展開しています。その中でも水処理分野では、膜分離などの技術を使って浄水処理、下水処理、工場や畜産農家などの排水処理システムを提供しています。

工場の排水処理システムといっても、扱う製品や工場の規模などによって、そのニーズはさまざまです。生産規模の拡大による処理機能の拡充を希望する工場もあれば、現状の排水処理システムの効率化を望むところもあります。多様な工場のニーズに対して、排水処理システムの導入を検討するために、調整の有無や稼働の安全性を確かめるテストを行う必要があります。そのため、実際にシステムを使用するお客様の工場に小型の実験設備を作り、温度や圧力などをモニタリングしながら本導入までの準備を進めていくのが一般的です。

テストには、従来のやり方では、作業者の負担も大きく、コストもかさんでいました。例えば、安全性が担保できる稼働の上限値を確かめるために、トラブルが起こるか否かの瀬戸際の状況をあえて作り出して設備を動かしてみることもあります。「処理できないものが流れ出す」「安全装置が作動しロックがかかる」などの事態が想定され、その場合24時間体制でお客様の工場の設備監視を行う必要があります。

また、実験設備の緊急停止が必要だと判断されれば、すぐにお客様の工場を訪れて停止の作業を行い、実験を止めなければなりません。排水処理システムの導入に向けたテストにおいては、当社だけでなく、導入先のお客様にも負担のかかる状況があり、現場からは「遠隔監視を取り入れたい」という要望がかねてよりあがっていました。

そんな中、三菱ケミカルが排水処理システムの導入を担うプロジェクトにおいて、排水処理システムに遠隔監視装置を取り入れ、実験設備の監視から緊急時の一次対応までを遠隔で実施できるよう仕組みを整えていくこととなりました。遠隔監視装置の導入にあたっては、導入費用とランニングコストを抑えること、既存設備を大きく改変することなく簡単に導入できる装置の2点が求められていました。

実現したサービス概要

IoTゲートウェイを活用した遠隔監視装置を設置。ボタンデバイスで緊急停止も可能

このプロジェクトに導入したのは、ソラコムのパートナーであるIoT.kyoto(株式会社KYOSO)が提供する「MORAT GW(モラット ゲートウェイ)」です。「MORAT GW」は市販のFA機器を用い、取得したデータをクラウド上に送信しながら、現場の状況にあわせたリモート制御を可能にするIoTゲートウェイです。複数社のサービスを比較検討した結果、排水処理システムの遠隔監視装置を安価かつスピーディーに実現できることから、導入が決定しました。

この遠隔監視装置では、現場の実験装置に設置されたアナログセンサーから、データ通信サービス「SORACOM Air」を使用した「MORAT GW」を通してデータ可視化アプリ「IoT.kyoto VIS」に連携します。これにより、PCやスマホからリアルタイムにデータを遠隔監視することが可能になります。

また、SIMの内蔵されたIoTボタンデバイス「SORACOM LTE-M Button for Enterprise」も連携させたことで、実験装置の緊急停止も遠隔で行えるようになりました。遠隔監視システム上でデータに自動停止を必要とする不備の予兆が見られる場合に、ボタンデバイスを使いあらかじめ実験設備を停止することで状況の悪化を防ぎ、修理に必要な部品を調達してから現場に向かうなど、実験管理の効率化にもつなげられます。

SORACOM LTE-M Button for Enterpriseは緊急停止以外にも、排水の流量調整やポンプのオン・オフ切り替えといった、実験設備で行う一部作業のリモート化において、さまざまな活用が期待されており、今後どのように活かしていくか、実験の状況を見ながら検討が続けられています。

シンプルな仕組みで設置も簡単。監視体制の効率化、トラブル解決の選択肢増に貢献

実験設備の遠隔監視装置は、プロジェクト内で導入が決定してからわずか半年以内に施設への設置と監視のための設定がすべて完了しました。遠隔監視装置を導入したことにより、従来はマンパワーとコストをかけて行ってきた設備の監視体制を効率化ができ、また実験を止めずにトラブルを解決できる可能性が生まれています。

遠隔監視装置の設置は三菱ケミカルが行っています。同社の鶴見研究所 アクア研究室 アグリ技術Grの竹内雅人氏は、装置の設置について次のように語ります。「装置全体がコンセントさえ差せば使い始められるようなシンプルな組み立てのため、とても使い勝手が良いと感じました。既存の実験装置の中を組み替える必要がなく、装置とは別に『MORAT GW』を加えることができます。カスタマイズも可能な仕組みなので、今後も他のプロジェクトで、排水処理システムの内容に合わせて調整を行いながら使っていけたらと検討しています」

今後のサービス展開について

遠隔監視装置への経験・知見を深め、いずれは他プロジェクトにも活用したい

三菱ケミカルの「環境・生活ソリューション」分野では、工場排水の処理システムに関する実験装置を、全国各地で多数手がけています。プロジェクトで遠隔監視装置を導入した成果を踏まえて、今後は全国の実験装置で遠隔監視装置を導入できたらと構想しています。例えば、全国の複数の工場を東京の事務所から遠隔監視するといった新たな運用方法も考えられます。排水処理システムのテストをさらに効率化することができれば、空いた時間や人手でお客様の他の課題解決に取り組むことも可能になるでしょう。

「今回私たちが参加したプロジェクトは、2023年度の終了を予定しています。実験設備の遠隔監視装置に対する経験と知見を深め、所属部署で行われている他のプロジェクトでも活用できるようにしていきたいです」(竹内氏)

 

三菱ケミカル株式会社

三菱ケミカル株式会社

三菱ケミカル株式会社 鶴見研究所 アクア研究室 アグリ技術Gr
 竹内 雅人氏

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