浜松営業所の開所に際し、まったく新しいデジタル構想を展開

2020年10月8日、ガスや電気などの総合エネルギー事業を行う日本瓦斯株式会社(以下、ニチガス)は、デジタル化を実現した浜松営業所を開設しました。

首都圏を中心に展開してきたニチガスは近年、静岡県において、三島から富士、静岡、焼津と、徐々に西部エリアへの進出を行っています。既存営業所の需要家が増えるにつれて、新しいエリアへ進出を果たしてきました。

しかし、焼津営業所からさらに西部に進出するにあたり、エリアマネジメントを行う鈴木壮氏は、静岡県で最も人口の多い浜松市に注目。浜松市は焼津市から約60km離れているため、その前の掛川市に開所するのが通常ですが、「浜松市は34万世帯中約20万世帯がプロパンガスを使用しており掛川市のマーケットの約5倍。さらに実際浜松市を訪れてみてマーケットとして非常に魅力があると感じました。そのため、浜松市に一気に飛んでいきたいと思ったのです」と、鈴木氏は当時を振り返ります。

これまでは営業エリアを広げると同時に新しい営業所を展開してきましたが、浜松市に営業所を新設すれば、顧客開拓も完全にゼロからのスタートとなります。そこで鈴木氏は、浜松営業所でまったく新しいビジネスモデルの実装を始めようと考えました。

3つの「レス」で大きくコストを削減

鈴木氏が考えたのは、当時ニチガスの本社がソラコムと開発していたNCU(Network Control Unit/ガスメーターをネットワークでつなぎ、ガスの使用量や異常を管理するシステム)の「スペース蛍」などを使うことでした。これにより、スタッフが毎月需要家を訪問して検針等を行っていた従来のスタイルをなくし、人的コストの削減と生産性の向上を図ろうとしたのです。

プロパンガスは、需要家が同じエリアに集中しやすい都市ガスと違って、需要家が点在しがちです。そのため、「一軒一軒離れた需要家に毎月検針や集金に行くのは非効率。そういった従来のビジネスモデルを、まだ需要家のいないゼロ地点から、IoTやアプリなどの力を使って変えていけないかと考えました」と鈴木氏。

そこで浜松営業所では、大きく分けて3つの「レス」に取り組みました。

1つ目は、キャッシュレスです。ガス料金の支払いや、ガス機器購入時の支払いをすべて口座引き落としやクレジットカード決済で対応。社内の経費精算には送金アプリ「pring」の活用で小口現金の取り扱いをなくし完全キャッシュレス化を実現しました。
これにより、領収書や入金票など、お金にまつわるコストと責任者と事務員の管理業務の削減、そして、現金を扱うことによるリスク削減を実現しました。

2つ目は、ペーパーレスです。スペース蛍で取得した検針データやガスの使用料金などを専用のアプリ「マイニチガス」に集約して見られるようにすることで、紙の検針票をなくしました。スペース蛍によって、指針値は現場でデジタルデータとなり、中間処理を介さずマイニチガスを通して可視化されています。人が顧客宅のガスメーターを確認し、検針伝票を発行、投函という業務を、スペース蛍とマイニチガスの活用によって効率化し、ペーパーレスとコスト削減を実現しました。

3つ目は、事務員レスです。
紙や現金の取り扱いによる作業をなくし需要家情報などをすべてデータ化することで、3つの営業所(静岡、焼津、浜松)の事務的な管理業務を静岡営業所の事務員が遠隔で行うことが可能になりました。すべてのデータをクラウド上で管理し、個別チャットによる連携で遠距離でのやり取りもストレスなく対応できます。

事務作業が4分の1になり、営業に時間がかけられるように

これらの取り組みによって、営業所の開所には欠かせなかった事務員、検針業務スタッフが不要に。従来であれば、営業所の起案から開所まで2~4年ほどかかっていたところを、起案して1年半で実現することができました。

浜松営業所は、デジタル化のプロトタイプとしてスタートしましたが、「驚くほどうまくいっています」と、鈴木氏。事務作業は体感として、従来の4分の1にまで削減できたといいます。

浜松営業所に赴任した営業スタッフからは、紙を扱わない業務形態に慣れたことで、「今までの作業は何だったのだろう」という声も聞かれたそう。鈴木氏は「わずらわしい事務作業がなくなったことで、需要家への訪問回数や需要家での滞在時間を増やして需要家との関係性を築くという、業務の本質的な部分に集中できるようになったのです」と語ります。また、事務員として働いていた社員が物件のオーナー様への挨拶訪問といった需要家サポート業務をすることができるようになり、業務や働き方の再定義も可能となりました。

加えて、需要家からは、「アプリ「マイニチガス」を開けばいつでもガスの使用履歴や支払情報が見られるから、紙の検針票を取っておく必要がなくて便利」という声が聞かれているとのこと。マイニチガスは、ガス機器の販促としてデジタルチラシの配信などにも活用されています。「チラシを需要家に持って行く手間はもちろん、印刷する必要もなくなったので、チラシに関する部分でもコストが半分以下になりました」(鈴木氏)

さらに、スペース蛍によって、ガスボンベ配送の最適化にもつながっています。「これまでは月1回の検針だったのが1日に24回、1カ月に720回の検針データが取得できるようになり、ガスボンベの残量がリアルタイムで追えるようになりました。これまでも指針値とは別に気温や前期比使用量などから残量の予測はしていましたが、例えば急に来客が来てガスの消費量が増えたといったことがあると、配送予測から大きく外れてしまいます。スペース蛍があれば、月に1回のデータによる予測に基づく配送でなく、1時間に1回のデータによるリアルタイム配送へ大きく変わってくるのです。」(鈴木氏)
また、リアルタイムでガスの残量が追えることにより、従来の予測によって予備ボンベ1本を残す半数交換から、2本を一度に交換する全数交換に変えることができ、4割から5割の配送回転数の削減を可能とします。

浜松営業所のモデルを、社内だけでなく他社にも展開していきたい

浜松営業所の成功を受け、現在は焼津営業所でもデジタル化を進め、すでに焼津営業所の事務業務も静岡営業所がまとめて対応できるようになっています。「ここでデジタル化の成果が証明できれば、ほかのすべての事業所にも展開できると考えています」と、鈴木氏は展望を語ります。

今後は、「社内の営業所だけでなく、他のガス会社やガス業界以外の企業にも、浜松営業所と同じシステムを水平展開していきたい。これからは競争ではなく、“共創”がキーワード。変化の激しい現代において、どの企業でも、ペーパーレス化やコストの削減は課題になっています。スペース蛍やキャッシュレス化、ペーパーレス化のシステムを、全国の企業のみなさまに活用していただけたらと思っています」(鈴木氏)

なお、スペース蛍の導入・利用に関するお問い合わせは、こちら よりお問い合わせ下さい。

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