株式会社ソラコムがお送りする「IoT速報-ビジネスの最前線-」。今回は、太平洋工業株式会社が開発した、牛の体調をモニタリングするIoTサービス「CAPSULE SENSE(カプセルセンス)」をご紹介します。

【この記事でわかること】
・老舗自動車部品メーカー・太平洋工業株式会社が、自社技術を応用し、畜産業の領域で新規事業を立ち上げ
・IoTを活用し、牛の健康状態のデータを取得してクラウドに転送。AIによるデータ分析で、体調変化の兆候をリアルタイムで通知することが可能に
・海外で和牛のニーズが増加する一方、国内の畜産農家数は減少。畜産業において機械化は必須となりつつあり、農家のあらゆるニーズに応える新機能やサービスを構想中

【SORACOM活用のポイント】
・牛舎に設置する親機にSORACOM Airを採用し、セルラー通信でデータを送信
・畜産農家は通信キャリアが限定されるエリアに立地していることも多く、マルチキャリア対応で自由に選べる点がSORACOM Airを導入する決め手のひとつに

導入の背景

自動車部品の老舗メーカーが、自社技術を応用して新規事業を開発

岐阜県大垣市に本社を置く太平洋工業株式会社(以下、太平洋工業)は、自動車用プレス・樹脂製品やバルブ製品の老舗メーカーです。自動車用のバルブコアやタイヤバルブは国内でシェア100%・世界でも50%を占め、グローバルに事業を展開しています。

2018年、自社が持つ国内唯一の「TPMS(タイヤ空気圧監視システム)」で培ったセンシングやソフトウェア、通信などの技術を活用し、他業界の課題解決につながる新たなサービスをつくれるのではないかと考えました。

畜産農家の抱える課題に着目し、IoTでソリューション構築を発想

新規事業として「牛の体調管理」に着目した理由は、大きく分けて2つあります。

1つ目が、畜産農家にかかる業務負荷の大きさです。体調不良や深夜の出産などの突発的なトラブルの予防のため、牛の体調管理は大切ですが、健康状態のチェックは1頭ずつしか行えません。体温の計測や目視確認のデータの記録を何十・何百頭と行うのは、多くの時間と手間がかかる上、「牛のことを常に気にしていなければならない」というプレッシャーがありました。

2つ目が、畜産業の伸びしろと構造の変化です。現在、日本では乳牛や肉牛を育てる畜産農家数は徐々に減少しています。一方で、海外での和牛ブランドの認知度向上とニーズの高まりにより国産牛肉の輸出が進み、1戸あたりの飼育頭数は増加傾向が続いています。今後さらにこのトレンドは拡大する可能性があり、少ない人手で多くの牛を育てるために、畜産業のデジタル化が必要です。

この2つの問題にTPMSの応用機会を見出し、太平洋工業は「牛の体調管理」に役立つサービス開発を決定しました。

しかし、システムの構築、特に牛の状態を検知するAI開発には大きな苦労が伴いました。データは個体差が大きく、牛の生態や飼育に関して詳しい知識が不可欠のため、メンバーが現地に半年常駐し、牛の状態を直接観察しながらデータを整えて、AIに学習させていきました。

実現したサービス

センシング×IoT×AIで実現した、牛の体調モニタリングシステム「CAPSULE SENSE」

こうして開発した「CAPSULE SENSE」は、センシングと通信技術、クラウド、AIを活用した、牛の体調モニタリングシステムです。

最大の特長は、温度・加速度センサで体温と動きのデータを計測するカプセル型の子機を、牛の胃の中に滞留させることです。牛は非常に繊細で、センサを首などに装着するだけでストレスを感じ、体調に影響が出ることもあります。そこで牛の口から体内に入れてストレスを軽減し、5年間はメンテナンスも不要な仕組みを作りました。

子機で取得した体温や活動量のデータは、牛舎に取り付けた親機に定期的に送られ、クラウドに転送されます。クラウドでは、独自に開発したAIが牛の状態を分析。発情・分娩・疾病の兆候があれば、専用アプリでリアルタイムに通知され、農家はスマートフォンやタブレットで確認できます。

また、親機は1台につき最大100頭を見守ることができ、牛舎の温度や湿度などの情報も取得しているため、牛にとって最適な飼育環境となっているかを合わせてチェックできます。

この親機のセルラー通信に、SORACOMを使用しています。

通信キャリアの柔軟性・コスト・サービスのスピード感から、SORACOMを採用

 

サービス構築に携わった、事業開発センター 新規事業推進部 センシングデバイス開発2Gの福井豊明氏は、SORACOMを採用した理由について、「決め手は、通信キャリアを自由に選べること、コストの安さ、注文から製品到着までの圧倒的なスピード感」だと語ります。

「畜産農家は、特定の通信キャリアしかつながらないエリアに立地していることも多く、状況に合わせてキャリアを選べるのは大きな魅力でした。また、費用も非常に安く、注文してから1~3日ほどで製品が届く点もありがたいですね。お客様から『3日後にCAPSULE SENSEを使いたい』とご要望をいただくこともあるのですが、ソラコムならすぐに届くので、お待たせすることがありません。通信量の使い過ぎを防ぐアラートの仕組みや通信量の形態も含めて、とても便利なサービスだと感じています」(福井氏)

今後の展開

環境問題の解決にも貢献可能な、幅広い機能拡張を目指す

「CAPSULE SENSE」は現在、全国で導入や実証実験が進んでいます。中でも、分娩の兆候を事前に検知できる点は、現場で特に喜ばれています。

「これまで知らぬ間に出産し、子牛が死んでしまうこともよく起こっていたそうですが、牛を大切に飼育してきた畜産農家にとって、大きな経済的損失です。出産を控えた牛がいる農家は常に緊張状態にさらされるため、分娩日を予測できることで働き方の改善にもつながっていると感じます」(福井氏)

今後、導入先を拡大しながら、子牛の体調を管理できるラインナップ拡充を目指しています。また、健康状態をより緻密に見守れる機能や、農家の経営状況を管理できる機能の拡充も計画しています。

さらに、事業開発センター 新規事業推進部 センシングデバイス開発2Gで課長を務める栗本優氏は、温暖化対策や環境負荷軽減まで視野に入れた機能拡張について構想を語りました。

「現在、世界の温室効果ガス排出量の中で、約6%が牛などの動物のゲップ由来だといわれています。牛の飼料や遺伝子を変えるといった対策もありますが、そもそも排出量をモニタリングできていない現状があります。ゲップやそこから生まれる温室効果ガスの排出量をリアルタイムで測定できるものをつくりたいです。既存サービスの隙間を埋める形で、新たなサービスを開発していければと考えています」(栗本氏)

 

太平洋工業株式会社

太平洋工業株式会社

事業開発センター 新規事業推進部 センシングデバイス開発2G
課長 栗本 優氏
係員 福井 豊明氏

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