IoT 導入の背景

住宅内プールやスパを楽しむために必要な水質管理・維持

北米の住宅では、住宅内にスイミングプールやスパが設置され、気軽なエクササイズやリフレッシュの方法として利用されています。アメリカだけで1,000万を超える住宅用プールが存在します。しかし、これらのプールやスパを常に利用できる状態に維持し続けるためには、定期的なメンテナンスや水質管理が必要です。

しかし、ぱっと見ではわかりにくい水質を常に正しく把握することは難しく、プールやスパの水質管理は、所有者にとって長年の課題でした。ベイエリアのハイテクスタートアップSutro Connectは、そんな悩みを解消してくれるサービスです。Sutro ConnectのAIベースのリモート水質管理システムは、IoT技術を用いて水質の状態を継続的に測定し、プールのメンテナンスが必要なときにアラートを送信し、どの薬品をどのタイミングで使用すべきかについてアドバイスしてくれます。プールの所有者は、このサービスによって、プールが今使える状態かどうかを把握し、必要に応じて排水を実施、適量の薬品を投入することでプールを安全な水質に管理することができます。

IoT 導入の課題

専門知識が必要となる水質管理をもっと簡単に

プールやスパのメンテナンスのためには、水質を正しく把握する必要がありますが、その方法は専門的で、薬品を用いるためさまざまな知識を要します。そのため、プールのメンテナンスは、プールの所有者にとって、時間と手間のかかるストレスの多い作業であり、さらに人為的なミスも発生する可能性がありました。

Sutro Connectの創業者であるクラーニ氏は、メンテナンスの煩わしさや費用のせいで、プール所有者がせっかくのプールを楽しめていないことに気づき、この問題を解決することを決めました。クラーニ氏は、農業灌漑用水の水質監視システムの評価と開発に携わった経験から、これらの技術をプールの水質管理にも応用できることを確信し、Sutro Connectの開発に着手しました。

SORACOMが選ばれた理由

デバイスの初期設定と認証管理にSORACOM Kryptonで実現

多くの「スマートホーム」ソリューションは、データのやり取りに、家庭用のWi-Fiを使うことが前提になっています。しかし、住宅用プールの設置されている場所では、家庭用Wi-Fiの通信が使えないことが多くあります。また、Sutro Connectは、スポーツジムや学校などの大規模な施設に設置されるプールでも使うことができますが、このような場所も必ずしも利用できるネットワークがあるとは限りません。

そこで、SORACOMのセルラー通信を採用しました。セルラー通信を利用したことで、ユーザーのプールにネットワークがない場所にあったとしても水質管理サービスを提供することができます。

コンシューマーIoT企業にとって、デバイスの初期設定は、サービスの本格展開における課題のひとつです。デバイスを届いたらすぐ使えるようにするためには予めデバイスに初期設定をしておく必要がありますが、これらの設定にはクラウド連携のための認証といった高度なセキュリティが必要とされる情報も含まれています。これらの情報の受け渡しをいかにセキュアかつ効率的に行うかは課題でした。

そこで、Sutro Connectでは、デバイスの初期設定と認証管理にSORACOM Kryptonを利用しています。SORACOM Kryptonは、SIMの認証を利用してクラウドの認証を初回接続時に生成する仕組みを持っており、この仕組みを利用することでデバイス製造業者に依頼すべき項目を減らし市場投入までの時間を大きく短縮し、さらにデバイスのセキュリティを強化することができました。

システム構成図

導入の効果

気軽に設置可能、家庭用プールのモニタリングにAIを活用

Sutro Connectの専用ハードウェア「スマートモニタ」には、高度なセンサーとAI機能が搭載されています。スマートモニタは、プールやスパに浮かべておくことで、pH(水素イオン指数)、塩素、アルカリ度などの重要な水質データを継続的に収集します。このデータはSutro Connectの同じく専用ハードウェアで、通信機能が搭載された「スマートハブ」を経由してクラウドに送信され、クラウド側でこれらのデータは分析されます。

スマートフォンアプリ「Sutro Smart Water System」を通じて、所有者はこれらの分析結果をいつでも見ることができ、プールの水が安心して泳げる状態であることをひと目で確認できます。このアプリは必要に応じて、プールの状態に基づいて、メンテナンスのアドバイスも行います。このアドバイスはプールの所有者が指定した薬品についても言及し、Sutro Connectのパートナーネットワークを通じて最寄りの業者に、薬品を発注するといったサポートも依頼することもできます。

今後の展開について

さまざまな分野の水質管理の課題にノウハウを活かす

Sutro Connectは、プール、スパ、または温水浴槽の管理と維持を手軽に行えるようにすることを目的として設計されています。

一方で、Sutro Connectのセンサーモジュールは、自治体の貯水池から河川の水源や源泉まで、あらゆる水中の化学物質含有量の測定が必要な場所に応用することができます。Sutro Connectが特許を取得しているハードウェアやソフトウェアを、塩素濃度やpHのようなプールを想定した検査以外にも、さまざまな水質検査をサポートするために応用展開していく予定です。今後は、プールの水だけでなく、飲料水や農業灌漑用水の安全性をも管理・維持することもできる独自のサービスとして、さまざまな用途での水質管理でお困りの皆様をサポートしていきたいと考えています。

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