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保育士の業務負荷を軽減し、働きやすい環境作りを支援する
2013年に創業したユニファ株式会社(以下、「ユニファ」)は、全国の保育園や幼稚園、こども園に向けて保育者の業務負荷の軽減や保育の質の向上を目指す総合ICT/研修サービス「ルクミー」を開発・提供しています。
その中でも、ソラコムのデータ通信サービス SORACOM Air を使った「ルクミー午睡チェック」(以下、午睡チェック)は、お昼寝中の園児たちを見守るサービスです。
近年は、女性の就業率の上昇や共働き世帯の増加などにより、1~2歳児の保育施設の利用率が50%を超える※1など、保育施設が働きながら子育てをする人々の社会インフラとして重要な役割を担ってきました。しかしその一方で、有効求人倍率は全国で約3.9倍と、全職種平均(約1.6倍)の約2.5倍の水準感であり、都心部に至っては約6倍 ※2と、非常に高くなっています。さらに、“潜在保育士”といって、資格をもっている方のうち、保育士として働いていない方は約60%で100万人※3もおり、保育士不足が深刻な課題となっています。
※1:出典「保育所等関連情報取りまとめ」(厚生労働省 令和2年9月)
※2:出典「保育士有効求人倍率」(厚生労働省 令和元年1月)
※3:出典「保育士の現状と主な取り組み」(厚生労働省 令和2年8月)
これらの背景の一つには、子どもと向き合う保育者の本質的な仕事のほかに、登降園管理やお昼寝の見守り、保育日誌や保育計画の作成、自治体に提出する書類の作成など、大量の周辺業務があり、現状はそれらをほぼ全て手書きで行うなどアナログな手法が主流であるため、業務負荷が高まっていることが上げられます。ルクミーはこういった状況に対してデジタル化を推進することで、保育者にかかる業務負荷の大幅な軽減を目指してきました。
中でも、園児のお昼寝ではうつぶせ寝による事故を防ぐために、保育者が園児一人ひとりの寝ている体の向きを5分ごとに手書きで記録し、チェックする作業の物理的・精神的な負荷が高いことが課題でした。ユニファはこれらの課題に対して、午睡チェックの開発に着手しました。
ヒヤリングやトライアルを重ね、現場の意見を活かした最終形に
午睡チェックの開発にあたっては、どのような形状のプロダクトにするか検討を重ねました。たとえば、布団の下に敷くシーツ状にするのか、胸に付けるセンサーデバイスにするのか、など。実際に保育施設を訪問してヒヤリングを重ね、トライアルも複数回行い、保育者が使いやすいよう改良していきました。
アプリの使い勝手についても、保育者の声を聞きながら改良を行いました。たとえば、「お昼寝中は基本的に部屋を暗くしているので、その中でも画面を見やすくしてほしい」「画面を反対側から覗き込んでもわかるようにしてほしい」といった要望を取り入れました。取締役CTOを務める赤沼寛明氏は「結果的に、日常の業務に溶け込むサービスになったと思います。」と振り返ります。
一方、通信面では、Wi-Fiを使うか、ほかの手段にするか検討しました。すでにサービスの提供を開始していた「ルクミーフォト」というプロダクトではWi-Fiを使用していましたが、保育施設側で通信設定をする必要があるため、問い合わせも多く、あらかじめ設定して出荷する方法を探していました。
そこで午睡チェックでは、安定的な通信が実現しやすいセルラー通信を検討。ソラコムも含めて複数社検討し、最終的にはIoTのデータ通信を主体とする想定でつくられたサービスであることや、1回線単位で通信スピードの設定ができること、管理画面上で設定が変えられることなどから SORACOM Air を選びました。「我々は全国にサービスを提供しているので、すぐに現地に行くことができません。その点、管理画面で利用状況や通信状況が見られたり、設定の変更が柔軟にできることがSORACOMのメリットでした。」(赤沼氏)
自動のチェックシート作成とアラートで、保育者の精神的負荷の軽減に
午睡チェックは、園児の胸にセンサーを付けて、体の向きを自動で判別。その情報をiPadアプリが記録していくことで、今まで手書きしていた作業が自動化されました。加えて、園児がうつぶせ寝になったときはアラートを発出。目視とICTによる二重チェック体制によって見守りの質が高まると共に、手書きの作業がなくなることで業務負荷の軽減にもつながりました。
午睡チェックを利用する保育者からは、「休憩が取りやすくなった」という声が聞かれました。また、導入当初は効果に懐疑的だった施設では、「一度導入してみたら業務に欠かせないものになった」という嬉しい声も聞かれました。
ユニファは、「スマート保育園・スマート幼稚園・スマートこども園」構想を推進・展開しており、モデル園としてルクミーシリーズを一括導入している保育施設の中には、導入前後で月間約65%の業務時間(連絡帳の記入や写真撮影業務、保育者のシフト作成業務、検温業務等にかかっていた時間)の削減を実現した例もあります。
保育業界は必ずしもITリテラシーが高いと言えるわけではないため、「機械に頼るのは良くないのではないか」「自分たちがやるべきことをサボっているのではないか」と、システムを導入すること自体に抵抗感を抱くケースも少なくありません。それに対して、業務効率を上げられるのはもちろんのこと、「楽をするためではなく、チームで見守る環境を提供できることに価値がある」と理解してもらうことで、導入につながっています。
サービス開始当初は、施設の利用状況を逐一確認し、午睡チェックなどのアラートが頻発している施設や、あまり使ってもらえていない施設には連絡し、問題がないかを聞いてサポートしていました。「直接ではないにしても、子どもたちの安全に関わる業務に付随するプロダクトなので、正しく動作しているのかをきちんと確認したいと考えています。」(赤沼氏)
保育者のやりがいを高め、子どもたちの健全な発達につなげたい
ルクミーは午睡チェックも含めて全部で12のプロダクトがあり、これらを通じて膨大なデータが蓄積されています。今後はそのデータを利活用することで、新たな展開ができるようにしたいと考えています。
たとえば、連絡帳アプリに体温・睡眠・食事・排便の記録を一気に入力したり、シームレスなデータ連携によって記録確認の手間が軽減されるサービスや、写真付き記録の作成で保護者の子どもへの理解が深まり、保育者同士の振り返りにも使用できるなど、保育の質の向上にもつなげていきたいと考えています。また、午睡チェックが集約する情報はディープラーニングなどを使って分析し、より付加価値を出すことも視野に入れています。
「プロダクト全体で保育業界のDXを進めていき、単に業務効率化を行うだけでなく、子どもの興味関心や発達段階に応じた教育機会の提供につなげていきたいと考えています。」(赤沼氏)
保育施設に子どもを通わせる保護者からは、午睡チェックを自宅でも使いたいという要望が寄せられており、将来的には家庭用も展開できるよう検討中です。
「今後も保育施設内の業務をよりカバーしていけるよう、プロダクトを提供したいと思っています。最終的にはスマート保育園という構想の中で、保育者が専門性を活かして働ける環境を整え、仕事のやりがいや価値を高めていきたいです。それができれば、結果的には子どもの健全な発達につながっていくと考えています。」(赤沼氏)
目次
提供サービス
- ルクミー午睡チェック
- ルクミー
- 「AWS Startup Architecture of the Year Japan 2020」日本代表
- 経済産業省が取り組みを進める「IoT推進ラボ」において、優れたプロジェクトを選定・表彰する「第2回 IoT Lab Selection」でグランプリを受賞
利用したサービス
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