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株式会社ソラコムがご紹介する「IoT事例-ビジネスの最前線-」。今回は、”製造業DX”におけるデジタル活用例を見ていきましょう。
【この記事でわかること】
- 容器市場でトップシェアを誇る東洋製罐グループホールディングス株式会社の東洋製罐株式会社が2019年からIoTを活用し製造業DXプロジェクトを始動
- 現場と管理部門でデータを一括管理・分析できるデータ基盤を構築。
- 基幹、ユーティリティ、生産設備、環境などのデータを統合し、工程の可視化を実現。さらには蓄積したデータでAI解析も可能に
【SORACOM活用のポイント】
- オンデマンドリモートアクセスサービスで、コロナ禍でも遠隔で開発作業を遂行
- 社内ネットワークとセルラー通信を併用して、現場と管理部門で必要となるデータ取得するネットワークを構築できた
- 接続先を指定するだけで、社内システムからAWSへのクラウド連携も安全でスムーズに
導入の背景
”製造部門・開発部門のコンフォートゾーン”から脱してDXを目指す
東洋製罐グループホールディングス(以下、東洋製罐GHD)は、容器の4大素材と言われる缶(金属)、びん(ガラス)、紙、プラスチックの全てを世界で唯一製造している容器のリーディングカンパニーです。コーヒーショップなどで使われる飲料紙コップのシェアで70%を占めるほか、ペットボトルやビール缶・びん、洗剤用ボトルなどさまざまな日用品の包装容器を製造・販売しています。
脱プラスチックや原材料の高騰問題に対して、環境負荷の少ない容器を開発したり、社外協業によるイノベーションを促進したりと革新を続ける同社は、「製造業のDX」を掲げて製造業におけるデジタル化も率先して進めています。
製造業でのデジタル化について、同社グループ企業である東洋製罐のIoT/ロボット推進室ジェネラル・マネージャー菊地隆之氏は、「製造業、とりわけ容器など日常的に需要のあるものは良くも悪くもビジネスの波が少なく、ともすれば”コンフォートゾーン”状態で現状にとどまってしまう。デジタル化など新しい技術への適応が遅くなりがちなのです」と、指摘します。
「今後は少子高齢化による人材不足など避けられない問題があるものの、高額な最新設備に投資をすれば、ビジネスインパクトが大きくなってしまう市場でもある。そこで、レトロフィット(既存の構造や機器を新しいテクノロジー等で改良・更新すること)を含めてデジタル活用を進めていかなければ、縮小均衡に捉われてしまうことが予想されます」(菊地氏)
そこで、トップダウンも含め2019年にAI解析も視野に入れたIoTプロジェクトを始動させました。最初に取り組んだのは、製缶時の不良品を見つける自動検知システムでした。1分間に2000缶をピストンで製造する高速成型機械で発生した不良品のデータを自動で収集・蓄積して、将来的な不良品発生数の予知・予測を目指しました。
構想としては、成形機械から収集したデータを社内の機械学習用パソコンに転送し蓄積、分析しデプロイするというものでした。その時に課題となったのが、ネットワークです。セキュリティの観点も含め、基幹系社内ネットワークへの負荷が予想され、ビックデータとなり得る、現場データ収集・蓄積を行う術を模索していました。
そこで、採用されたのがAmazonのクラウドサービス「Amazon Web Services(AWS)」と、AWSに親和性の高いIoTプラットフォームSORACOM でした。
実現したサービス
コロナ禍でも遠隔アクセスでスムーズ開発
IoT活用検証プロジェクトとして、高速成形機械の制御装置であるPLC(Programmable Logic Controller)をSORACOMのセルラー通信とクラウド連携サービスを利用して、AWSのクラウドまでデータを転送できるようにしました。
さらに、SORACOMのオンデマンドリモートアクセスサービスを利用して、必要なときにいつでも遠隔から高速成型機械にアクセスすることも可能に。デバイス側に認証情報を登録する必要がないため、不正アクセスなどのリスクも排除できます。
IoT/ロボット推進室リーダーの中山和彦氏は、「コロナ禍での開発で現地への出張が1回しかできなかったにもかかわらず、遠隔から開発を進められたのは本当に助かりました。大阪エリア工場から実装したのですが、他エリアへの導入も続々進みました」と、オンデマンドリモートアクセスの利点を実感されています。
内製開発の自社エッジシステムとクラウドシステムを併用
最初のプロジェクトの実装に成功したことで、IoTプロジェクトはさらに加速しました。従来、管理部門と現場での組織をまたがるデータ連携はシステム上難しかったのですが、全社挙げてのDXを目指すにあたり、データの一括管理は避けて通れません。また、データが大量になるほど、レイテンシーやデータ欠損を回避する策も講じなければなりません。
これらの事情から2019年時点でスタートしていたオンプレミス(内製)での開発を本格化し、エッジコンピューティングにおけるリアルタイムソリューションを踏まえ、生産ラインや工程を可視化する自社システム「SaTeras」を構築しました。
基本的には、現場の基幹系システム、電力などのユーティリティ、生産設備に関するデータは一部エッジ側で処理され、情報基盤にデータが統合されます。生産ラインの状況や工程間の搬送状況をリアルタイムで可視化できるほか、品質などのデータを自動的にサマリーする、異常時にアラートを発報する、不良発生を予知するといった機能が利用できます。
一方で、一部のデータ取得には引き続きクラウドシステムを併用しています。例えば、既存設備への影響なく温度・湿度などの環境データを取得するために、後付けで簡単に設置できるGPSマルチユニット SORACOM Editionを導入し、SORACOMのプラットフォームとの親和性が高いAWSへデータを蓄積しています。
「AWSとオンプレミスシステムも連携させることで、既存の設備のデータに加え、新たに取得することになった環境データも含めたより詳細なデータ分析が可能になります」(中山氏)
今後の展開
データ分析技術を進化させて予知・予測機能を向上
自社システムは稼働後4年間、トラブルもなく稼働が止まったことはありません。蓄積された膨大なデータを用いて、2019年には画像解析を行いAI化。生産状態を監視することで、突発的に起こる製品不良に関わる状態を自動検知することに成功しました。
さらに、2020年には時系列データを解析し、加工設備センサーと検査機の判定結果との因果関係を数理モデル化も実現させ、進化が続いています。
「予知・予兆の確信度を上げるべく、現在も継続中です。今後も、現場の視点を加味しつつデータ活用の民生化を推進し、社内ビジネスレイヤー全体のデジタル化へのマインドセットを変えられるよう共創・共育していきたいですね。
システムがさらに発展すれば、システムパッケージとして利活用していただける範囲を広げていくことも視野に入れています」と、菊地氏はさらなる展望を見据えています。
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